犬のBUNとクレアチニンの異常(腎機能)を丁寧に解説

動物病院で血液検査を行った際に、その結果を理解するための手助けとなるように記事を作成しました。愛犬の血液検査の結果を片手にご覧ください。

ただし、以下の点にご注意ください。

  • 正常値は、機械や検査会社ごとによって異なりますので、血液検査に記載されているデータを参照してください。
  • 検査結果が基準値(正常値)を外れている場合でも、病気とは限らないので、担当の獣医さんに良く話を聞くようにしましょう。
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腎機能を調べる血液検査

腎臓は血液中の老廃物や不要物をろ過して、余分な水分とともに尿として体外に排出する臓器です。

血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)は、体内でエネルギーとして使われた蛋白の分解産物(老廃物)です。血液中に含まれるこれらの値を測定することで、腎臓が正常に機能しているか評価します。

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血中尿素窒素(BUN)とは

血中尿素窒素(BUN)とは、血液中に含まれる尿素窒素をあらわし、蛋白分解産物であるアンモニアが二酸化炭素と結びついた結果できたものです。

通常、尿素窒素は腎臓の糸球体で濾過されて尿中へ排出されますが、急性や慢性の腎不全などで腎機能が低下すると、濾過しきれない分が血液中に残ってしまい、血中尿素窒素が上昇します。

具体的には、腎臓の機能が正常の1/4以下に低下すると、血中尿素窒素はクレアチニンと共に上昇すると言われています。このように糸球体濾過量が低下し、血中尿素窒素やクレアチニンが上昇した状態を「高窒素血症」と呼びます。

しかし、血中尿素窒素は高蛋白な食事や消化管出血などの、腎機能と無関係な理由での上昇も知られています。

一般にBUN/Cre比はおよそ10:1であり、BUN上昇時でこの比が10以上の場合は腎機能とは無関係な原因を、10以下の場合は腎機能の異常の可能性が高いとされています。

また、尿素窒素のほとんど全てを肝臓で合成しているので、肝機能低下時に血中尿素窒素は低下します。

検査会社基準値
富士フィルムモノリス9.2~29.2 mg/dl
アイデックス(成犬)7.0〜27.0 mg/dl
▲各検査会社における犬の血中尿素窒素(BUN)の基準値

血中尿素窒素(BUN)高値の原因

血中尿素窒素(BUN)高値の原因は、腎臓への血液の低下による腎前性、腎臓自体が障害される腎性、尿が出せない状態の腎後性に分けられます。

その他に、腎臓の機能と無関係な理由でも上昇することが知られています。

腎前性

腎臓への血流の低下により糸球体濾過率が低下し、尿量が少なくなった状態です。この場合には、腎臓自体の機能は保たれています。

腎前性の血中尿素窒素(BUN)高値の原因

循環血液量の減少
 重度の脱水
 出血

心拍出量の低下や低血圧
 心不全
 肝不全
 敗血症
 ショック
 麻酔

腎性

腎臓自体が障害され、濾過能低下がみられる状態です。

腎性の血中尿素窒素(BUN)高値の原因

腎後性

腎臓から排出する尿路に閉塞があり、尿が出せない状態です。尿路閉塞が続くことで、水腎症を引き起こす場合があります。

腎後性の血中尿素窒素(BUN)高値の原因

閉塞性尿路疾患
 尿素結石
 尿路腫瘍

尿路周囲の腫瘍

腎臓の機能と無関係な原因

腎臓の機能と無関係な原因として、消化管からの蛋白質の吸収促進や体の組織の損傷によるものなどがあります。

腎臓の機能と無関係な血中尿素窒素(BUN)高値の原因

高蛋白の食事
消化管出血(胃や腸などからの出血)
火傷での筋肉の損傷

血中尿素窒素(BUN)低値の原因

血中尿素窒素(BUN)低下の原因として、肝機能低下による尿素窒素合成能の低下、蛋白の摂取低下そして尿中への排泄増加があります。

血中尿素窒素(BUN)低値の原因

肝機能低下
 肝硬変

低蛋白の食事

尿排泄量の増加
 尿崩症
 利尿剤使用時

クレアチニン(CRE)とは

クレアチニン(CRE)とは、筋肉へのエネルギーの供給源であるクレアチンリン酸の代謝産物です。クレアチニンは主に筋肉で作られて血中に入り、糸球体で濾過された後、殆ど再吸収されず速やかに尿中に排出されます。

通常、クレアチニンは腎臓で濾過されて尿中へ排出されますが、急性や慢性の腎不全などで腎機能が低下すると、濾過しきれない分が血液中に残ってしまい、血液中のクレアチニン濃度が上昇します。

クレアチニンは血中尿素窒素と違い、高蛋白食などの腎臓の機能と無関係な理由での上昇が無いとされています。

そのため、慢性腎臓病の病期(ステージ)は、クレアチニン値により分類されています。

なお、クレアチニン総量は体筋肉量を反映しているので、筋肉量が減る病気でクレアチニンは低下します。

検査会社基準値
富士フィルムモノリス0.4~1.4 mg/dl
アイデックス(成犬)0.5~1.8 mg/dl
▲各検査会社における犬のクレアチニン(CRE)の基準値

クレアチニン(CRE)高値の原因

クレアチニン(CRE)高値の原因は、腎臓への血液の低下による腎前性、腎臓自体が障害される腎性、尿が出せない状態の腎後性に分けられます。

腎前性

腎臓への血流の低下により糸球体濾過率が低下し、尿量が少なくなった状態です。この場合には、腎臓自体の機能は保たれています。

腎前性のクレアチニン(CRE)高値の原因

循環血液量の減少
 重度の脱水
 出血

心拍出量の低下や低血圧
 心不全
 肝不全
 敗血症
 ショック
 麻酔

腎性

腎自体が障害され、濾過能低下がみられる状態です。

腎性のクレアチニン(CRE)高値の原因

犬や猫の慢性腎臓病の病期(ステージ)は、クレアチニン値により分類されています。慢性腎臓病とは、両側あるいは片側の腎臓の機能的及び/あるいは構造的な異常が3ヶ月以上継続している状態です。

ステージCRE(mg/dl)残存腎機能症状
ステージ1<1.433%非窒素血症、糸球体濾過量の減少、低比重尿
ステージ21.4〜2.025%軽度の窒素血症
ステージ32.1〜5.010%尿毒症症状
ステージ4>5.05%生命維持に透析ないし腎移植が必要
▲犬の慢性腎臓病の病気(ステージ)

腎後性

腎臓から排出する尿路に閉塞があり、尿が出せない状態です。尿路閉塞が続くことで、水腎症を引き起こす場合があります。

腎後性のクレアチニン(CRE)高値の原因

閉塞性尿路疾患
 尿素結石
 尿路腫瘍

尿路周囲の腫瘍

クレアチニン(CRE)低値の原因

クレアチニン(CRE)低下の原因は、クレアチニン総量が体筋肉量を反映しているので、筋肉量が減る病気で低下します。また、尿中への排泄増加によっても低下します。

クレアチニン(CRE)低値の原因

筋肉量の低下
 筋萎縮

尿排泄量の増加
 尿崩症
 利尿剤使用時

まとめ

犬の腎臓の機能に関わる、犬のBUNとクレアチニンの異常について解説しました。

検査結果が正常値を外れている場合でも、必ずしも病気とは限りません。病気は、血液検査のみならず身体検査や他の検査も行って診断していきます。状況により、経過観察を行ったりさらに詳しい検査を行うことがあります。

腎臓機能に関わる追加検査として、尿検査(尿比重や尿蛋白)、レントゲン検査、超音波検査そして腎機能のバイオマーカー(SDMAなど)が考えられます。

血液検査の結果で心配な事がある時には、動物病院で獣医さんに遠慮なく質問してみましょう。