犬のリンパ腫

愛犬の皮膚の下にあるリンパ節が急に腫れてきた時には、どんな病気を考えればよいのでしょうか?

犬に最も多い悪性腫瘍である、リンパ腫について解説します。

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リンパ腫とは

リンパ系とは、リンパ液と呼ばれる清明な液を運搬する導管ネットワークであり、リンパ液が通過するリンパ節などのリンパ組織もこれに含まれます。

リンパ系には3つの働きがあり、組織から組織液を取り除く働き、吸収された脂肪酸と脂質を乳糜(にゅうび)として循環系まで運ぶ働き、単球や抗体産生細胞などのリンパ球をはじめとする免疫細胞を産生する働きです。

そしてリンパ腫は、そのリンパ系組織から発生する悪性腫瘍です。

リンパ腫
リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
成犬であればどんな年齢でも発生が見られますが、6~8歳での発生が最も多いといわれています。雄犬と雌犬ではほぼ同じくらいの発生率で、どんな犬種にも見られます。
なお、ミニチュアダックスでは比較的若齢で発生し、雄の比率が高く、消化器型で、生存期間が長いといった特徴があるようです。

原因

はっきりとした原因はわかっていませんが、何らかの遺伝子の異常によって発生するものと考えられています。

除草剤、強力な磁場の影響、都市部に住む犬であることなどが、リンパ腫を引き起こす要因となるのではないかと考えられています。

リンパ腫の原因リンパ腫
本質的な原因は不明だが、遺伝子異常が考えられている

リンパ腫の症状

犬では、リンパ腫の発生部位によって、多中心型(リンパ腫全体の80%)、縦隔型(5%)、消化器型(5%)、その他(10%)に分類されます。

またリンパ腫は、形態によって低分化型リンパ腫(別名:高悪性度リンパ腫)と高分化型リンパ腫(別名:低悪性度リンパ腫)に大別されます。

多中心型リンパ腫

犬で最も多く見られる多中心型リンパ腫では、全身の皮膚の下にあるリンパ節が左右対称性に大きくなります。

リンパ腫が発症しても、初期には元気なことも多いですが、徐々に元気や食欲が低下してきます。また、顎や喉の周りのリンパ節が腫れることにより、呼吸がゼーゼーしたりイビキが目立つことがあります。

症状のポイント
多中心型リンパ腫は、全身の皮膚の下にあるリンパ節が左右対称性に腫大する。
その他に、縦隔型や消化器型などがある。

消化器型リンパ腫

消化器型リンパ腫は、犬と猫で消化管に発生する腫瘍の中で最も多い腫瘍だとされており、T細胞由来が多いとされています。
犬の消化器型リンパ腫は、小腸での発生が最も多く、胃と結腸がそれに続きます。
症状は、慢性嘔吐慢性下痢、食欲不振、体重減少などを示すことが多いです。
中〜高齢の犬での発症が多いですが、若齢での発症が認められることもあるため、注意が必要です。
消化管に腫瘤(しゅりゅう:できもの)を作るタイプやお腹のリンパ節が腫れている場合には、お腹を触診すると腫瘤が触れることがあります。

リンパ腫の診断と治療

診断

低分化型リンパ腫(高悪性度リンパ腫)では、針生検(細い針で細胞を取って顕微鏡で観察する検査)で診断できることが多いです。

近年は、リンパ球クローン性検査という遺伝子検査で、腫瘍細胞がT細胞由来かB細胞由来かの判断を行う検査も可能になり、補助的に用いられることがあります。

また、T細胞性と呼ばれるリンパ腫では、高カルシウム血症が見られることがあります。

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多中心型リンパ腫

低分化型リンパ腫(高悪性度リンパ腫)では前述の通り針生検で診断が可能ですが、高分化型リンパ腫(低悪性度リンパ腫)では、診断にリンパ節の摘出手術による検査が必要となることがあります。

その他、血液検査を行い血液中にリンパ腫の細胞がないか確認し、レントゲン検査や超音波検査などの画像検査で体の中のリンパ節や臓器の異常の有無の確認を行います。

診断のポイント
針生検で診断できることが多いが、リンパ節の摘出手術による検査が必要な場合もある

消化器型リンパ腫

消化器型リンパ腫の場合には、消化管の肥厚や層構造の消失、腸間膜リンパ節の腫大などの異常が超音波検査にてみられることが多いです。しかし、約3/4の犬の消化器型リンパ腫では、超音波検査で異常が認められなかったとされています。この場合には、内視鏡検査で適切な採材がなされれば診断が可能です。場合によっては、開腹して消化管の一部を切除して診断することもあります。

消化器型リンパ腫では、多くの場合に低アルブミン血症が見られるとされています。

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治療

低分化型リンパ腫(高悪性度リンパ腫)と高分化型リンパ腫(低悪性度リンパ腫)で、治療方針が異なってきます。

リンパ腫の治療法は、いくつかの抗がん剤を組み合わせた化学療法が主体となります。

多中心型リンパ腫

多中心型リンパ腫では、1~2週間に1回抗がん剤を注射する治療を6ヶ月程度継続する方法が主流となっています。この治療で約90%の犬が、普通のリンパ節の大きさに戻り、元気に過ごすことができるようになります。これを「寛解(かんかい)」と呼びます。

寛解状態の期間は様々ですが、ほとんどの犬で再発が見られます。そして再発時には、抗がん剤が効きにくくなっている事が問題となります。

治療を行った場合の生存期間の中央値は約1年といわれていますが、2年以上生存する場合もあります。逆に、初回の治療に反応しない場合には、早期に亡くなってしまいます。

高文化型リンパ腫(低悪性度リンパ腫)では、リンパ節が大きくなることによる呼吸困難などの症状、元気食欲などの一般状態の低下、血球減少症(貧血、好中球減少症、血小板減少症)の3つを評価し、いずれも認められない場合には無治療での経過観察が推奨されています。そしていずれかに異常が認められた場合に、治療を開始します。

治療のポイント
多中心型リンパ腫では、1~2週間に1回抗がん剤を注射する治療を6ヶ月程度継続する方法が主流

予後は、低分化型リンパ腫(高悪性度リンパ腫)で、治療を行わない場合には1ヶ月以内でほとんどの場合死亡するとされています。

消化器型リンパ腫

抗がん剤による化学療法が治療の中心となります。しかし、ある報告では化学療法の生存期間の中央値が77日とされており、多中心型リンパ腫に比べると予後は悪いです。

犬の直腸リンパ腫は、B細胞性が多いとされ、化学療法や外科手術などの治療を行った犬の平均生存期間は1,697日であったとされ、一般的な胃腸管リンパ腫と大きく異なる可能性が示唆されています。

まとめ

犬のリンパ腫について解説しました。最も多い多中心型リンパ腫では、リンパ節が腫れているのに気が付いたら全身のリンパ節を触って見ましょう。リンパ節が腫れるような他の病気がない場合には、リンパ腫の可能性があります。

リンパ腫の治療法は、いくつかの抗がん剤を組み合わせた化学療法が主体となりますが、多くの治療法があります。どの治療法を選択するかについて副作用なども含めて、獣医師さんとよく相談されるとよいでしょう。

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