犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症

人の多形紅斑/中毒性表皮壊死症は、ヘルペスウイルスや肺炎マコプラズマとの関連や原因不明とされる場合もありますが、薬物が原因となることが圧倒的に多いとされます。

犬でも同様に薬物(投薬)が原因となることが多い、犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症について解説します。

犬の多形紅斑(EM)/中毒性表皮壊死症(TEN)とは

多形紅斑と中毒性表皮壊死症は、共に皮膚の過敏症という似た特徴を持つ病気であり、軽症タイプを多形紅斑、重症タイプを中毒性表皮壊死症と考えていただいて差し支えないと思われます。

ただし実際に、多形紅斑と中毒性表皮壊死症がほぼ同じ病気で、症状の重症/軽症が主な違いなのか、病気そのものが違うのかについては医学領域、獣医学領域ともまだ結論は出ていません。

多型紅斑/中毒性表皮壊死症の正確な発生機序は不明ですが、様々な原因により皮膚(表皮)の角化細胞(ケラチノサイト)が変化することで、異常な免疫応答の標的になってしまう細胞介在性過敏症であると考えられています。その結果いずれの場合においても、表皮の角化細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)が引き起こされます。

犬の多形紅斑の原因として薬物、感染(ウイルスなど)が、中毒性表皮壊死症の原因として、ほとんどの場合薬物が関連しているとされています。

多形紅斑/中毒性表皮壊死症は、犬ではほとんど診断されることはない珍しい病気です。

多型紅斑/中毒性表皮壊死症
異常な免疫応答による細胞介在性過敏症であると考えられている

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の症状

犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症の症状は、前述の通り多形紅斑は軽症タイプで、中毒性表皮壊死症が重症タイプです。

多形紅斑は、真ん中から周囲に広がる環状または蛇行性の”標的”または”雄牛の眼”を形成する紅斑や、やや盛り上がった丘疹や局面が特徴的です。まれに全身性の鱗屑(角質が肥厚して剥離したもの)、痂皮(かさぶた)、紅斑、脱毛がみられることがあります。

中毒性表皮壊死症は、痛みを示す小水疱、水疱、潰瘍および表皮壊死が特徴で、元気や食欲の低下と発熱を伴うことがあります。

症状のポイント
多形紅斑では、真ん中から周囲に広がる環状または蛇行性の”標的”または”雄牛の眼”を形成する紅斑が特徴的

▲多形紅斑の皮膚病変の模式図

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の診断

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の診断は、他の類似の疾患を除外し、皮膚の一部を切除する「皮膚生検」を行い病理組織学的検査を行います。この皮膚生検は、熱傷による皮膚深部の損傷と区別するために、病気の初期に行うことが推奨されています。

病理組織学的検査では、個々の表皮角化細胞の壊死(アポトーシス)あるいは表皮全層細胞の壊死がみられるなど、損傷は表皮に限局しています。

似たような症状を示す病気には、以下の原因があります。

熱傷、蕁麻疹、深在性の感染症(細菌、真菌)、水疱性類天疱瘡尋常性天疱瘡全身性エリテマトーデス、水疱性皮膚エリテマトーデス、血管炎、上皮向性リンパ腫、薬疹
診断のポイント
類似の疾患の除外と皮膚生検

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の治療

多形紅斑/中毒性表皮壊死症の治療では、原因の多くが薬物(投薬)であることから、まず症状が現れる2~4週間前より使用していた疑いのある全ての薬物を中止します。薬物との関連が疑われない場合には、基礎疾患として感染症や腫瘍がないかを検査します。

症状により支持治療として入浴、輸液、電解質補正、栄養摂取を必要に応じて行います。二時的な皮膚の細菌感染を防ぐために、疑われている薬物と関連のない抗生物質の投与を行います。

軽症タイプである多形紅斑では、2~4週間で自然治癒することがありますが、重症タイプである中毒性表皮壊死症の場合には入院を検討します。中毒性表皮壊死症は、死亡する可能性もある病気です。

重症例の場合には、グルココルチコイド(ステロイド)による治療を行います。通常1~2週間で、大幅な改善がみられるとされています。病変が消失した後に、グルココルチコイド(ステロイド)を徐々に減量していきます。そして多くの場合に、投与を止めても再発しないとされています。

グルココルチコイド(ステロイド)を止めて再発する場合などで長期間の治療が必要な場合には、免疫抑制剤との併用が効果的であるとされています。

グルココルチコイド(ステロイド)に反応しない場合には、ヒト免疫グロブリン製剤(IVIG)が有効なことがあるとされています。

治療のポイント
疑いのある全ての薬物(投薬)を中止、基礎疾患として感染症や腫瘍がないか確認

まとめ

犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症について解説しました。多形紅斑では、環状または蛇行性の”標的”または”雄牛の眼”を形成する紅斑や、やや盛り上がった丘疹や局面が特徴的です。

薬物(投薬)使用後に皮膚病変がみられた場合には、多形紅斑/中毒性表皮壊死症の可能性があり、特に重症タイプである中毒性表皮壊死症では命に関わることもあるので、早急に動物病院を受診するようにしましょう。

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