黒色もしくは褐色の「できもの」を愛犬にみつけた時、どうしますか?
皮膚のメラニンという色素を作る色素細胞(メラノサイト)が腫瘍化した、犬のメラノーマ(黒色種)について解説します。
メラノーマとは
メラノーマは黒色腫とも呼ばれ、皮膚のメラニンという色素を作る色素細胞(メラノサイト)が腫瘍化したものと考えられています。
メラノーマは発生部位により大きく上皮基底層由来の「皮膚メラノーマ」、歯肉由来の「口腔内メラノーマ」、爪床由来の「爪床メラノーマ」の3つに分類され、それぞれ悪性度が異なります。
皮膚メラノーマは、犬では皮膚腫瘍の5~7%を占めると言われており、通常病変は一つであることが多いですが、時に多発する場合もあります。また、高齢犬での発生(平均発症年齢9才)が多いです。
皮膚有毛部のメラノーマは85%以上が良性であるとされていますが、口腔内に発生するメラノーマは悪性であり、局所浸潤性や転移率が高いとされています。
口腔内メラノーマは、口腔内にできる悪性腫瘍の中では、最も発生率が高いとされています。
皮膚のメラニンという色素を作る色素細胞(メラノサイト)が腫瘍化したもの
原因
人では皮膚メラノーマの原因として紫外線の関与が考えられていますが、犬では有毛部での発生が多いことから関連は低いと考えられています。
メラノーマの症状
メラノーマは、腫瘍細胞がメラニン顆粒を含むため、黒色もしくは褐色の「できもの」としてみられることが多いです。しかし、皮膚と同じ色のメラニン顆粒を含まないメラノーマも存在するので注意が必要です。
口腔内メラノーマでは、口腔内の「できもの」に加えて、ヨダレや口臭、出血などの症状がみられます。
悪性メラノーマでは高率に転移をするため、転移に伴う症状がみられることがあります。例えば、肺転移を起こすと咳や努力性呼吸が認められ、脳転移を起こすと性格の変化や発作などの神経症状がみられることがあります。
黒色もしくは褐色の「できもの」だが、色素がない場合もある

メラノーマの診断と治療
診断
確定診断および良性か悪性かの判断には、メラノーマの切除を行います。
皮膚のメラノーマをみつけた際に、口腔内メラノーマの転移の可能性もあるので、口腔内の確認も必要です。
口腔内の「できもの」としてメラノーマ以外に、扁平上皮癌、線維肉腫、炎症性エプーリス、線維腫性エプーリスなどがあります。
悪性のメラノーマでは、リンパ管や血液を介して転移するとされ、局所リンパ節、肺、副腎、肝臓、脳などへの転移が報告されており、転移率は30~75%とされています。
その為、手術を計画する際には、血液検査やレントゲン検査や超音波検査による画像診断による、全身の精査が必要となります。
確定診断は生検。悪性の場合には転移性が高いので、全身精査が必要。
治療
メラノーマの治療は、外科手術による切除が推奨されています。
良性の場合であれば、完全に切除できれば完治します。悪性の場合でも、リンパ節転移や遠隔転移が認められなければ、十分な広さの切除範囲を確保して切除します。
また爪床メラノーマでは、断指術や断脚術を行うことがあります。
腫瘍が切除困難なほど大きい場合や手術を希望しない場合に、放射線療法を行うことがあります。
悪性メラノーマでは転移率が高いことから、理論的には抗がん剤などの全身療法が必要となりますが、現在のところ有効な治療法は知られていません。
外科手術による切除
予後
良性のメラノーマが、外科手術で完全に摘出された場合の予後は良好です。
悪性の場合には、転移率が高く進行が速いため、長期間の生存は期待できないとされていますが、転移が無く早期に局所コントロールが成功した場合には、1年以上の予後が得られることがあるとされています。
直径が2cm以上の口腔内メラノーマでは、診断された時点で微小な転移(主に肺)が高頻度で起こっているとされています。
まとめ
犬の悪性黒色種について解説しました。黒色や褐色の「できもの」を愛犬にみつけたら、すみやかに動物病院を受診するようにしましょう。
なお、今後の進歩が期待される治療法として免疫抑制療法があり、犬メラノーマに対する特異的免疫抑制療法としての DNAワクチンの効果が報告されています。