犬の二次性上皮小体機能亢進症(栄養性/腎性)を丁寧に解説

この記事では、犬の二次性上皮小体機能亢進症について原因、症状、診断そして治療を、現役獣医師が解説しています。

対象読者
  • 動物病院で二次性上皮小体機能亢進症と診断されたor疑われている犬の飼い主
  • 血液検査でカルシウムの異常がみられた犬の飼い主
  • 犬の二次性上皮小体機能亢進症について知りたい獣医学生や動物看護師

最後まで読むだけで、二次性上皮小体機能亢進症について誰にでもすぐに理解できるように作成しているので、是非一度目を通していただけると嬉しいです。

スポンサーリンク

二次性上皮小体機能亢進症とは

上皮小体機能亢進症とは、何らかの原因によりPTH(上皮小体ホルモン)が過剰に分泌される病気です。血液中を流れるPTHが増加するので、採血でPTHの値を測定することで診断が可能です。

PTH(Parathyroid hormone)は、上皮小体ホルモンや副甲状腺ホルモンとも呼ばれます。上皮小体から分泌され、血液中のカルシウムの濃度を上昇させる働きがあります。

上皮小体は副甲状腺とも呼ばれ、左右対称性の小さな上皮性の構造物として、左右の甲状腺の被膜下で実質組織の中に埋もれています。内上皮小体と外上皮小体があり、犬では内上皮小体は両葉の中間位に埋没しています。外上皮小体は甲状腺の頭側端近くに見られるか、 または甲状腺の頭側1/2の部位に見られます。

▲犬の甲状腺と上皮小体(副甲状腺)の位置

上皮小体機能亢進症の中でも、腎臓病などの上皮小体以外に病気の根源があり、二次的にPTHの量が増加した病態を、特に二次性上皮小体機能亢進症と呼びます。

原因

上皮小体機能亢進症は、原発性上皮小体機能亢進症二次性上皮小体機能亢進に大別されます。

原発性上皮小体機能亢進症は、上皮小体に腫瘍ができ、その腫瘍が過剰にPTHを分泌する病気であり、続発性上皮小体機能亢進症は、腎臓病などの上皮小体以外に病気の根源があり、二次的にPTHの量が増加した病気です。

犬の二次性上皮小体機能亢進症は、さらに栄養性二次性上皮小体機能亢進症腎性二次性上皮小体機能亢進症が存在します。

二次性上皮小体機能亢進症の原因

栄養性二次性上皮小体機能亢進症
 カルシウムやビタミンDの摂取不足

腎性二次性上皮小体機能亢進症
 慢性腎臓病

栄養性二次性上皮小体機能亢進症

カルシウムやビタミンDの摂取不足やリンの過剰摂取といった、食事の栄養のバランスが悪い事が原因となる上皮小体機能亢進症です。

特に、成長速度が速い、若い大型犬での発症率が高いです。

例えば、家庭調理食で全て肉の食事(レバーや牛の心臓など)のみを与えることで、起こることが報告されています。

近年は、良質なペットフードが市販されているため、その発生頻度は低下している病気です。

腎性二次性上皮小体機能亢進症

①慢性腎臓病の進行に伴い活性型ビタミンD3の腎臓での合成が低下し、腸管からのカルシウム吸収が減少する、②腎臓からのリン排泄が低下することにより、高リン血症となり、イオン化カルシウムの減少を介して、上皮小体からの上皮小体ホルモン(PTH)分泌が増加することが原因となる上皮小体機能亢進症です。

高齢の犬に慢性腎臓病が多いこともあり、発生頻度は高い病気です。

スポンサーリンク

二次性上皮小体機能亢進症の症状

栄養性二次性上皮小体機能亢進症と腎性二次性上皮小体機能亢進症で、症状が異なります。

栄養性二次性上皮小体機能亢進症

血液中のPTH(上皮小体ホルモン)の増加によりに、骨密度が低下して骨がスカスカな状態になり、骨がもろくなります。 

それに関連して、歩きたがらない、ぎこちない歩き方、骨の痛み、異常歩行、四肢の変形、病的骨折、歯が無くなる、軸骨格が関わっている場合は神経症状などがみられることがあります。

腎性二次性上皮小体機能亢進症

尿量・飲水量が増える、体重減少、食欲不振など慢性腎臓病の悪化に関連した症状がみられます。

二次性上皮小体機能亢進症の診断

栄養性二次性上皮小体機能亢進症と腎性二次性上皮小体機能亢進症で、診断が異なります。

栄養性二次性上皮小体機能亢進症

血液検査では、カルシウム(Ca)は正常〜やや低値であり、リン(IP)は正常〜やや高値であることが多いです。

診断には食事内容の問診が重要となります。具体的には、①ペットフードor家庭調理食、②ビタミンやミネラルのサプリメントの過剰摂取がないかを確認します。

腎性二次性上皮小体機能亢進症

血液検査では、カルシウム(Ca)は正常低値〜正常高値を示すことが多く、リン(IP)は腎臓からの排泄低下により正常高値〜高値を示します。

精密検査として、イオン化カルシウムを測定すると正常低値から低値を示し、PTH(上皮小体ホルモン)を測定すると正常高値〜高値を示します。

なお、原発性上皮小体機能亢進症と腎性二次性上皮小体機能亢進症との区別は、イオン化カルシウムを測定することで可能です。腎性二次性上皮小体機能亢進症であればイオン化カルシウムは正常低値から低値を示し、原発性上皮小体機能亢進症であれば高値を示します。

二次性上皮小体機能亢進症の治療

栄養性二次性上皮小体機能亢進症と腎性二次性上皮小体機能亢進症で、治療が異なります。

栄養性二次性上皮小体機能亢進症

まず家庭調理職の場合には、ペットフードメーカーの総合栄養食に変更します。

数週間してもカルシウムが低値を示すようなら、活性化ビタミンD3製剤を投与します。

▲活性型ビタミンD3製剤(出典元:帝人メディカルファーマHP)

腎性二次性上皮小体機能亢進症

まず、リンを制限した腎臓病療法食を与えるようにします。

それでも高リン血症が改善されない場合には、リン吸着剤の投与(商品名:レンジアレンなど)を考慮します。

▲リン吸着製品レンジアレン(出典元:エランコジャパンHP

また、活性化ビタミンD3の投与を状況に応じて投与します。

カルシウム(Ca)とリン(IP)の積が70を越えると、全身の石灰化(特に腎臓)が進むとされているので、可能な限りコントロールする必要があります。

予後

栄養性二次性上皮小体機能亢進症では、血液検査で偶然にみつかった場合には、適切な食事の変更で改善します。しかし、歩行異常や病的骨折がある場合には、注意が必要です。

腎性二次性上皮小体機能亢進症では、高リン血症が改善されない場合には悪いです。

まとめ

犬の二次性上皮小体機能亢進症について解説しました。近年は、良質なペットフードが市販されているため、栄養性二次性上皮小体機能亢進症に出会うことは少なくなりました。

しかし、腎性二次性上皮小体機能亢進症は、高齢の犬に慢性腎臓病が多いこともあり、遭遇する場合が多いです。カルシウム(Ca)とリン(P)の積が70を越えると全身の石灰化(特に腎臓)が進むとされているので、可能な限りコントロールする必要があります。