犬への新型コロナウイルス感染に関して

2019年12月に中国湖北省の省都である武漢で、原因不明の肺炎として診断された病気が、後に新型コロナウイルスによる物であることが判明しました。

2020年2月に世界保健機構は、このウイルス名をSARS-Cov-2とし、このウイルスにより引き起こされる病気をCoronavirus Disease 2019’(略称「COVID-19」)と命名しました。

そしてその後、中国や日本を含むそのほかの地域でも報告され、現在世界中で患者が爆発的に増加しています。そしてその中では、犬にも感染が疑われた事例も報告されています。

そこで、人の新型コロナウイルスが犬にも感染するのかについて解説していきます。

なお、この情報は2020年4月の情報であり、研究が進むにつれて変わって行く可能性があることをご了承ください。

香港での人から犬への感染が疑われた事例

2020年3月に、人から犬への感染が疑われる事例が報告されました。犬は17歳のポメラニアンで、飼い主は60歳の女性でした。

その飼い主の女性は、2月に新型コロナへの感染が判明し、犬からもウイルスの弱陽性反応が検出されたため、香港政府が詳しく調べたところ、犬の体の一部にウイルスが付着したものではなく、低レベルの感染と確認したという事です。

その為、香港政府はヒトから伝染した可能性があるとしているそうです。

このことに関して当初日本獣医師会は「犬にウイルスが感染し、犬の体内で増殖して排出されたと確認されてはいません。」とする見解を発表しておりましたが、香港政府の詳細な検査の結果を受け、「現時点では感染サイクルの主体は人ですが、感染した人と濃厚接触のあったペット動物への感染の可能性は否定できないと考えます。」とする見解を発表しました。

「ペットの犬に低レベルの新型コロナウイルス感染が見られた」とする香港政
府の発表について
 
2020年3月9日 公益財団法人 日本獣医師会 

コロナウイルスとは?

コロナウイルスはコロナウイルス科に属しており、さらにアルファ、ベータ、ガンマ、デルタに分類されます。アルファおよびベータコロナウイルスは哺乳類に感染し、ガンマおよびデルタコロナウイルスは通常鳥類や魚類に感染すると考えられています。

犬や猫の病気に詳しい人であればご存知かもしれませんが、犬や猫にもコロナウイルスによる病気があります。犬では軽度の下痢を起こす犬コロナウイルスが、猫では猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因となる猫コロナウイルスが存在します。これらはいずれもアルファコロナウイルスに属しています。

今回のSARS-Cov-2は、ベータコロナウイルスに属しており、この中には SARS(サーズ:重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスや中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスが存在しています。

2020年4月現在の犬への新型コロナウイルス感染の考え方

それでは、今回の新型コロナウイルスが人から犬に感染しないか、また犬が他の人にウイルスを拡散させないか気になるところですが、まだ情報が少ない為、はっきりしておらず今後のさらなる研究が待たれる状況です。

これまでのところ、犬に関しては香港での新型コロナウイルスに感染したヒトから犬への感染が疑われる事例のみですが、猫では感染したと考えられる事例が数例報告されています。また、虎で動物園の飼育員から感染したと推察されている事例も報告されています。

 このことに関して厚生労働省では、動物を飼育する方向けQ&Aで犬や猫での新型コロナウイルス感染について以下のように回答しています。

 新型コロナウイルスは主に発症したヒトからヒトへの飛沫感染や接触感染により感染することが分かっており、現時点で動物での感染事例はわずかな数に限られています。

厚生労働省:動物を飼育する方向けQ&A

また、新型コロナウイルスに関する世界小動物獣医師会(WSAVA)のコメントは以下の通りです。

現時点では伴侶動物が SARS-Cov-2 ウイルスに感染しうるというエビデンスは限定的であり、犬や猫がほかの動物や人が COVID-19 を発症するような感染源となるというエビデンスはない。本件は急激な展開を見せることがあるため、新しい情報が入り次第アップデー トされる。

COVID-19 – Advice and Resources

現状では、明確にヒトから犬や猫への感染を疑う事例が数例報告されているので、今後の情報に注意が必要です。一方で、今のところ犬や猫が人での新型コロナウイルスの感染源となったという報告は存在しないようです。

愛犬への新型コロナウイルス感染に関して注意すべき事

もし、自分がコロナウイルスに感染したら、また感染していると仮定した場合にどのように愛犬と接すれば良いのでしょうか?

この点に関してアメリカ疾病予防管理センターが以下のようなコメントを出しています。

COVID-19 に感染している場合は、伴侶動物やそのほかの動物との接触を、そのほかの人に対するものと同様に、制限すること。伴侶動物やそ のほかの病気が COVID-19 に罹患して症状が出たという報告はないが、COVID-19 の罹患者は伴侶動物への接触を制限するべきである。可能であれば、病気の間は家族の別の人が世話をしてほしい。COVID-19 にかかっている場合は、なでる、くっつく、キスする、なめる、同じ食べ物を食べることも含めて、伴侶動物との直接の接触は可能な限り避けるべきである。病気の間に伴侶動物の世話をする必要や近くにいる必要がある場合は、触る前後に手洗いをしてマスクをつけるなど、よい衛生状態を保つべきである。

Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

このように、可能であれば人間同士で行っているように、万が一のことを考え、犬のお世話は元気な人が行い、マスクを着用し、犬に触れた前後は手洗いを行った方が良いと思われます。

啓発資材:「近すぎず、適切な距離でおつきあい」

まとめ

現状では、ヒトから犬や犬からヒトといった感染経路は、ほとんど無いと考えられていますが、全く無いという保証はありません。

昨今、人間同士が行っているような予防措置(マスク、手洗い、感染が疑われる人がお世話をしない)を、念のために愛犬に対しても行っておくとよいかもしれません。

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