実は、犬にも人間と同様に糖尿病があります。犬の糖尿病の代表的な症状は、水をたくさん飲んでたくさんおしっこをする「多飲多尿」と呼ばれる症状です。
この中齢〜高齢に多くみられる、犬の糖尿病について解説していきます。
犬の糖尿病とは
犬の糖尿病は、中齢〜高齢の犬に比較的多く発生します。メス犬の糖尿病発生率は、オス犬の約2倍であるといわれています。ミニチュアピンシャー、トイプードル、ダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、ビーグルで好発傾向がみられます。
糖尿病は発見が遅いと、「糖尿病性昏睡」という状態になり死に至ることもあるので、早期発見が重要となります。
糖尿病の原因
人の糖尿病では、以下の2つのタイプがあると説明されています。
糖尿病になると、インスリンが十分に働かなくなり、血糖をうまく細胞に取り込めなくなります。それには、2つの仕組みがあります。
- インスリン分泌不足:膵臓の機能の低下があるため、十分なインスリンを作れなくなってしまう状態。細胞の入り口を開けるための鍵が不足しているので、糖が中に入れず、血液の中にあふれてしまいます。
- インスリン抵抗性:インスリンは十分な量が分泌されているけれども、効果を発揮できない状態。運動不足や食べ過ぎが原因で肥満になるとインスリンが働きにくくなります。鍵であるインスリンがたくさんあっても、細胞のドアのたてつけが悪く、開けることができません。この場合も、血液の中に糖があふれてしまいます。
糖尿病ではこの2つが影響して、血糖値が高くなってしまいます。
出典元:「糖尿病ってなに?」糖尿病情報センター(2017/10/04確認)
犬の場合はほとんどが「インスリン分泌不足」が原因で糖尿病が起こるとされており、人の1型糖尿病に相当するのではないかと考えられています。
糖尿病は、避妊手術をしていない雌犬に多く、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や膵炎に併発して起こることもあります。ちなみに、未避妊だと黄体期のプロジェステロンが、副腎皮質機能亢進症はグルココルチコイドの過剰産生によりインスリン抵抗性を引き起こすので、糖尿病になりやすいとされています。
糖尿病の症状
インスリンの欠乏による高血糖が原因で、尿中に糖が漏れ出します。それによって尿量が増え、水分を補うために、水をたくさん飲むようになる、いわゆる「多飲多尿」となります。
また初期には、食欲は増しているのに痩せてくるといった症状が認められます。そして次第に元気や食欲が低下し、下痢や嘔吐などの消化器症状が見られることもあります。
症状が進行すると、ケトン体という物質が血液中に蓄積する「糖尿病性ケトアシドーシス」という状態となり、著しい脱水と吐き気や嘔吐、そして頻呼吸と呼ばれる浅く速い呼吸がみられるようになります。
また、高血糖が持続することで、白内障などの合併症を引き起こします。糖尿病が原因で起こる白内障では、症状が急速に両眼で進行することが特徴的で、その割合は初診時で約60%・1年後では約75%といわれれています。このため、犬の糖尿病では白内障の有無や進行具合を確認し、必要に応じて治療を行う必要があります。
糖尿病の診断と治療
診断
血液検査で血糖値の上昇があり、尿検査で尿糖が出ていれば、糖尿病を強く疑っていきます。そして、フルクトサミンや糖化アルブミンといった、過去2週間の血糖値を反映する糖尿病マーカーの上昇が伴えば、確定診断となるります。
また、尿検査でケトンが検出された場合には、「糖尿病性ケトアシドーシス」が考えられるので、犬の状態が悪化していることを示します。
血糖が上昇する病気として糖尿病以外には、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、膵炎そしてグルココルチコイド(ステロイド)などの投与による医原性などがあります。
治療
犬の糖尿病は、インスリンでの治療が必要となることがほとんどです。そのため、インスリンの投与を行います。また、脱水が認められることが多く、初期には点滴による治療が必要となり、重症例では入院して管理することもあります。
犬の糖尿病の場合ほとんどのケースで、生涯に渡るインスリンの投与が必要です。そのため通常、1日2回食事の度に家で飼い主さんにインスリン注射を打ってもらいます。
また、インスリン治療中には、過剰投与による低血糖症状が出る可能性がありますので注意しましょう。
また、インスリンでの治療を実施する際には、カロリー計算をして毎日決められた量の食事を与えるようにしなければなりません。そのため決められた食事以外のものは、あげないようにしましょう。
まとめ
犬の糖尿病について解説しました。糖尿病の代表的な症状は、水をたくさん飲んで、たくさんおしっこをする「多飲多尿」です。もし、愛犬に「多飲多尿」の症状が見られたら、糖尿病の可能性があるので、早めに動物病院へ行くようにしましょう。