犬の薬疹

薬疹とは、皮膚にあらわれる薬の副作用のことであり、多くは薬に対するアレルギー反応だと考えられています。

様々なパターンの皮膚症状がみられるため専門家でも診断が困難とされる、犬の薬疹(薬剤性皮膚反応)について解説します。

犬の薬疹とは

犬の薬疹は、外用(塗り薬)、内服(飲み薬)、注射などの方法による薬剤投与後に皮膚または粘膜に病変がみられる病気です。薬剤の投与後1回で発症する場合もあれば、数回の薬剤投与で発症する場合、または薬剤投与の数年後に発症する可能性もあります。

薬疹の典型的な皮膚症状は、発赤、膨らみ、水疱、蕁麻疹、痒みなどですが、症状の程度としてすぐに治る軽症例から、全身の皮膚や粘膜に拡大して内臓障害を伴う重症例まで様々です。

なお、犬での薬疹の発生率はおよそ2%とされていますが、薬疹の診断は困難であるため、実際には薬疹と診断されていなかったケースも多いのではないかと推測されています。

犬の薬疹の症状

犬の薬疹の皮膚病変は様々で、下記のようないくつかのパターンが存在します。また、皮膚病以外の症状として、発熱や元気の低下、びっこを引いて歩くなどを伴うこともあります。

紅皮症/剥奪性皮膚炎

紅皮症とは、全身の皮膚が真っ赤に潮紅して皮膚が剥がれ落ちる(落屑)状態を呈する皮膚反応であり、単一の疾患ではなく症候名です(紅皮症という病気があるわけでは無い)。剥脱性皮膚炎とも呼ばれます。

蕁麻疹/血管性浮腫

蕁麻疹とは、皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう皮膚病変です。そして蕁麻疹と併発するものとして、血管性浮腫と呼ばれる病態があります。血管性浮腫とは、皮下組織が突然、局所的に腫れる状態です。一般的に蕁麻疹は痒みを伴い、血管性浮腫は痒みを伴わないとされています。

自己免疫性皮膚疾患

膿疱、水疱、痂皮(かさぶた)などの皮膚病変がみられます。通常は、薬剤が関連してない自然発症性の自己免疫性の皮膚疾患(落葉状天疱瘡など)であることが多いです。

多形紅斑/中毒性表皮壊死症

多形紅斑は、赤く盛り上がった斑状の病変を特徴とする炎症性皮膚疾患であり、中毒性表皮壊死症は、全身の皮膚が紅くなり、擦るだけでズルズルと剥離し、まるで火傷のようになる重篤な皮膚症状です。人では中毒性表皮壊死症の最も多い原因は、薬物の副作用であるとされており、死亡率は20~40%と言われています。

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固定薬疹

固定薬疹とは、特定の薬剤が原因となり、原因が加わるごとに同一部位に皮膚病変が生じる病態のことです。原因薬剤が投与されるたびに発症は拡大し、新たな部位にも病変病変がみられるようになります。境界明瞭な紅斑性病変がみられるのが特徴で、水疱や壊死を伴う場合もあります。

注射部位反応

皮下注射の後に、注射した部位に痛みや硬結が生じたり、赤く腫れたり、痒くなったり、出血するなどの局所反応が起こることがあり、この反応を注射部位反応と呼びます。

血管炎

血管炎とは、全身の血管のどこかに炎症が起き、そのため皮膚やさまざまな組織や臓器が侵される病気です。紫斑、壊死、点状の潰瘍がみられ、特に四肢、圧力がかかる場所、口腔粘膜に発生します。

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犬の薬疹の診断

犬の薬疹と診断するためには、薬剤の投与時期と皮膚病変の発症時期が合っているかどうか、そして薬剤の投与中止後およそ1~2週間で皮膚病変が改善するかどうかが重要です。

さらに疑われる薬剤を再投与して、皮膚病変が再発することで確定診断となりますが、再び症状が悪化するため、実施するか否かについては獣医師と良く相談する必要があります。

また、薬疹は他の皮膚疾患、特に免疫介在性や自己免疫性の皮膚疾患に類似しているので、これらを病気を除外する必要があります。

犬の薬疹の治療

犬の薬疹の治療は、原因薬物の使用の中止です。中止すると皮膚病変は2~4週間で消失することが多いですが、時に数週間継続する場合もあります。

必要に応じて、支持治療として抗生物質の投与や輸液を行う場合や、症状の緩和を目的としてグルココルチコイド(ステロイド)による治療が行われる場合もあります(ただし有用性には議論がある)。

重度の薬疹では、ヒト免疫グロブリン製剤(IVIG)が有効なことがあるとされています。

原因薬物が特定できた場合には、その薬物と関連のある薬物、化学構造が類似した薬物は、その後使用しないように注意しましょう。

予後

重症の薬疹では命の危険がありますが、それ以外では予後は良好です。

まとめ

犬の薬疹について解説しました。薬疹と診断された場合には、原因薬物や関連のある薬物、化学構造が類似した薬物は、その後使用しないように注意しましょう。

そのために他の動物病院にかかる際には、必ず薬疹の既往歴について最初に伝えるようにしましょう。

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