犬の良性前立腺肥大症

人の前立腺肥大症の頻度は、年齢とともに高くなり、50歳から増加するとされています。そして、犬にも同様の病態が存在します。

高齢になると増加する、犬の良性前立腺肥大症について解説します。

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良性前立腺肥大症とは

前立腺は膀胱の真後にあり、尿道を取り囲むかたちで存在し、主な働きとしては前立腺液の分泌を行っている器官です。前立腺の容積および分泌機能は、精巣から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)の作用によって維持されていることはよく知られていますが、精巣から分泌されているエストロゲン(女性ホルモン)も、前立腺の機能に関与している大切なホルモンです。

前立腺とは
膀胱の真後にあり、前立腺液の分泌を行っている器官
前立腺の容積と分泌機能はアンドロゲン(男性ホルモン)により維持されている

中〜高齢犬になると、前立腺が肥大する事が知られていますが、顕著に前立腺容積が増大した場合、骨盤腔内での直腸の圧迫や前立腺尿道部の狭窄により、排便困難や排尿困難などを引き起こします。

良性前立腺肥大症
前立腺容積が顕著に増大し、排便困難や排尿困難などを引き起こす病気

原因

犬の高齢化にともない、精巣の精子形成能が低下し、性ホルモン分泌能も低下あるいは異常となると、精巣から分泌されるアンドロゲンとエストロゲンの分泌量の正常な均衡が破れ、時にエストロゲンの分泌がわずかに増える場合があります。エストロゲンは、前立腺の上皮細胞および間質細胞のアンドロゲン取り込みを促進する作用があるため、精巣からのエストロゲン分泌量の増加により上皮細胞と間質細胞の異常増殖が起こり、前立腺が肥大するとされています。

良性前立腺肥大症の原因
アンドロゲン分泌とエストロゲン分泌の不均衡

良性前立腺肥大症の症状

良性前立腺肥大症は、前立腺炎、嚢胞形成、膿瘍形成などさらなる前立腺疾患の初期状態と考えられています。

典型的な臨床症状としては、尿道からの血性の分泌物、排尿困難、しぶり(便意が頻回に起こる)、平坦な糞便がみられますが、細菌感染により前立腺炎となると膿尿がみられたり、重症例になると後肢の硬直や背中を痛がる症状がみられることもあります。

症状のポイント
尿道からの血性の分泌物、排尿困難、しぶり、平坦な糞便
前立腺炎、前立腺嚢胞、前立腺膿瘍などさらなる前立腺疾患を起こす可能性

良性前立腺肥大症は、未去勢犬では5才以上で60%、9歳以上で95%で発生するとされています。また前立腺炎は、良性前立腺肥大症に次いで2番目の発生率だとされています。

そして前立腺炎膿瘍は、前立腺炎や前立腺嚢胞が重篤になった状態であると理解されています。

良性前立腺肥大症の診断と治療

診断

身体検査所見では、前立腺の直腸検査で左右対称性の前立腺容積の拡大が認められることがあります。良性前立腺肥大症では痛みを伴いませんが、前立腺炎の場合には痛みを伴うことがあります。なお、前立腺炎や前立腺膿瘍では発熱も伴うことが多いです。

レントゲン検査や超音波検査などの画像検査で、前立腺の大きさや嚢胞/膿瘍の有無を確認し、前立腺炎や前立腺膿瘍が疑われる場合には、尿の細菌培養と感受性試験を行います。

血液検査では、感染症があれば白血球増加がみられます。

診断のポイント
直腸検査やレントゲン検査や超音波検査などの画像検査

治療

良性前立腺肥大症は、精巣から分泌されるアンドロゲン分泌とエストロゲン分泌の不均衡により発生するため、一般的な治療法として、精巣の摘出(去勢手術)が実施されています。

去勢手術後3週間後には前立腺は、手術前の半分の大きさになるとされています。もし、大きさに変化がなかった場合には、前立腺嚢胞、前立腺膿瘍、前立腺腫瘍を疑います。

麻酔の危険性が高い場合や内科的な治療を希望された場合には、お薬による治療を行うこともあります。お薬の治療には、抗アンドロゲン製剤を使用します。

抗アンドロゲン製剤には様々ありますが、酢酸オサテロン(商品名:ウロエース)などが使用されます。酢酸オサテロンは、1日1回で連続7日間投与しますが、投与後1週間で前立腺の大きさが約30%減少し、投与後2週間で約40%減少するとされています。

また抗アンドロゲン製剤の使用上の注意として、前立腺に細菌性の炎症が認められる場合には、使用を控えた方がいいとされています。

なお、治療後に再発する例も少ないながら存在しますが、その場合には再投与にて十分な効果があったとされています。

治療のポイント
可能であれば去勢手術

予後

良性前立腺肥大症は、治療すれば予後は良好であるとされています。

まとめ

犬の良性前立腺肥大症について解説しました。良性前立腺肥大症では、前立腺腫瘍を除きその他の前立腺疾患の発生率を下げることが可能なので、選択できれば去勢手術が推奨されております。

去勢手術は、腫瘍以外の前立腺疾患の予防となります。

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