犬のカルシウム(Ca)の異常を丁寧に解説

動物病院で血液検査を行った際に、その結果を理解するための手助けとなるように記事を作成しました。愛犬の血液検査の結果を片手にご覧ください。

ただし、以下の点にご注意ください。

  • 正常値は、機械や検査会社ごとによって異なりますので、血液検査に記載されているデータを参照してください。
  • 検査結果が基準値(正常値)を外れている場合でも、病気とは限らないので、担当の獣医さんに良く話を聞くようにしましょう。
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カルシウム(Ca)とは

血液検査の結果で表示されているカルシウムは、通常総カルシウム濃度を示しています。血清中のイオン化カルシウムが真の生物活性を持つもので、総カルシウム濃度の44~50%を占めています。残りのほとんどは、蛋白結合のカルシウムで生物学的には不活性です。

血清中のカルシウム濃度は、上皮小体という甲状腺に密着または埋没して存在する小型の内分泌器官から分泌される上皮小体ホルモン(PTH)でコントロールされています。

正常な動物では、血清カルシウム濃度とPTHは負の相関関係にあり、PTHは細胞の機能維持に不可欠なカルシウム濃度を上昇させる効果があります。すなわち、カルシウム濃度が概ね10mg/dlに保たれるように、これ以下ではPTHが分泌され、それ以上では分泌が止まるシステムになっています。

また、上皮小体から分泌されるPTH以外にも、PTH関連ペプチド(PTH-rP)や、破骨細胞活性化因子、その他の未知の物質が腫瘍細胞などで産生され、PTHと同様にカルシウム濃度を上昇させる働きがあります。

高カルシウム血症は、上皮小体の腫瘍化、あるいは他の組織の腫瘍に関連して調節機構が働かず制御できないPTHまたはPTHrP分泌が起こることが原因となります。高カルシウム血症に関連した症状として、水を良く飲みおしっこをたくさんする多飲多尿筋力の低下がみられることがあります。

低カルシウム血症は、甲状腺摘出術で上皮小体も摘出された場合や、甲状腺癌などの影響で上皮小体が破壊された場合などの、PTH分泌が低下するするような上皮小体の機能低下が原因となります。低カルシウム血症に関連した症状として、ケイレンがみられることがあります。

腎不全では、リンとカルシウムは拮抗関係にあるため、リン濃度の上昇に伴いカルシウム濃度は低下していきます。しかし、次第に低カルシウムに反応して上皮小体からPTH分泌が促進され、最終的には高カルシウム血症となります。

検査会社基準値
富士フィルムモノリス8.9~11.4 mg/dl
アイデックス7.9~12.0 mg/dl
▲各検査会社におけるカルシウム(Ca)の基準値

カルシウム(Ca)高値の原因

高カルシウム血症の原因となる疾患は多く、 上皮小体の腫瘍化、あるいは他の組織の腫瘍に関連して調節機構が働かず制御できないPTHまたはPTHrP分泌が起こることが原因となります。

カルシウム(Ca)高値の原因

原発性上皮小体機能亢進症
二次性上皮小体機能亢進症
腫瘍(リンパ腫多発性骨髄腫、肛門嚢腺癌など)
肉芽腫性疾患
血液濃縮・脱水
ビタミンD過剰症
高脂血症(ミニチュアシュナウザーなど)
骨吸収
副腎皮質機能低下症(アジソン病)

※骨吸収:骨を壊す働きをする「破骨細胞」が骨を吸収(骨吸収)すること。骨は骨吸収される一方で、骨を作る働きをする「骨芽細胞」が、破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨を作り(骨形成)、バランスを取っています。

カルシウム(Ca)低値の原因

低カルシウム血症の原因は、上皮小体機能低下症子癇(しかん)膵炎そして低アルブミンなどが考えられます。犬の子癇(しかん)は、通常分娩後21日以内のメス犬にみられます。

カルシウム(Ca)低値の原因

上皮小体機能低下症
腎不全(リン濃度上昇に伴う)
低アルブミン血症
急性膵炎
子癇(しかん)
カルシウムやビタミンD吸収不良
エチレングリコール中毒

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まとめ

犬のカルシウム(Ca)の異常である、高カルシウム血症と低カルシウム血症について解説しました。

検査結果が正常値を外れている場合でも、必ずしも病気とは限りません。病気は、血液検査のみならず身体検査や他の検査も行って診断していきます。状況により、経過観察を行ったりさらに詳しい検査を行うことがあります。

カルシウムの異常は、レントゲンや超音波などの画像検査と一緒に、アルブミン、イオン化カルシウム、PTHそしてPTH-rPを測定することでより詳細な評価が可能となります。

血液検査の結果で心配な事がある時には、動物病院で獣医さんに遠慮なく質問してみましょう。