犬の痒み止め【アポキル錠】

犬の皮膚の痒みは、動物病院への来院理由の主要なものです。虫刺されなどの一過性の痒みのこともありますが、アトピー性皮膚炎などの持続する痒みである場合がほとんどです。

アトピー性皮膚炎などの持続する痒みの場合には、基本的には痒み止めの治療を生涯続ける必要があります。

以前は、プレドニゾロンなどの副腎皮質ホルモン剤(いわゆるステロイド)が汎用されてきましたが、近年ではより副作用が少ない薬としてアポキル錠が注目されています。

日本では2016年7月から販売されるようになりましたが、海外ではそれ以前より販売されており、一部の獣医師の先生では海外から取り寄せて使用していました。

そこで今回は、犬の代表的な痒み止めの薬である、ゾエティス・ジャパン株式会社のアポキルを解説していきます。

アポキル錠の成分

アポキル錠の有効成分は、オクラシチニブマレイン酸です。これはインターロイキン-31(IL-31)等、アレルギーの痒みと炎症を惹起するサイトカインのヤヌスキナーゼ(JAK)を介した、細胞内シグナル伝達を阻害する働きがあります。

この薬の凄いところが3点あります。

一つ目は「即効性」です。犬アレルギー性皮膚炎に対する痒みに対して投与後4時間以内に効果を発揮し、プレドニゾロン錠に匹敵する即効性と有効性があるとされています。これは今までの他の薬では、プレドニゾロンと同等の効果と即効性を兼ね備えた薬がなかったので、非常に画期的です。

二つ目は「革新的な作用機序」です。痒みと炎症を惹起する各種サイトカインのJAK依存性シグナル伝達を選択的に阻害します。この薬は、分子標的薬という最新の科学に基づいて作られた薬です。

三つ目は「安全性」です。安全性プロファイルから、対象疾患の長期管理を可能にしています。これは、先程の作用機序とも関連しますが、薬の作用が痒みや炎症にピンポイントに効くことで、プレドニゾロンなどの他の薬に比べて副作用が少ないと考えられます。

図:各種サイズのアポキル錠

アポキル錠の適応例

犬のアトピー性皮膚炎に伴う症状及びアレルギー性皮膚炎の掻痒の緩和を目的とした薬であり、効果効能として「アトピー性皮膚炎に伴う症状及びアレルギー性皮膚炎に伴う掻痒の緩和」と記載されています。

また、アトピー性皮膚炎のガイドラインでも推奨度A(A~CでAが最も推奨される)とされています。

よって、犬のアトピー性皮膚炎での使用が最も適切であると考えらます。

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アポキル錠の容量

犬では、体重1kgあたり0.4mg~0.6mgに設定されています。投与回数は、1日1〜2回です。ただし、1日2回投与は14日以内、1日1回投与では1年を超えないこととされています。

表:投与早見表

日本においては、アポキルの使用は1年までとされていますが、海外では特に1年までという規定は存在していません。さらに海外の論文では、アポキルを長期服用している犬とそうでない犬との腫瘍の発生率を比較した場合で、有意差は見られなかったと報告しています。

図:海外のアポキルの添付文書

ちなみに猫では適応外です。しかし、アポキルは猫でも痒み止めとして効果があり、重篤な副作用は見られなかったとする論文があります。なお、犬と同等の効果を得るためには、アポキルの投与量は増やす必要があると考えれています。

アポキル錠の注意事項

アポキル錠の能書に記載されている注意事項として、以下の点が挙げられます。

・12ヵ月齢未満の犬:これは、12ヵ月齢未満の犬に対する安全性が確立されていないためです。
・体重3.0kg未満の犬:これは3.6mg錠を1/2分割しても体重あたりの容量がオーバーするためです。推奨はされていませんが、1/4分割などの方法が考えられます。
・交配予定の犬及び妊娠・授乳中の犬:これは交配予定及び妊娠・授乳中の犬に対する安全性が確立されていないためです。
・副腎皮質機能亢進症等の免疫抑制又は進行性悪性腫瘍の疑いのある犬:これはアポキルに免疫抑制作用があるため、症状を悪化させるおそれがあるためです。
・重篤な感染症がある犬:これはアポキルに免疫抑制作用があるため、症状を悪化させる恐れがあるためです。

その他の注意事項として、以下の点が挙げられます。

・ワクチンについて:狂犬病ワクチンではアポキルを飲んでいても十分な効果が見られた一方で、混合ワクチンでは一部効果が不十分であったとの実験結果があります。そのため、アポキルを飲んでいる間の混合ワクチン接種には注意が必要です。

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・アポキル錠の価格:アポキル錠は動物用の医薬品であり、分子標的薬という新しい技術を使っていることもあり、価格が高いです。1錠当たりおよそ300~500円程度です。生涯に渡り投与することを考えると、家計に与えるダーメージは大きいかもしれません。

まとめ

アポキル錠は、従来のプレドニゾロンと同等の効果と即効性があり、さらに副作用が少ないといった画期的なお薬です。しかし、価格が高いといったデメリットが存在します。

アトピー性皮膚炎は、生涯にわたる投薬が必要となる疾患です。担当の獣医師とよく相談して、服用する薬を決めると良いでしょう。

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