犬のインスリノーマ(膵臓腫瘍)

特に若齢のトイ犬種などの小型犬で、低血糖がみられる場合がありますが、中齢〜高齢で低血糖が起きた場合にはどんな病気を考えますか。

膵臓のランゲルハンス島の腫瘍で最も発生率の高い、犬のインスリノーマについて解説します。

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インスリノーマ(膵臓腫瘍)とは

膵臓は胃の後ろにある臓器で、消化酵素(膵酵素)を分泌する外分泌機能と、ホルモンを分泌する内分泌機能を持っています。

膵酵素は腺房細胞より分泌され、膵管を通して十二指腸内へ送られます。この膵酵素は糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素を含んでいます。

膵臓のランゲルハンス島の細胞はいくつかに分類され、α細胞からはグルカゴン、β細胞からはインスリン、δ細胞からはソマトスタチンというホルモンが分泌されます。

膵臓の働き
消化酵素(膵酵素)を分泌する働きと、ホルモンを分泌する働き

そしてインスリノーマとは、過剰なインスリン分泌を起こす膵臓β細胞の機能的な腫瘍で、低血糖に関連した臨床症状を起こします。

この病気は犬でまれにみられ、中齢〜高齢犬(平均10歳)で発症するとされており、特に中型〜大型犬での発生が多くみられます。

そして実質上、全てのβ細胞腫瘍は悪性であり、64%が手術の時点で転移しているとされていおり、肝臓、所属リンパ節、大網への転移が一般的だとされています。また、膵臓の右葉と左葉に同じ頻度で発生するとされ、病変が1個の場合が多いですが、多発する場合や肉眼で確認できない場合もあります。

インスリノーマ
膵臓β細胞の機能的な腫瘍で、低血糖に関連した症状を起こす

インスリノーマの症状

通常、血糖値が60mg/dlを下回ると、血糖値を正常に戻すためインスリン分泌が停止し、エピネフリンとグルカゴンが分泌されます。その他に、グルココルチコイド(副腎皮質ホルモン)と成長ホルモンも分泌され、これらはより長く低血糖に拮抗する作用があるとされます。

インスリノーマの動物では、腫瘍性のβ細胞が低血糖にも関わらずインスリンを分泌し続けます。過剰なインスリンによって糖の取り込みと利用が増加し、肝臓の糖新生が低下します。

その結果、中枢神経系における低血糖や低血糖誘発性のカテコラミンの放出による臨床症状がみられます。

犬では発作が48~62%でみられ、その他にぐったりしている(虚脱)、運動が上手くできない(運動失調)、ふるえる(振戦)そして状況が把握できなくなる(見当識障害)などの症状がみられることがあります。

症状のポイント
発作、虚脱、運動失調、振戦、見当識障害など

なお、低血糖を起こす病気には以下の原因があります。

インスリン産生腫瘍(インスリノーマ)、膵臓以外の腫瘍(肝細胞癌、リンパ腫、平滑筋肉腫など)、敗血症、若齢犬の低血糖(特にトイ犬種)、狩猟犬の低血糖、副腎皮質機能低下症(アジソン病)、重度の肝不全、グリコーゲン貯蔵病

インスリノーマの診断と治療

診断

インスリノーマを思わせる臨床症状、低血糖に併発する高インスリン血症、そして膵臓に腫瘍があることで診断され、確定診断は腫瘍の病理組織診断です。

血糖値が60mg/dl以下である時に、血糖値とインスリン濃度を同時に測定することが推奨されています。低血糖時の高インスリン血症は、インスリノーマの診断を支持します。つまり、低血糖がありインスリン濃度が正常の中間から上限なら、確定はできないもののインスリノーマが疑わしいです。

また、血糖値とインスリン濃度から算出する修正インスリン・グルコース比(AIGR)という数値があり、これが30以上ではインスリノーマを疑い、10~30であればグレーゾーン、10以下ではインスリノーマの可能性は低いと判断します。

AIGR=[血中インスリン(μU/ml)×100]÷[血糖値(mg/dl)-30]
(ただし血糖値が31mg/dl未満の時は分母を1とする)

腹部超音波検査は診断の補助になりますが、腫瘍が検出されるのはインスリノーマの犬の30~50%であるとされています。そのためCT検査が、インスリノーマの検出には有用であると考えられています。

診断のポイント
臨床症状、低血糖時の高インスリン血症、超音波やCTでの腫瘍の検出

治療

インスリノーマの治療は、一般的には緩和療法となります。

低血糖に対する緊急的な治療として、食事が可能な状態であれば、少量の食べ物を与えるようにします。発作や重度の症状がみられる場合には、血管内に糖の投与を行います。それでも発作が持続するなら、抗けいれん薬の投与を考慮します。

可能であれば、外科手術により腫瘍の摘出を行います。しかし、一般的にはすでに転移を起こしていることが多く、手術後も症状が持続したり再発するので、長期的な治療が必要になる場合が多いです。

その場合の治療として運動を制限し、1日に4~6回食事を少量ずつ与え、それでも症状が出る場合にはグルココルチコイド(副腎皮質モルモン)の投与を行います。

抗がん剤による化学療法として、選択的に膵臓のβ細胞を破壊する抗がん剤(ストレプトゾトシン)を使用することがあります。

治療のポイント
可能であれば外科手術による摘出だが、転移や再発により長期的治療が必要

予後

手術によって生存期間は延長すると考えられており、手術を行なった場合の生存期間の中央値は12ヶ月であるとされています。しかし、手術時に転移病変が認められた犬で1年以上生存する確率は、20%であったとされています。

まとめ

犬のインスリノーマについて解説しました。インスリノーマは、発見した際にすでに転移していることが多い、厄介な病気です。

そのため、長期的な治療が必要になることが多いので、獣医さんとよく相談し低血糖を起こさない為の治療を続けましょう。

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