フィラリア症の予防について丁寧に解説

フィラリアの予防薬を飲ませる期間をご存知でしょうか?そして、春に採血をしてからフィラリアの予防薬をもらう理由をご存知でしょうか?犬の飼い主なら、確実に知らないといけない、フィラリア症の予防について丁寧に解説します。

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フィラリア症とは

犬を飼い始めてやらなければならないことの一つに、フィラリアの駆虫薬の投与があります。昔は、多くの犬がこの病気で命を落としていたのですが、現在は駆虫薬が開発され、病気は減少傾向にあります。特に都市部では、稀な病気となりつつあります。しかし、病気になると致死率が高いことと、みんなが予防しているおかげで病気が減少していることを考えるとフィラリアの予防は必須です。

フィリリア症とは、蚊を媒介して犬の心臓や肺動脈に寄生する寄生虫が引き起こす病気です。フィラリア症は、最終的に心臓に寄生するので犬は心臓が悪くなり、お腹の中に水が貯まりぱんぱんに張ってきて、最終的には血を吐いて死亡する非常に恐ろしい病気です。

フィラリアという寄生虫は、感染犬の血液中では幼虫として存在していますが、蚊に吸血され新しい犬へ感染すると、その犬の体内で成長し、心臓や肺動脈内で成虫となります。そしてそこで、雌雄が存在すると雌がフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を大量に血液中に放出するのです。

▲フィラリア症感染のイメージ
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フィラリア症の予防方法

前述のとおりフィラリア症は、フィラリアに感染している犬の血を吸った蚊が、他の犬に感染を拡大させる、蚊を媒介とする犬の感染症です。

ここでフィラリア症を予防する方法が理論上3つあります。1つ目は、感染源となるフィラリア感染犬のフィラリア成虫を駆虫する方法、2つ目は、それを媒介する蚊を殺滅する方法、3つ目は、感染したフィアリアの幼虫を駆虫する方法です。

1つ目の方法ですが、前提としてフィラリアの成虫は幼虫に比べて、駆虫が困難です。フィラリアの成虫駆除の方法として、外科的に摘出する方法や、内科的に駆虫する方法がありますが、外科的摘出は少なくとも全身麻酔が必要であること、内科的駆虫も副作用が懸念されることから、第一選択としては考えづらいです。結論となってしまいますが、この方法を選択するのであれば、まず成虫にさせない方法を検討すべきです。

2つ目の方法ですが、ご想像の通り全ての蚊を殺滅することは不可能です。ただし、米国犬糸状虫学会(American Heartworm Society : AHS)では犬が蚊に接触する機会を減らすことを推奨しています。具体的には、殺虫剤の噴霧蚊取り器の設置水溜りをなくす等の環境中の蚊や蚊の繁殖地に対する対策をとること、可能であれば蚊が活発に活動する時間帯に犬を野外に出さないようにすることが挙げられます。

3つ目の方法ですが、これが我々が通常行っている「フィラリア予防」です。フィラリアの予防薬と言われますが、その性質は「駆虫薬」です。フィラリアの幼虫が犬の体内で成虫になるまでの期間はおよそ1〜2ヵ月であるとされています。つまり、万が一蚊に刺されて体にフィラリアが侵入してきていても、月に一度駆虫薬を飲ませてれば成虫になることなく殺滅することが可能なのです。また、よくある誤解なのですが、フィラリアの駆虫薬は飲ませた時にしか効果がなく、1ヶ月間効果が持続する訳ではないのです。イメージとしては、1ヶ月分のフィラリアの幼虫を薬をもなせることでリセットすると思ってください。

ちなみにノミやダニの予防薬は、塗布または飲ませた後に1ヶ月間(商品によっては3ヶ月間)有効ですので、文字通り予防薬となっています。

フィラリア症の予防期間

フィラリアの予防薬の性質は「駆虫薬」です。そしてそのイメージは、1ヶ月分のフィラリアの幼虫をリセットする効果です。

そのためフィラリアの「蚊をみた翌月から、蚊を見なくなった翌月まで」が原則となります。関東地方では概ね5〜12月がフィラリアの予防シーズンです。気温が低く蚊の存在期間が短い地域ではより短く、気温が高く蚊の存在期間が長い地域ではより長くなります。

またもう一つの原則として「飲み始めより、飲み終わりが大切」と言われています。これは駆虫薬はリセットの効果であることを思い出していただけるといいと思いますが、夏が終わって予防を止めた後に感染があった場合には、そのフィラリアの幼虫は次の春になる頃には、成虫になってしまい、手遅れとなってしまうからです。

なお、米国犬糸状虫学会(American Heartworm Society : AHS)では、コンプライアンス向上を目的に通年(年12回)の投与を推奨しています。

フィラリア症の予防薬の種類

フィラリアの予防薬として、①錠剤タイプ、②スポット(滴下)タイプ、③チュアブルタイプ(おやつタイプ)、④オールインワンタイプ、⑤注射タイプがあります。

どのタイプを選ぶかは、飼い主の判断で問題ないです。全ての予防方法がある病院もあれば、いくつかしか選択肢がない場合もあります。近年は、オールインワンタイプが主流となっています。

1. 錠剤タイプ

お薬が苦手な子でなければ価格が安いというメリットがあります。また、チュアブルタイプに比べて小さいので、チュアブルを食べない子の場合には、飼い主がお口に入れやすいというメリットがあります。

▲錠剤タイプの予防薬の例(ゾエティス・ジャパンHPより引用

2. スポット(滴下)タイプ

滴下のみで済むのがメリットですが、滴下前後にシャンプーに制限があります。食べるタイプや注射に比べて、効果の確実性に不安があると考える獣医師もいます。

▲スポット(滴下)タイプの予防薬の例(ゾエティス・ジャパンHPより引用

3. チュアブルタイプ

食べてくれれば投薬の苦労が無いですが、食べない場合には苦労します。次のオールインワンタイプに比べると、別途ノミ・ダニ予防を行う必要があります。

▲チュアブルタイプの予防薬の例(日本全薬工業HPより引用

4. オールインワンタイプ

これ一個でフィラリアに加え、ノミ・ダニも予防できますが、値段が高いです。食べた直後に吐いてしまった場合にお財布へのダメージがでかいです。

▲オールインワンタイプの例(日本全薬工業HPより引用

5. 注射タイプ

年に一度の注射で済むので飲み忘れが無いのがメリットですが、注射での副作用や取り扱っている病院が少ないといったデメリットがあります。

▲注射タイプの例(ゾエティス・ジャパンHPより引用

年に一度のフィラリアの採血

フィラリアの駆虫薬の投与の前には血液検査が必要です。通常は4〜6月からフィラリア予防のシーズンなので、その時期に採血をしてフィラリア症にかかっていないことを確認します。これは、①フィラリアが寄生していて血液中にミクロフィラリアという幼虫がいる場合には駆虫薬でアレルギー反応を起す可能性、②心臓に寄生している成虫のフィラリアが、駆虫薬により大量に死ぬと血管に詰まり犬が死ぬ可能性があるためです。

一般には、キットを用いた抗原検査のみを実施することが多いです。他には、血液中のフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を検出する方法があります。米国犬糸状虫学会(American Heartworm Society : AHS)では7ヵ月以上の全ての犬で年一回の抗原検査とミクロフィラリア検査を行うことを推奨しています。その理由として抗原検査では、一部のフィラリア症で偽陰性の結果が出る可能性を指摘しています。

まれに採血を実施せずに例外的に、フィラリアの予防薬を販売するケースがあります。例えば、①年間を通して確実に予防(特に注射での予防)しているので、フィラリア症に感染している可能性が限りなくゼロ、②犬が暴れて採血が困難といった理由があります。

まとめ

フィラリア症の予防について解説しました。フィラリア症の予防薬は「蚊をみた翌月から、蚊を見なくなった翌月まで」で、地域の気温によりますが概ね5〜12月までです。地域によって予防期間に差がありますので、獣医さんに聞いてみましょう。そして、お薬をもらう前には万が一をなくすために、必ず採血をしてフィラリア症にかかっていないことを確認しましょう。

フィラリア症の予防は飼い主の義務です。忘れずにきっちりと行いましょう。