犬の薬剤性皮膚反応(薬疹)

薬を内服して皮膚病変が出た場合にはすぐ薬疹を考えたくなりますが、これは正しくありません。薬は具合が悪い時に内服する場合がほとんどなので、薬疹なのか病気による皮膚病変かの区別は難しい事が多いです。

正確に診断するのは専門家でも難しい場合があるとされる、犬の薬剤性皮膚反応(薬疹)について解説します。

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犬の薬剤性皮膚反応(薬疹)とは

薬疹は、外用、内服または注射などの方法での薬剤投与後に発症する皮膚もしくは粘膜病変です。有害な薬物反応は、1回の治療で発症する場合、数回の治療で発症する場合、または治療の数年後に起こる場合があります。犬や猫ではまれな病気です。なお、犬での薬疹の発生率は2%、猫での発生率は1.6%とする報告があります。

しかし多くの薬物反応は、原因薬剤の特定が困難であるため未報告であるとも考えられています。

犬の薬剤性皮膚反応(薬疹)の症状

症状は様々で、丘疹(赤いポツポツ)、局面(扁平な皮膚の隆起)、小水疱、水疱、紫斑(皮膚内の出血)、紅斑(皮膚表面の発赤)、蕁麻疹(後述)、血管性浮腫(後述)、脱毛、多型紅斑/中毒性表皮壊死症(後述)、鱗屑(角質が肥厚して剥離したもの)や落屑(死んだ皮膚が剝がれ落ちる)、びらん、潰瘍、外耳炎などがみられます。

皮膚病変は1個〜多数みられ、痛みや痒みを伴います。発熱や元気の低下、びっこを引いて歩くこともあります。

犬の薬剤性皮膚反応(薬疹)の診断

薬疹と特定するためには薬剤投与歴、皮膚病変の発生と投与の時期が合っているか、皮疹に対して薬剤以外の説明がつかない、薬剤投与中止後1~2週間で皮疹が改善するということが重要です。

疑われる薬剤を再投与することが診断的な方法ですが、推奨はされておりません。

薬疹は他の皮膚疾患、特に免疫介在性や自己免疫性の皮膚疾患に類似しています。薬疹の皮膚病変は前述のとおり様々なため、臨床症状により似たような症状を示す病気を除外する必要があります。代表的な皮膚病変のパターンとその類似疾患を、以下にまとめました。

紅皮症/剥奪性皮膚炎

紅皮症とは、全身の皮膚が真っ赤に潮紅して皮膚が剥がれ落ちる(落屑)状態を呈する皮膚反応であり、単一の疾患ではなく症候名です(紅皮症という病気があるわけでは無い)。剥脱性皮膚炎とも呼びます。

同様の症状を示す病気として、上皮向性リンパ腫があります。

蕁麻疹/血管性浮腫

蕁麻疹とは、皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう皮膚病変です。そして蕁麻疹と併発するものとして、血管性浮腫と呼ばれる病態があります。血管性浮腫とは、皮下組織が突然、局所的に腫れる状態です。一般的に蕁麻疹は痒みを伴い、血管性浮腫は痒みを伴わないとされています。

同様の症状を示す病気として、アレルギー性疾患、外部寄生虫症、膿皮症や皮膚糸状菌症、肥満細胞腫があります。

自己免疫性皮膚疾患

様々な臨床症状を示し、膿疱、水疱、痂皮などがみられます。通常は、薬剤が関連してない自然発症性の自己免疫性の皮膚疾患であることが多いです。

同様の症状を示す病気として、天疱瘡(尋常性天疱瘡落葉状天疱瘡など)、水疱性類天疱瘡全身性エリテマトーデスなどがあります。

多形紅斑/中毒性表皮壊死症

多形紅斑は、赤く盛り上がった斑状の病変を特徴とする炎症性皮膚疾患であり、中毒性表皮壊死症は、全身の皮膚が紅くなり、擦るだけでズルズルと剥離し、まるで火傷のようになる重篤な皮膚症状です。人では中毒性表皮壊死症の最も多い原因は、薬物の副作用であるとされており、死亡率は20~40%と言われています。

同様の症状を示す病気として、膿皮症、皮膚糸状菌症、蕁麻疹、自己免疫性皮膚疾患、火傷、潰瘍性胃炎、上皮向性リンパ腫などがあります。

関連記事犬の多形紅斑/中毒性表皮壊死症

固定薬疹

固定薬疹とは、特定の薬剤が原因となり、原因が加わるごとに同一部位に皮膚病変が生じる病態のことです。原因薬剤が投与されるたびに発症は拡大し、新たな部位にも病変病変がみられるようになります。境界明瞭な紅斑性病変がみられるのが特徴で、水疱や壊死を伴う場合もあります。

同様の症状を示す病気として、接触性皮膚炎、アレルギー疾患、膿皮症、皮膚糸状菌症などがあります。

注射部位反応

皮下注射の後に、注射した部位に痛みや硬結が生じたり、赤く腫れたり、痒くなったり、出血するなどの局所反応が起こることがあり、この反応を注射部位反応と呼びます。

同様の症状を示す病気として、アレルギー疾患、膿皮症、円形脱毛症、牽引による脱毛、腫瘍などがあります。

血管炎

血管炎とは、全身の血管のどこかに炎症が起き、そのため皮膚やさまざまな組織や臓器が侵される病気です。紫斑、壊死、点状の潰瘍がみられ、特に四肢、圧力がかかる場所、口腔粘膜に発生します。

同様の症状を示す病気として、蕁麻疹、自己免疫性疾患、多形紅斑/中毒性表皮壊死症、拡大性血管内凝固、凝固障害、凍傷、腫瘍などがあります。

犬の薬剤性皮膚反応(薬疹)の治療

原因薬物の使用を中止します。中止すると病変は通常2~4週間で消失しますが、時に数週間継続する場合もあります。

また、症状により支持治療として入浴、抗菌薬、輸液を必要に応じて行います。

グルココルチコイド(ステロイド)による治療は、症状を緩和するのに役立つことがあるとされています。ただし、これについては議論の余地があるかもしれません。

重度の薬疹では、ヒト免疫グロブリン製剤(IVIG)が有効なことがあるとされています。

原因薬物や関連のある薬物、化学構造が類似した薬物は、その後使用しないように注意しましょう。

予後

複数臓器の関連や広範囲に渡る表皮壊死が無い限り、予後は良好です。

まとめ

犬の薬剤性皮膚反応(薬疹)について解説しました。薬疹と診断された場合には、原因薬物や関連のある薬物、化学構造が類似した薬物は、その後使用しないように注意しましょう。

他の動物病院にかかる際には、必ず薬疹の既往歴について最初に伝えるようにしましょう。

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