動物病院で血液検査を行った際に、その結果を理解するための手助けとなるように記事を作成しました。愛犬の血液検査の結果を片手にご覧ください。
ただし、以下の点にご注意ください。
- 正常値は、機械や検査会社ごとによって異なりますので、血液検査に記載されているデータを参照してください。参考正常値として、富士フィルムモノリスさんの正常値を記載してあります。
- 検査結果が正常値を外れている場合でも、病気とは限らないので、担当の獣医さんに良く話を聞くようにしましょう。
炎症マーカー(CRP)とは
炎症の有無や程度を反映する検査を炎症マーカーと総称しますが、炎症マーカーとして用いられているのは、急性相蛋白の血中濃度の測定です。そして、急性相蛋白の代表として、C反応性蛋白( CRP)が挙げられ、犬の炎症マーカーとして臨床応用されています。
急性相蛋白は、炎症部位に侵入してきた炎症細胞が分泌する炎症性サイトカインの刺激を受けて、主として肝臓で合成されます。炎症性サイトカインは、急性の発熱物質でもあり、視床下部において、プロスタグランジンE2を介して発熱が誘導されます。炎症性刺激が加わった6時間後ぐらいから、急性総蛋白の血中濃度が上昇し始め、24〜48時間でピークに達します。
CRPは急性相蛋白の中でも特に反応性に優れ、ピーク時の濃度は平常時の100から1000倍にまで達します。また、半減期は数時間〜12時間程度と考えられており、炎症性刺激が消失すれば速やかに血中濃度が低下します。そして、興奮や運動などの影響を、ほとんど受けないとされています。
従って、CRPの血中濃度の測定によって、炎症の存在やその程度を客観的かつ速やかに把握することが可能です。
炎症マーカーの測定が強みを発揮する場面は、疾患の初期スクリーニング検査と治療反応性のモニタリングです。
具体的には「なんとなく元気がない」などの曖昧な症状の場合に、炎症の有無を明らかにすることが可能であり、またCRPの変動を見ることで、まだ必要な治療を早期に中止してしまったり、逆に効果の乏しい治療を延々と続けてしまったりというリスクを軽減することができます。
(参考正常値:1.0mg/dl以下)
高値を示す場合
炎症性疾患、感染症、腫瘍がある場合に高値となることが多く、特に全身に影響が及ぶ疾患において顕著です。
例えば子宮蓄膿症、特発性多発性関節炎、無菌性結節性脂肪織炎などの感染性あるいは炎症性疾患、血管肉腫やリンパ腫といった腫瘍の症例において、高い割合でCRPの高値が認められます。また、免疫介在性溶血性貧血やバベシア症においても、CRPが上昇することが知られています。一方で、膀胱炎や鼻炎、平滑筋肉腫などにおいては、病変が限局的であるためかCRPの上昇は、みられないとされています。
中枢神経の炎症性疾患、例えば壊死性髄膜脳炎や肉芽腫性髄膜脳炎においては、通常はCRPの上昇はみられません。ただし、ステロイド反応性髄膜動脈炎は、中枢神経系の疾患の中ではほぼ唯一CRPの上昇が認められるとされています。
まとめ
犬の炎症マーカー(CRP)について解説しました。
検査結果が正常値を外れている場合でも、必ずしも病気とは限りません。病気は、血液検査のみならず身体検査や他の検査も行って診断していきます。状況により、経過観察を行ったりさらに詳しい検査を行うことがあります。
炎症マーカー(CRP)が高値を示した場合には、どこかに炎症性疾患、感染症、腫瘍がある事を想定して、追加検査としてレントゲン検査、超音波検査などの画像検査そして尿検査などを行います。
血液検査の結果で心配な事がある時には、動物病院で獣医さんに遠慮なく質問してみましょう。