犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症

人の多形紅斑/中毒性表皮壊死症は、ヘルペスウイルスや肺炎マコプラズマとの関連や原因不明とされる場合もありますが、薬物が原因となることが圧倒的に多いとされます。

犬でも同様に薬物が原因となることが多い、犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症について解説します。

犬の多形紅斑(EM)/中毒性表皮壊死症(TEN)とは

多型紅斑/中毒性表皮壊死症の明確な原因は知られていませんが、表皮の角化細胞(ケラチノサイト)を変化させ、異常な免疫応答の標的にする様々な抗原(例えば化学物質、薬物、細菌やウイルスなどの感染性因子、悪性疾患)によって起こる細胞介在性過敏症であると考えられています。犬ではみられることは少なく、猫ではまれな疾患と考えられています。

人では多形紅斑は、二つのタイプに分けられるとされています。局所に紅斑(皮膚表面の発赤)が生じる軽症タイプと、全身の皮膚の広い範囲に紅斑が生じるやや重症のタイプです。

そして最も重症なタイプとして、スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症があります。スティーブンス・ジョンソン症候群では、高熱とともに多形紅斑様の発疹が現れ、水疱やびらんを伴います。眼、口、陰部などの粘膜にも高度のびらんがみられます。皮膚のびらんが、体表面積の10%未満であればスティーブンス・ジョンソン症候群、10%を超えると中毒性表皮壊死症と呼ばれます。これらは、失明など眼に後遺症を残すことや、生命を脅かすこともあります。

人では、多形紅斑、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症は、それぞれ個別の病気とされていましたが、現在では、病状の程度の差はあっても、実質的にはほぼ同じ病気であると認識されているそうです。

獣医学領域では、多形紅斑と中毒性表皮壊死症を全く異なった病気と考える研究者もいる一方で、中毒性表皮壊死症は多形紅斑の重症型と考える研究者もいます。

多型紅斑/中毒性表皮壊死症
異常な免疫応答による細胞介在性過敏症であると考えられている

原因

犬において多形紅斑は、薬物、感染(ウイルスなど)に関連していますが、原因不明の場合もあります。中毒性表皮壊死症は、多くの場合薬物に関連していますが、原因不明の場合もあります。

中毒性表皮壊死症に含まれる疾患は、免疫介在性疾患の結果起こるとされています。多形紅斑では、様々な抗原に対する細胞介在性免疫反応が疑われている一方、中毒性表皮壊死症の発生場所として細胞性免疫反応に加え、薬物の有害作用に対する皮膚の解毒作用の欠如が指摘されています。いずれの場合においても、表皮の角化細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)が引き起こされます。

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の症状

多形紅斑は、真ん中から周囲に広がる環状または蛇行性の”標的”または”雄牛の眼”を形成する紅斑や、やや盛り上がった丘疹や局面が特徴的です。まれに全身性の鱗屑(角質が肥厚して剥離したもの)、痂皮(かさぶた)、紅斑、脱毛がみられることがあります。

中毒性表皮壊死症は、痛みを示す小水疱、水疱、潰瘍および表皮壊死が特徴で、元気や食欲の低下と発熱を伴うことがあります。

症状のポイント
真ん中から周囲に広がる環状または蛇行性の”標的”または”雄牛の眼”を形成する紅斑が特徴的

▲多形紅斑の皮膚病変の模式図

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の診断

他の類似の疾患を除外し、皮膚の一部を切除する「皮膚生検」を行い病理組織学的検査を行います。

病理組織では、個々の表皮角質細胞の壊死(アポトーシス)あるいは表皮全層細胞の壊死がみられるなど、損傷は表皮に限局しています。毛包の外毛根鞘の上皮も同様に壊死します。

熱傷(深部皮膚の損傷)と区別するために、生検は初期に行うと良いとされています。

似たような症状を示す病気として、熱あるいは薬品による熱傷、蕁麻疹、深在性の感染症(細菌、真菌)、水疱性類天疱瘡尋常性天疱瘡全身性エリテマトーデス、水疱性皮膚エリテマトーデス、血管炎、上皮向性リンパ腫、薬疹などがあります。

診断のポイント
類似の疾患の除外と皮膚生検

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の治療

病変が発現する2~4週間前より使用していた疑いのある全ての薬物を中止し、関連のある薬物や化学構造の類似した薬物は使用しないようにします。薬物や化学薬品との関連が疑われない場合、基礎疾患として感染症や腫瘍がないか徹底的に調べます。

また、症状により支持治療として入浴、輸液、電解質補正、栄養摂取を必要に応じて行います。二時的な皮膚の細菌感染を防ぐために、疑われている薬物と関連のない抗生物質の全身投与を行います。特に、中毒性表皮壊死症の場合には入院を検討します。

軽症の多形紅斑では、2~4週間で自然治癒することがあります。

重症例の場合、グルココルチコイド(ステロイド)による治療を行います。通常1~2週間で、著名な改善がみられるとされています。病変が消失した後に、徐々に減量していきます。多くの場合に、グルココルチコイド(ステロイド)の投与を終了することができるとされています。もし、長期間のグルココルチコイド(ステロイド)の治療が必要な場合には、アザチオプリンやシクロスポリン(商品名:アトピカ)などの併用が効果的であるとされています。

難治性の場合には、ヒト免疫グロブリン製剤(IVIG)が有効なことがあるとされています。

治療のポイント
疑いのある全ての薬物を中止、基礎疾患として感染症や腫瘍がないかの確認

予後

多形紅斑の予後は、皮膚病変が重度で広範囲の場合を除けば、通常良好とされています。中毒性表皮壊死症の予後は、不良とされています。

基礎疾患が発見され、また消去された場合、状態は3週間以内に改善することが多いです。

まとめ

犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症について解説しました。この病気は、環状または蛇行性の”標的”または”雄牛の眼”を形成する紅斑や、やや盛り上がった丘疹や局面が特徴的です。

特に中毒性表皮絵師症は、命に関わることもあるので早急に動物病院を受診するようにしましょう。

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