犬の播種性血管内凝固(DIC)

もし、愛犬が「播種性血管内凝固(DIC)」と診断されたら、それはどんな事を意味するのでしょうか?

獣医さんの使う言葉で、分かりにくい言葉の一つである、犬の播種性血管内凝固(DIC)について解説します。

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播種性血管内凝固 とは

播種性血管内凝固は、腫瘍や炎症などの病気によって血液凝固が異常になり、細い血管内に小さな血栓(血の固まり)ができてしまう状態です。そのため、血液を固めるのに必要な血小板や凝固因子が血栓を作るのに使われてしまい、出血が止まりにくくなる出血傾向がみられます。

播種性血管内凝固は、基礎疾患による血管内凝固亢進が引き金となって発症します。そのため、この病気の治療には、その基礎疾患に対する治療を行う必要があります。

そしてこの状態は、命に関わる重篤な状態であり、突然死が起こる事を考えなければいけません。

播種性血管内凝固とは
全身の血管に血栓ができた状態で、その結果として出血傾向がみられる
命に関わる危険な状態で、突然死の可能性あり

原因

播種性血管内凝固は、基礎疾患によって引き起こされた凝固亢進により始まります。凝固亢進は多くの場合、組織因子(組織トロンボプラスチン)が多量の血液と接触すること、および血管内皮細胞に強い障害が起こることにより発生します。

組織因子の血管内への多量の流入は、悪性腫瘍および組織破壊によることが多く、血管内皮細胞障害は、感染症や炎症性疾患による事が多いです。

播種性血管内凝固の原因
悪性腫瘍や重度の感染症などの基礎疾患

播種性血管内凝固が起きやすい腫瘍性疾患

血管肉腫、乳腺癌(特に炎症性乳がん)、播種性組織球肉腫、肺腺癌、肝細胞、癌胆管癌、進行したリンパ腫、好中球減少症や血小板減少症の見られる急性白血病、骨髄異形成症候群など

播種性血管内凝固が起きやすい非腫瘍性疾患

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播種性血管内凝固の症状

重度の場合、結膜、歯肉、皮下など全身に出血や紫斑(内出血によるあざ)がみられます。しかし、目に見えるような出血を示さないこともあります。

多くの小さな血栓がからだ中の血管にできるため、腎臓などの臓器に血栓が詰まって腎不全になるなど、多臓器不全になる事があります。

症状のポイント
全身の出血や紫斑、最終的に多臓器不全

播種性血管内凝固の診断と治療

診断

播種性血管内凝固の診断基準は、基礎疾患の存在に加え血液凝固線溶系検査の6項目(血小板数、FDP(フィブリン分解産物)、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)、フィブリノーゲン、AT(アンチトロンビン))のうち、4項目以上の異常があった場合に、播種性血管内凝固とするとされています。

しかし、実際には迅速に診断する必要性があるので、簡易な診断法を行う場合が多いと思われます。

治療

播種性血管内凝固は二次的な症候群なので、常に原因となる基礎疾患が存在します。

そのため、基礎疾患に対する治療を前提とした上で、播種性血管内凝固に対する対症療法を行います。

治療のポイント
基礎疾患に対する治療と播種性血管内凝固に対する対症療法

播種性血管内凝固に対する抗血栓療法としては、ヘパリンの投与が用いられます。

播種性血管内凝固を発症して出血傾向の認められる場合には、貧血の回復、血小板の補充、凝固因子と凝固阻止因子の補充といった目的で輸血を行います。このことによって状態を改善させながら、基礎疾患に対する治療を積極的に進めていくことが大切です。

また、播種性血管内凝固では循環の確保が極めて重要なので、充分な輸液を行います。

予後

播種性血管内凝固を発症した場合、命に関わる危険な状態であり、突然死の可能性もあります。

まとめ

犬の播種性血管内凝固について解説しました。播種性血管内凝固の状態になると、突然死の可能性もある重篤な状態です。

播種性血管内凝固には、必ず原因となる基礎疾患が存在するため、この状態に陥る前にその基礎疾患を発見し、治療を開始する事が重要になってきます。