犬の敗血症

敗血症は、人医療において世界で数秒に1人が命を落としている病気であるとされています。そして、あらゆる年齢で罹患する可能性のある、重篤な疾患であると考えられています。

重症細菌感染症の進行した場合にみられる、犬の敗血症について解説します。

スポンサーリンク

犬の敗血症とは

敗血症は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」であり、傷口などから細菌が血液中に侵入しただけの「菌血症」とは区別されています。

また、全身性炎症反応症候群(SIRS)という言葉があり、これは色々な原因によって引き起こされた全身性の急性炎症反応と定義されおり、致命的な多臓器不全状態の前段階として考えられています。

全身性炎症反応症候群(SIRS)を引き起こす原因として、感染症、膵炎、火傷、外傷などがあります。

全身性炎症反応症候群(SIRS)とは
全身性の急性炎症反応で、多臓器不全状態の前段階原因
感染症、膵炎、火傷、外傷などが原因となる

全身性炎症反応症候群のうち、感染症を原因とする全身性炎症反応症候群が「敗血症」であると定義されています。

敗血症とは
全身性炎症反応症候群(SIRS)を伴う感染症

原因

敗血症の原因は、細菌、真菌、寄生虫、ウイルスなどの感染症ですが、そのほとんどが細菌感染によるものです。そして細菌感染の中でも、大腸菌などのグラム陰性菌の毒素であるエンドトキシンが、生体に様々な反応を引き起こします。

敗血症の原因
ほとんどが細菌感染、特にグラム陰性菌のエンドトキシン
スポンサーリンク

敗血症の症状

全身性炎症反応症候群(SIRS)では、体温、心拍、呼吸数、白血球数に異常がみられるとされています。

症状のポイント
体温、心拍、呼吸数、白血球数の異常

また敗血症時には、電解質異常、沈うつ、低血糖、CRP上昇、凝固系異常、嘔吐、下痢、末梢循環不全など多岐にわたる症状がみられる可能性があります。

なお敗血症により、十分な輸液を行ったにも関わらず低血圧が持続する状態を「敗血症性ショック」と呼びます。

関連記事犬のショック(循環性ショック)

敗血症の診断と治療

診断

敗血症の定義が、全身性炎症反応症候群(SIRS)を伴う感染症なので、まず全身性炎症反応症候群(SIRS)の診断が必要です。前述の通り、体温、心拍、呼吸数、白血球数に異常がみられます。

その診断基準としては、①体温が37.8°以下または39.7℃以上、②心拍数が160回/分または39.7℃以上、③呼吸数が40回以上またはPaCO2が32torr以下、④白血球数が18,000以上または4,000以下もしくは桿状核好中球10%以上、の4項目のうち2項目異常を満たす事が提唱されています。

同時に、感染部位の特定を行います。外傷などによる化膿性病巣、子宮蓄膿症、消化管穿孔、カテーテールや留置針などが原因となり得ます。

また敗血症の感染源は、50%以上が消化器系であるとの報告があるため、感染部位が特定できない場合には消化器系を中心に、腹部の検査を十分に実施すべきであるとされています。

治療

敗血症に対しては、できるだけ早い段階で抗菌薬の投与を行います。可能であれば、感受性試験の結果に基づき実施するのが推奨されます。

敗血症は凝固因子を活性化させるので、播種性血管内凝固(DIC)を併発する事が多いため、その予防や治療も必要に応じて行います。

また、感染部位の除去に必要であれば外科的処置を行います。

まとめ

犬の敗血症について解説しました。

敗血症は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」であり、「重症細菌感染症が進行した場合にみられる」と理解していただければ問題ないと思います。