犬の水疱性類天疱瘡

人の水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)は表皮基底膜部抗原(ヘミデスモソーム構成蛋白であるBP180とBP230)に対する自己抗体(IgG)の関与により、表皮下水疱を生じる自己免疫性水疱症の代表的疾患とされています。

同じく表皮基底膜に対する自己抗体ができる病気である、犬の水疱性類天疱瘡について解説します。

犬の水疱性類天疱瘡とは

水疱性類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚の基底膜に対する自己抗体が自己抗原に反応して、皮膚を傷害し、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気です。落葉状天疱瘡尋常性天疱瘡などの天疱瘡群を「表皮内水疱症」と呼ぶのに対し、水疱性類天疱瘡、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症などの類天疱瘡群は「表皮下水疱症」と呼ばれます。

一般に表皮内水疱症に比べて表皮下水疱症は、水疱が破けにくいとされています。

水疱性類天疱瘡
皮膚の基底膜に対する自己抗体ができ、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気

原因

天疱瘡群は、表皮細胞と表皮細胞の接着因子(デスモゾーム)に対する自己抗体ができる病気でしたが、水疱性類天疱瘡では、表皮と真皮の境にある基底膜に存在する接着因子(ヘミデスモソームの)の構成タンパクである17型コラーゲン(COL17)に対する抗体ができることによっておきる病気です。

(図)天疱瘡および類天疱瘡の病変形成部位の比較

水疱性類天疱瘡の症状

水疱性類天疱瘡は、皮膚(特に頭部、頚部、脇の下、太ももの付け)、皮膚粘膜境界部(外鼻孔、まぶた、口唇)、粘膜(口腔内、肛門、外陰部、包皮、結膜)および足底の潰瘍性病変です。

水疱を形成する疾患なのですが、実際に小水疱や水疱がみられることは、稀だとされています。

重度な場合には、食欲不振、元気や食欲の低下、発熱がみられます。

症状のポイント
皮膚、皮膚粘膜境界部、粘膜および足底の水疱や潰瘍性病変

水疱性類天疱瘡の診断

皮膚の一部を切り取って検査する「皮膚生検」を行い、病理組織学的検査を行います。病理組織学的所見では、表皮直下の裂隙と水疱がみられます。

また、他の似たような症状を示す病気を除外します。

似たような症状を示す皮膚病として、尋常性天疱瘡、全身性エリテマトーデス、多型紅斑/中毒性表皮壊死症、薬疹、感染症(細菌、真菌)、脈管炎、上皮向性リンパ腫があります。

診断のポイント
皮膚の一部を切り取って検査する皮膚生検

治療

治療には、グルココルチコイド(ステロイド)が中心となります。病変部が消失したら(治療開始後4~10週間)、数週間(8~10週間)かけて隔日投与で寛解が得られる最低維持用量まで、用量を徐々に減らします。

寛解を維持するために、グルココルチコイド(ステロイド)単独の投与で効果が得られることもありますが、結果として副作用が発現する可能性があります。そこで、免疫抑制剤の併用や単独での治療を行うことが、長期維持を行う場合に推奨されます。

免疫抑制剤として、アザチオプリン、クロラムブシル、テトラサイクリン/ニコチン酸アミド、およびシクロスポリン(商品名:アトピカなど)があります。

治療のポイント
グルココルチコイド(ステロイド)を中心とした治療

予後

寛解状態を維持するために、通常生涯に渡る治療が必要となります。臨床症状や血液検査の定期的なチェックを行い、必要に応じて治療法を見直すことが重要です。

治療により起こる可能性のある合併症は、重篤な副作用や免疫抑制による細菌感染、皮膚糸状菌症、ニキビダニ症などです。

まとめ

犬の水疱性類天疱瘡について解説しました。人の医療では天疱瘡群はニコルスキー(Nikolsky)現象が陽性なのに対して、水疱性類天疱瘡は陰性になるという違いがあるとされています。このニコルスキー現象とは、健常な皮膚に機械的刺激(圧迫・摩擦)を加えると表皮の剥離もしくは水疱を生じることで、表皮細胞同士の結合が緩む疾患で陽性になります。

実際には臨床症状でこれらの疾患を区別することは難しいので、皮膚生検で判別していきます。

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