犬の耳血腫

人の耳血腫は、ボクサーや柔道家のように耳介を頻繁に打撲や摩擦力が加わる人に多いとされています。

外耳炎に続発してみられることのある、犬の耳血腫について解説します。

犬の耳血腫とは

犬の耳介には、体外の音波を集める集音器の機能があり、耳介軟骨(弾性軟骨)に耳介筋と呼ばれる横紋筋が取り付き、その全体を皮膚が覆っている構造となっています。

そして耳血腫とは、血液が皮膚と軟骨組織の間に貯留し血腫を形成したものです。

耳血腫
血液が皮膚と軟骨組織の間に貯留し血腫を形成したもの

原因

原因についてはこれまでに種々の説が挙げられてきたが、各々に否定的な意見もあり、いまだに明確にはなっていません。

これまでの説で一般的なものは、外耳炎などに伴う痛みや痒みのために頭を強く振ったり掻いたりすることによって発症するというものです。特に垂れ耳の犬では毛細血管が破れる危険性が高いとされています。

耳血腫の犬のほとんどで、耳ダニ、マラセチア、細菌による外耳炎が併発していたとされています。

また、自己免疫疾患により耳介軟骨にびらんを引き起こす可能性も指摘されています。さらに副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)のような毛細血管の脆弱性を増加させる疾患や、血液の凝固異常を起こす疾患も発生原因と考えられています。

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耳血腫の症状

耳介の内側面の全体あるいは一部に波動感のある腫れがみられ、熱感や痛みを伴う場合も多いです。これは前述の通り、耳介の脈管および毛細血管の外傷性の破裂に起因するものであり、犬が頭を激しく振った際に、耳介の遠心性の行動であるパタパタとした動きが脈管の破裂を起こすと考えられているため、頭部を振ることが続けば、通常耳介の長さ全域におよぶ血腫に拡張します。そのため多くの場合、耳の腫れは耳介内側の付け根(基部)から始まり、耳介の先端に向かって拡大していきます。

耳血腫は通常片側にのみみられますが、両側にみられる場合もあります。時間をかけて血腫が固体化すると、耳介が硬く肥厚し、萎縮や変形していきます。

症状のポイント
耳介の内側面の全体あるいは一部に波動感のある腫れがみられる

耳血腫の診断

通常、症状が特徴的なので病歴と臨床診断で可能です。

問診では、頭部を頻繁に振ったり、掻いたり、擦り付けるなどの外耳炎の症状や全身性の皮膚疾患の病歴の有無などを確認します。

再発防止のためには、基礎疾患を診断する必要があるので、耳鏡による耳道の検査を始め、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、甲状腺機能低下症などの疾患の有無を確認します。

診断のポイント
症状が特徴的なので病歴と臨床診断で可能だが、基礎疾患の確認を行う

耳血腫の治療

治療の目的は、できるだけ早く適切に内容を除去して線維化と収縮によって二次的に起こる耳介の変形を防ぐこと、そして再発を予防することです。

また前述の通り、頭を激しく振ったり、耳をパタパタさせるとは耳血腫の悪化につながるので、不快感を軽減し、頭を振ったり擦り付けたりする動作を抑える目的で、グルココルチコイド(ステロイド)を投与することがあります。

耳血腫の内容を除去する方法には複数の方法があり、血腫の大きさ、経過日数、犬の性格、飼い主の希望によって選択します。

注射針・翼状針を使用する方法

長所は、一般的には鎮静なしで実施できることですが、短所は吸引を繰り返し実施しなければならないこと、再発が多いこと、慢性化した場合には効果がないことです。

血腫の内容を除去した後に、グルココルチコイド(ステロイド)を注入することもあります。

皮膚生検用のパンチを用いる方法

皮膚生検用のパンチを用いて5~6mm程度の穴を空けて、持続的に排液をさせる方法です。上記の注射針・翼状針を使用する方法と比較すると内容物を十分に排出できるメリットがあります。普通は、1週間程度で傷がふさがるので、血腫が大きい場合には十分な治癒に至る前に閉鎖してしまい血腫が再発することがあります。

▲皮膚生検用の6mmパンチ

ドレーン・カニューレを設置する方法

ペンローズドレーンや牛の乳頭用カニューレと呼ばれる器具を設置することにより、持続的に排液させる方法です。ペンローズドレーンとは、手術後に滲出してくる分泌物や血液等を排出する際に使用する器具です。

例えばペンローズドレーンの設置は、血腫の両端に切開を行い、血腫内から液体とフィブリンを除去し、内腔にドレーンを誘導します。ドレーンの両端が皮膚から出ている状態になります。

▲ペンローズドレーン(富士システムズ株式会社HPより)

外科的に切開、排液し縫合する方法

ゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなどの大型犬の耳介にできた広範囲の耳血腫では、治療成績が最も良い治療法とされています。

切開を行い、内容物を除去し、内部を十分に洗浄し、液体が貯留しないように縫合を行います。

切開位置が不適切あるいは太い血管(耳介動脈)を縫合してしまうことによって、耳介の壊死が起こることがあるので注意が必要です。

予後

適切に治療され、同時に基礎疾患が治療されれば、ほとんど再発することなく予後は良好です。治療が不適切であれば、治癒後に耳が肥厚・硬化し変形することがあります。

また、基礎疾患が適切に治療されなければ再発あるいは逆の耳に耳血腫が発生することがあります。

まとめ

犬の耳血腫について解説しました。耳血腫は命に関わる病気では無いものの、治療がうまくいかないと耳が肥厚・硬化し変形してしまい美容上の問題を生じます。

全身麻酔が可能であれば、早期に手術を行うことで良好な治療成績が期待できるかもしれないので、獣医さんとよく相談してみましょう。

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