動物病院で血液検査を行った際に、その結果を理解するための手助けとなるように記事を作成しました。愛犬の血液検査の結果を片手にご覧ください。
ただし、以下の点にご注意ください。
- 正常値は、機械や検査会社ごとによって異なりますので、血液検査に記載されているデータを参照してください。
- 検査結果が基準値(正常値)を外れている場合でも、病気とは限らないので、担当の獣医さんに良く話を聞くようにしましょう。
肝酵素とは
AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、GGT(γ-GTP)といった酵素は、特に肝臓の細胞に多く含まれることから肝酵素と呼ばれています。これらの肝酵素は、肝疾患で上昇がみられます。
犬の肝酵素の上昇と肝臓の疾患の重症度は比例しないと言われています。そのため肝酵素と同時に、アルブミンの低下や血液尿素窒素(BUN)の低下、そしてアンモニアの増加なども併せて測定し、肝臓の機能を評価する必要があります。
AST(GOT)とは
ASTはアスパラギン酸アミノ基転移酵素の略称であり、以前はGOTと呼ばれていました。ASTは、細胞が壊れた際に血液中に漏れ出る逸脱酵素です。
ASTとALTは共にアミノ酸を作り出す酵素ですが、ALTのほとんどは肝臓に存在する酵素ですが、ASTは肝臓以外にも骨格筋、心筋そして赤血球にも含まれている酵素です。
従って、肝臓に異常があった場合には、ほとんどの場合ASTとALT両方の数値が上昇します。そして、ASTだけが上昇し、ALTが正常な場合には、骨格筋、心筋そして赤血球などの異常を考える判断材料となります。
検査会社 | 基準値 |
---|---|
富士フィルムモノリス | 18~65 IU/l |
アイデックス(成犬) | 0〜50 IU/l |
AST(GOT)高値の原因
AST(GOT)高値の原因として、肝細胞の破壊の他に、骨格筋の障害や心筋の障害そして溶血性疾患が原因として考えられます。
AST(GOT)低値の原因
臨床的な意義なし
ALT(GPT)とは
ALTはアラニンアミノ基転移酵素の略称であり、以前はGPTと呼ばれていました。ALTは、細胞が壊れた際に血液中に漏れ出る逸脱酵素です。
ALTとASTは共にアミノ酸を作り出す酵素ですが、ASTは肝臓以外にも骨格筋、心筋そして赤血球にも含まれているのに対し、ALTはほとんど肝臓に存在する酵素なので、肝細胞障害検出の特異度が高いです。
検査会社 | 基準値 |
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富士フィルムモノリス | 20~99 IU/l |
アイデックス(成犬) | 10〜125 IU/l |
ALT(GPT)高値の原因
ALT(GPT)高値の原因は、AST(GOT)と比較して他臓器への分布量が少ないため、肝細胞の破壊を起こす肝疾患に特異的であるといわれています。
ALT(GPT)低値の原因
臨床的意義なし
ALPとは
ALPはアルカリフォスファターゼの略称で、誘導因子により産生される誘導酵素です。ALPは、生体の細胞膜に広く分布していますが、特に肝臓や胆道系に多く含まれているので、肝胆道系疾患で上昇します。
また骨代謝にも関与しているため、骨疾患でも上昇する他、子犬では骨の新生が盛んなためALPが成犬の2~3倍の高値を示すことがあります。
さらに、グルココルチコイド(ステロイド)に誘発されてALPの産生が増加することも知られています。
検査会社 | 基準値 |
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富士フィルムモノリス | 49~298 IU/l |
アイデックス(成犬) | 23〜212 IU/l |
ALP高値の原因
ALP高値の原因は、肝胆道系疾患と骨由来、そしてグルココルチコイド(ステロイド)誘発性などのその他の原因に分類されます。
ALP低値の原因
臨床的意義なし
まとめ
犬の肝酵素(AST,ALT,ALP)の異常について解説しました。
検査結果が正常値を外れている場合でも、必ずしも病気とは限りません。病気は、血液検査のみならず身体検査や他の検査も行って診断していきます。状況により、経過観察を行ったりさらに詳しい検査を行うことがあります。
犬の肝酵素(AST,ALT,ALP)の異常上昇に関わる追加検査として、レントゲン検査、超音波検査、そして肝細胞機能異常を検出する血清総胆汁酸の測定が考えられます。
血液検査の結果で心配な事がある時には、動物病院で獣医さんに遠慮なく質問してみましょう。