犬の多発性骨髄腫

原因不明の歩様異常(びっこ)や体の痛みを訴え、さらに飲水量が増えおしっこの量が増えた場合、どんな病気を考えますか?

犬の血液腫瘍である、多発性骨髄腫について解説します。

レクタングル大

多発性骨髄腫とは

リンパ球は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の3つに分類されます。

T細胞およびB細胞は、免疫応答の主役となる細胞です。T細胞は免疫応答を指示し、B細胞は抗体を生産します。抗体は、体内に侵入していきた細菌やウイルスなどの抗原と結合します。その抗原と抗体の複合体を、白血球やマクロファージといった食細胞が認識して、体内から除去するように働きます。このように、免疫応答は生体の感染防御機構において重要な役割を果たします。

B細胞は、最終的に免疫グロブリンの産生と分泌を行う形質細胞(別名:プラズマ細胞)へ分化します。そして多発性骨髄腫とは、この形質細胞が骨髄内で悪性腫瘍化したものです。

多発性骨髄腫
形質細胞(別名:プラズマ細胞)が骨髄内で悪性腫瘍化したもの

形質細胞は、内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守ってくれる「抗体」をつくる働きをもっていますが、多発性骨髄腫の腫瘍細胞は、異物を攻撃する能力がなく、役に立たない抗体(M蛋白)を作り続けます。そして、腫瘍細胞が異常な抗体(M蛋白)を作り続ける結果、「高グロブリン血症」という状態になります。

原因

人では、腫瘍細胞にさまざまな遺伝子や染色体の異常が生じていることが知られていますが、その原因ははっきりしていません。

そして犬でも同様に、発生要因は明らかになっていませんが、ジャーマンシェパードでの発生が多く、8~10歳くらいの高齢犬での発症が多いようです。

多発性骨髄腫の症状

一般的に歩様異常(びっこ)や骨の痛みを訴えることが多いです。また、出血(鼻血や粘膜からの出血)、飲水量が増えおしっこの量が増える、発作などの神経症状、視覚障害などを伴うこともあります。

多発性骨髄腫では、前述の異常な抗体(M蛋白)により、血液の粘稠性が増加する「過粘稠症候群」という病態を引き起こします。これにより、出血傾向(出血が抑制できない状態)、うっ血性心不全、視覚障害、神経症状などがみられるとされています。

また腫瘍細胞の骨破壊により、高カルシウム血症が生じます。時に、骨破壊に関連して、病的な骨折を起こす場合もあります。また、腫瘍細胞が骨髄を破壊することによる、血球減少症も生じます。

関連記事犬のカルシウム(Ca)の異常

症状のポイント
過粘稠症候群に関連する出血傾向や骨破壊にる骨の痛みや病的骨折や血球減少症など

多発性骨髄腫の診断と治療

診断

多発性骨髄腫の診断基準では以下のように考えられています。

①血液蛋白電気泳動でのモノクローナルガンモパチーの検出、②レントゲン検査での骨融解像、③骨髄検査で形質細胞が10%を超えて検出される、④ベンスジョーンズタンパク尿の検出の4項目の内、2項目を満たすこととされています。

高グロブリン血症は、「モノクローナルガンモパチー」と「ポリクローナルガンモパチー」に大別されます。「モノクローナルガンモパチー」とは、高グロブリン血症の中でも1種類の免疫グロブリンを産生していることを示し、「ポリクローナルガンモパチー」とは複数の免疫グロブリンを産生していることを示し、これには慢性炎症や免疫源性疾患などが含まれます。

ベンスジョーンズタンパクとは、免疫グロブリンの軽鎖のみからなる異常なグロブリンであり、尿中に排泄されるものです。蛋白尿の一種ですが、通常の尿検査では検出されないとされています。

診断のポイント
4つの診断項目中2つを満たすこと

治療

治療は、腫瘍細胞の数を減らすとともに、骨の痛みの緩和や血液の粘稠性を低下させることを考えていきます。

多発性骨髄腫の治療の中心となるのは、抗がん剤による化学療法です。また、高カルシウム血症や高窒素血症があれば輸液を行います。痛みの緩和のために、鎮痛剤や場合によって緩和的に放射線を当てる場合があります。

治療のポイント
抗がん剤による化学療法が中心

予後

抗がん剤(メルファランとプレドニゾロン)による治療で、約90%の犬に治療効果があるとされています。しかし、再発は避けられないと考えられています。

なお、この治療での生存期間の中央値は、540日であったと報告されています。

まとめ

犬の多発性骨髄腫について解説しました。この病気は稀な疾患ではありますが、犬の血液腫瘍性疾患の8%を占めるとされています。

原因不明の歩様異常(びっこ)や体の痛みを訴え、さらに飲水量が増えおしっこの量が増える場合には、この病気の可能性もありますので、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

レクタングル大
レクタングル大

▼記事が気に入ったらシェアをお願いします

▼よろしければフォローをお願いします
この記事をお届けした
わんらぶの最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!