犬の免疫介在性溶血性貧血

もし愛犬に、元気や食欲の低下、呼吸が荒くなる、歯茎や舌の色が白っぽい、そして尿がオレンジ色や濃い茶色に変化といった症状がみられたら、どんな病気を考えますか?

治療を行なってもおよそ50%の死亡率がある、犬の免疫介在性溶血性貧血を解説していきます。

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免疫介在性溶血性貧血とは

免疫というのは、細菌やウイルスなどの異物を認識し排除するための役割を持ちますが、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことを自己免疫疾患と呼びます。犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、自分の赤血球を異物であると認識して攻撃してしまう自己免疫疾患で、その結果として貧血が起こる病気です。

免疫介在性溶血性貧血
自分の赤血球を異物であると認識し、攻撃することで貧血になる病気

どんな犬種でも起こりますが、中でもコッカースパニエル、シーズー、プードルなどにおける発症が多いと言われています。また、雌犬では雄犬に比べて約3倍発生率が高く、中年齢での発症が多いとされていますが、年齢や性別に関係なく起こります。

原因

免疫の異常によって、自らの赤血球を異物として認識してしまいます。それによって体内で、赤血球が破壊されて貧血になってしまいます。

原因がはっきりわからない場合が多いですが、基礎疾患が関与して起こる場合もあります。前者を原発性または特発性免疫介在性溶血性貧血、後者を二次性免疫介在性溶血性貧血と呼びます。二次性免疫介在性溶血性貧血を引き起こす基礎疾患として、感染症、寄生虫性疾患、腫瘍性疾患、薬剤、不適合輸血などが挙げられます。

犬では、原発性が二次性よりも発生率が高いと考えられており、約60~75%とされています。

免疫介在性溶血性貧血の症状

貧血によって元気や食欲が低下したり、呼吸が荒くなったりします。重度の貧血では歯茎や舌の色が白っぽくなります。また、黄疸といって皮膚や白目が黄色っぽく見えたり、尿が濃いオレンジ色や茶色になったりすることもあります。この病気は、ある日突然起こることもありますし、数日かけて進行してくることもあります。

症状のポイント
元気や食欲の低下、呼吸が荒くなる、歯茎や舌の色が白くなる、尿の色の変化(オレンジ色や濃い茶色)

赤血球の破壊は、免疫グロブリンや補体によるⅡ型のアレルギー反応によって起こります。この際の溶血には脾臓や肝臓における血管外溶血と、赤血球膜の破壊に対する攻撃による血管内溶血があります。

免疫介在性溶血性貧血の診断

血液検査で赤血球系が減少する、貧血が認められます。そしてこの場合の貧血は、「再生性貧血」です。追加検査として、赤血球の自己凝集の存在、球状赤血球そしてクームス試験をなどを行い診断を確定していきます。

関連記事犬の赤血球系の異常(多血症/貧血)

また、レントゲン検査や超音波検査などの画像診断で、免疫の異常を起こす基礎疾患が隠れていないか探します。

似たような症状の病気として、ヘモグロビンの変性(タマネギ中毒などのハインツ小体性貧血)、低リン血症、腫瘍、先天性/後天性の赤血球膜の異常などがあります。

免疫介在性溶血性貧血の治療

治療は、自己免疫疾患なので免疫を抑えることによって貧血の進行を止めます。グルココルチコイド(ステロイド)などの免疫抑制剤が使われます。

免疫介在性溶血性貧血では、貧血の進行によって死亡するよりも、血栓塞栓症(特に肺動脈塞栓症)や播種性血管内凝固(DIC)が死因となることが多いです。血栓塞栓症とは、血管の中で血液が固まってしまう病気で、播種性血管内凝固(DIC)とは全身の血管内で微小血栓が多発する重篤な病気です。そのため、免疫を抑える治療に抗血栓療法を併用していきます。

貧血を起こしているので、輸血も一つの方法として考えられます。しかし、免疫介在性溶血性貧血の際には、輸血反応(副作用)が起こる可能性が起こる可能性が高いとされており、溶血の進行が著しく輸血をしないと生命の危険があると判断された場合のみに実施されます。

ヘマトクリット(PCV)30%以上とモグロビン10g/dl以上を目安に、治療を行います。その後、徐々に薬の量を減らしていきます。症状や血液検査の結果が良くなっても、再発を予防するためにしばらくの間は薬を内服する必要があります。

治療のポイント
免疫抑制療法と抗血栓療法

予後

治療を行った犬の約50%が死亡するといわれています。血栓塞栓症や播種性血管内凝固(DIC)で急死することもあります。

また、治療が上手くいっても、その後再発してしまう犬もいるので注意が必要です。

まとめ

犬の免疫介在性溶血性貧血について解説しました。この病気は、治療を行った犬でも約50%が死亡するといわれています。

できることがあるとすると、病気になったらすぐに動物病院を受診して、早期に治療を開始することです。そのためには、普段から愛犬の様子を観察し、元気や食欲の低下、呼吸が荒くなる、歯茎や舌の色が白っぽい、そして尿がオレンジ色や濃い茶色に変化といった症状がみられたら、動物病院を受診するようにしましょう。

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