犬の慢性腎臓病

犬が中年齢以降に多い病気に心臓病や腫瘍などと並んで、腎臓病があります。腎臓病には、「急性腎不全」と「慢性腎臓病」がありますが、中高齢の犬でよく見られる慢性腎臓病について解説していいきます。

慢性腎臓病とは

慢性腎臓病は、「両側あるいは片側の腎臓の機能的及び/あるいは構造的な異常が3ヶ月以上継続している状態」と定義されています。これは腎臓が3ヶ月以上の継続するダメージを受けると、機能がもとに戻らないためとされています。

この病気は早期に診断し治療することで、生存期間や生活の質(QOL)が改善できることが明らかになっています。特に、食事療法は初期の慢性腎不全にも有効性が示されています。

なお近年では、「慢性腎不全」よりも「慢性腎臓病」という言葉が、用いられるようになってきています。

慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病は様々な腎臓の病気が原因となって、腎臓の障害が慢性的に進行することで発症します。

慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病には、腎・泌尿器疾患の専門家グループが提唱した病期(ステージ)があり、これに基づいて話を進めていくことが多いです。そしてこのステージは、血液検査のクレアチニン(CRE)値により分類されます。また、サブステージである尿中蛋白クレアチニン比や収縮期血圧を測定することで治療が変わってきます。

腎臓の障害が進行するに従って尿量・飲水量が増える、体重減少、食欲不振などが徐々に進行するようになります。

ステージ3になると、体内の不要な物質を尿から排泄できなくなり尿毒症の症状が出始めます。尿毒症の症状には、嘔吐などの消化器症状や尿が少なくなるそして筋肉の減少などがあります。また、体重減少や食欲不振はさらに進み、元気もなくなってきます。

ステージ4に入ると、痙攣や昏睡などの神経症状が見られることもあり、最終的には尿が全く出なくなります。

慢性腎臓病の診断

慢性腎臓病の診断として、血液検査(特に血中尿素窒素(BUN)とクレアチニン(CRE))と尿検査そして血圧の測定などを行います。また、腎臓病の原因を探るための検査として、超音波検査やレントゲン検査そして腎臓の生検が行われることがあります。

近年、アイデックスラボラトリーズ株式会社で、腎臓の新しいバイオマーカーとしてSDMA(対称性ジメチルアルギニン)が測定可能になりました。

特徴として、①ほぼ全てが腎臓からの濾過により排泄されるため、糸球体濾過率(GFR)の優れた指標となる、②クレアチニン(CRE)は腎機能が75%喪失するまで上昇しないのに対し、SDMAは腎機能が平均40%喪失した時点で上昇する、③クレアチニン(CRE)と違い筋肉量に影響されないため、痩せた犬猫(例えば高齢や悪液質)であっても、より正確にGFRを反映することが挙げられます。

前述の慢性腎臓病のガイドラインにもSDMAの測定が反映されており、特に痩せた犬猫では、これに基づいた治療の変更も考慮するとされています。

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慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病は、治ることはありませんが適切な治療を行うことで生存期間の延長や生活の質(QOL)の向上が期待できます。また、治療は長期に及ぶことが多いため、治療については費用なども含めよく考えるようにしましょう。

ステージ1〜2

ステージ1の犬では市販の食事から療法食への変更を行います。特に、リンの制限が重要となってきます。もし高リン血症が持続する場合は、リンの排泄促進剤を投与することもあります。

また脱水を起こさないように、新鮮な水がいつでも飲めるようにすると良いでしょう。さらに脱水が持続するときには、点滴を行うこともあります。

尿蛋白に基づくサブステージで、持続的蛋白尿(UPC>0.5)がみられる場合には、腎臓療法食および投薬による治療を行います。

血圧に基づくサブステージで、収縮期血圧が160以上または網膜出血や剥離などの臓器障害がみられる場合には、高血圧の治療を行います。

ステージ3〜4

これまでの治療に加えて、嘔吐があれば吐き気止めのお薬や貧血の悪化があれば人組み替えエリスロポエチンの注射を行い、さらに静脈や皮下での点滴をより積極的に行なっていきます。

理論的には、最終手段は人工透析や腎移植なのですが、実際問題としての選択肢としては厳しいものがあると思います。

まとめ

犬の慢性腎臓病について解説しました。中年齢以降の犬で比較的よく見られる病気ですが、早期に診断し治療することで、生存期間や生活の質(QOL)が改善できます。腎臓病用の療法食に変更することはステージ1から推奨されており、特別な治療ではなくご家庭での食事の管理による治療が可能です。

シニアになったら定期的な健康診断を受けるようにしましょう。特にSDMAの測定は、慢性腎臓病の早期発見に役立つかもしれません。

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