犬の電解質(Na-k-Cl)の異常を丁寧に解説

動物病院で血液検査を行った際に、その結果を理解するための手助けとなるように記事を作成しました。愛犬の血液検査の結果を片手にご覧ください。

ただし、以下の点にご注意ください。

  • 正常値は、機械や検査会社ごとによって異なりますので、血液検査に記載されているデータを参照してください。
  • 検査結果が基準値(正常値)を外れている場合でも、病気とは限らないので、担当の獣医さんに良く話を聞くようにしましょう。
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電解質とは

電解質とはナトリウムやクロール、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど水に溶けると、イオンとなるミネラルのことです。

体内の電解質は、細胞の浸透圧を調節したり、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わるなど、身体にとって重要な役割を果たしています。電解質は少なすぎても多すぎても細胞や臓器の機能が低下し、命にかかわることがあります。

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ナトリウム(Na)とは

ナトリウム(Na)とは、食塩(NaCl)に含まれている成分で、体の水分を保持する役割がある電解質です。

腎臓は、尿素や尿酸などの老廃物や有害物質の排出、酸やアルカリを排出することによる体内のpHの調節、そして体内の過剰の水分と電解質の排出する働きがあります。
腎臓でのナトリウムの再吸収は、副腎皮質から分泌されるホルモンであるアルドステロンの働きにより促進され、腎臓での水の再吸収は、脳下垂体後葉から分泌されるバソプレッシン(抗利尿ホルモン)の働きにより増加します。このように腎臓では、アルドステロンによりナトリウム量の調整が、そしてバソプレッシン(抗利尿ホルモン)により尿量の調整が行われています。

アルドステロンの分泌促進=血液中のナトリウム量の増加
バソプレッシン(抗利尿ホルモン)の分泌促進=尿量の減少=血液中の水分量の増加

体内の水分量とナトリウム量に不均衡が生じると、ナトリウム濃度に異常値が生じます。

検査会社基準値
富士フィルムモノリス141~151mEq/l
アイデックス(成犬)144~160mEq/l
▲各検査会社におけるナトリウム(Na)の基準値

ナトリウム(Na)高値の原因

ナトリウム高値は、血液中の水分の欠乏やナトリウムの過剰摂取が原因となるほか、稀な病気として原発性高アルドステロン症によっても引き起こされます。

ナトリウム(Na)高値の原因

下痢
嘔吐
過剰なパンティング
尿崩症
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
ナトリウムを含む輸液の過剰

ナトリウム(Na)低値の原因

ナトリウム低値は、血液中の水分の過剰やナトリウムの喪失過剰が原因となるほか、検査機器の問題として高脂血症や高蛋白血症の場合、検査結果が実際よりも低く出ることがあります。

ナトリウム(Na)低値の原因

ネフローゼ症候群
肝硬変(腹水)
バソプレッシン(抗利尿ホルモン)の分泌過剰
代償性低Na血症(高度の高血糖、高BUN血症など)
副腎皮質機能低下症(アジソン病)
甲状腺機能低下症
検査機器の問題(高脂血症、高蛋白血症など)

カリウム(K)とは

カリウム(K)とは、神経の興奮や心筋の働きを助ける電解質です。ナトリウムを体の外に出しやすくする働きもあるため、ナトリウムを調節する役割もあります。

血液中のカリウムが高値になると不整脈がみらます。特にカリウムが8.5mEq/lを越えるとP波が消失し、徐脈や心房細動がみられるようになります。反対にカリウムが低値になると、全身のけいれんや筋力低下、意識障害などがみられます。

高カリウム血症は、不整脈や心停止を引き起こす。

そのため、血液検査でカリウムの異常を認めた場合には、原因の追究とカリウム値を正常値に戻す治療が必要です。

検査会社基準値
富士フィルムモノリス3.5~5.4 mEq/l
アイデックス(成犬)3.5〜5.8 mEq/l
▲各検査会社におけるカリウム(K)の基準値

カリウム(K)高値の原因

カリウム高値は、腎臓の機能が低下し尿量が少なくなることが原因となります。これは、体内の余分なカリウムは尿中に排出されるので、尿量が低下するとカリウムの排出が上手くいかなくなるためです。また、輸血やカリウムを多く含む輸液を行った場合にも見られることがあります。

そして、赤血球内にも多量のカリウムが含まれているため、溶血によってもカリウムが高値を示すことが知られています。

カリウム(K)高値の原因

副腎皮質機能低下症(アジソン病)
急性腎不全
慢性腎臓病
糖尿病
組織壊死(外傷や火傷など)
カリウムの過剰投与
赤血球の溶血
アシドーシス

カリウム(K)低値の原因

カリウム低値は、嘔吐や下痢の時に水分と一緒にカリウムも体外に排出されてしまうことが原因となります。また、利尿剤などの内服で尿量が増加したときや、腎臓からカリウムが異常に失われる疾患(副腎皮質機能低下症など)で低値となります。

カリウム(K)低値の原因

嘔吐
下痢
多尿(利尿剤投与時など)
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
カリウム摂取不足
代謝性アルカローシス
糖尿病性アシドーシスの回復期
肝硬変
ネフローゼ症候群
本態性高血圧

クロール(Cl)とは

クロール(Cl)は主に食塩(NaCl)として体内に取り入れられ、他の電解質と相互に関係して浸透圧を調整する役割がある電解質です。

クロールは通常食塩(NaCl)として動くため、ナトリウムの変動に左右されます。つまり、基本的にはナトリウムとクロールは同様の動きを示します。しかし、クロールのみに異常が出ることもあり、例えば嘔吐による胃液(胃酸)の喪失に伴う代謝性アルカローシスの時には、クロールのみの低下が起こります。

クロールだけの増加は普通起こらないのですが、抗けいれん薬として臭化カリウムを使用している際に、検査結果では見かけ上の高値となります。

検査会社基準値
富士フィルムモノリス107~121 mEq/l
アイデックス(成犬)109~122 mEq/l
▲各検査会社におけるクロール(Cl)の基準値

クロール(Cl)高値の原因

クロールの高値は、電解質より水分が多く失われることが原因として考えられます。

ナトリウム(Na)高値の原因

下痢
嘔吐
過剰なパンティング
尿崩症
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
クロールを含む輸液の過剰
見かけ上の高値(臭化カリウム)

クロール(Cl)低値の原因

クロールの低値は、水分より電解質が多く失われることが原因として考えられます。また、嘔吐による胃液(胃酸)の喪失に伴う代謝性アルカローシスも、原因として考えられます。

ナトリウム(Na)低値の原因

ネフローゼ症候群
肝硬変(腹水)
バソプレッシン(抗利尿ホルモン)の分泌過剰
代償性低Na血症(高度の高血糖、高BUN血症など)
副腎皮質機能低下症(アジソン病)
嘔吐(胃酸の喪失)
代謝性アルカローシス

まとめ

犬の電解質(Na-k-Cl)の異常について解説しました。

検査結果が正常値を外れている場合でも、必ずしも病気とは限りません。病気は、血液検査のみならず身体検査や他の検査も行って診断していきます。状況により、経過観察を行ったりさらに詳しい検査を行うことがあります。

電解質(Na-k-Cl)の基本的な理解としては、水分と電解質のどちらがより多く失われたかを考えると理解しやすいです。ちなみに脱水のパターンとして、電解質より水分が多く失われる高張性脱水と、電解質と水分が同じ割合で失われる等張性脱水、そして水分より電解質の方を多く失った低張性脱水があります。

電解質異常、特に高カリウム血症では、致死的な不整脈を起こす可能性があるので早急な対応が必要となります。このように、電解質異常の時には、輸液などで電解質を調整するとともに、追加検査で原因を追求していきます。

血液検査の結果で心配な事がある時には、動物病院で獣医さんに遠慮なく質問してみましょう。