犬の痒み止め注射【サイトポイント】を丁寧に解説

犬アトピー性皮膚炎などの皮膚の痒みは、現在のところ完全に治す事が難しく、生涯に渡る治療が必要とされます。2021年現在の主な治療として、プレドニゾロン(いわゆるステロイド)、オクラシチニブ(商品名:アポキル)、シクロスポリン(商品名:アトピカ)などが用いられています。

いずれも1日1回から2回の投与が必要であり、投薬の手間がかかってしまいます。しかし、2020年にゾエティス・ジャパン株式会社より犬アトピー性皮膚炎の新しい薬として「サイトポイント」が販売開始されました。

このサイトポイントは、今までの経口薬と違い注射です。そして一回の注射で1ヶ月間痒みを抑える効果が持続するとされています。

そこで今回は、新しい注射による痒み止めである、サイトポイントを解説していきます。

サイトポイントの成分

サイトポイントの有効成分はロキベットマブであり、犬IL-31をのみを標的として特異的に中和するモノクローナル抗体(mAb : monoclonal antibody)です。なお、IL-31は犬において掻痒を誘発する主要なサイトカインであり、モノクローナル抗体とは、B 細胞の単一細胞系からクローン化された単一の均質な抗体です。

このサイトポイントには、革新的な技術が使用されており、「抗体医薬」に分類されます。この抗体医薬の代表例として、2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑先生の、癌免疫治療薬「オプジーボ」があります。

ゾエティス・ジャパン株式会社HPより引用

サイトポイントの作用機序

サイトポイントの有効成分であるロキベトマブは、犬IL-31を抗原と認識し、抗原-抗体複合体を形成して中和することにより、IL-31と受容体の結合を妨げます。その結果、IL-31介在性の細胞シグナル伝達を抑制し、犬アトピー性皮膚炎に伴う掻痒や症状を緩和します。

抗体というのは本来は、病原菌などを認識し、それに結合することで体内から排除します。簡単にいうと、サイトポイントは痒みを引き起こすIL-31を病原体と認識し、それを体内から排除するので、痒みが治ります。

同じく犬アチピー性皮膚炎の治療薬である、アポキルと作用機序が比較されます。サイトポイントはアポキルに比べよりピンポイントに痒みに特化して治療をすることができるので、一般に副作用が出づらいと考えられています。

関連記事:犬の痒み止め【アポキル

図:代表的なアトピー性皮膚炎の薬とその効果範囲のイメージ

抗体医薬の安全性

抗体はタンパク質であり、研究・開発段階ではマウスの抗体が用いられています。仮に、そのままのマウスの抗体を犬に投与すると、犬の体ではマウスの抗体を異物と認識するので、効果を発揮する前に体から排除されてしまいます。そこで、IL-31と結合するマウスの抗体を、徐々に犬に切り替えていく作業を行います。

犬での安全な臨床応用のため、サイトポイントはマウス由来のモノクローナル抗体を高度にイヌ化し、アミノ酸の90%以上を犬由来の抗体と同一としています。

サイトポイントの適応例

サイトポイントは、犬アトピー性皮膚炎に伴う症状の緩和が適応となっています。

なお、猫にも犬と同様に使えるのではないかと思われるかもしれませんが、猫には使えません。その理由は、サイトポイントが犬の抗体だからです。つまり、猫に注射をすると、サイトポイントは猫の体内で異物として認識され、体内から排除されてしまいます。

関連記事:犬のアトピー性皮膚炎

サイトポイントの容量

ロキベトマブとして体重1kgあたり1mgを基準量として、1ヵ月に1回、皮下投与します。当初は、3kg以上しか使用できませんでしたが、現在は1.5k以上に使用できるようになっています。

図:体重別のサイトポイント使用量(ゾエティス・ジャパン株式会社HPより引用

サイトポイントの注意事項

サイトポイントで最も見られる副作用として、嘔吐が報告されています。

タンパク質を注射として投与しているので、最も心配される副作用はアナフィラキシーショックです。しかし、長期投与(9ヵ月間)の安全性評価においても、その発生は認めなかったと報告されています。ただし、注射部位の疼痛といった副作用は報告されています。

また、回数を追うごとに次第に体がサイトポイントを異物と認識し始めることにより、段々と効果が薄くなることも理論上心配される事象です。

まとめ

サイトポイントには、従来の薬にはない、注射という投与経路であり、さらに1ヶ月持続する作用があります。アポキルを使用するか、サイトポイントを使用するか迷う場面は多くありますが、アトピー性皮膚炎の重症度、併発している皮膚疾患、お薬が飲ませやすいか、注射を嫌がらないか、といった様々な要因を担当の獣医さんと相談して決めるのが良いと思います。

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