動物病院で血液検査を行った際に、その結果を理解するための手助けとなるように記事を作成しました。愛犬の血液検査の結果を片手にご覧ください。
ただし、以下の点にご注意ください。
- 正常値は、機械や検査会社ごとによって異なりますので、血液検査に記載されているデータを参照してください。
- 検査結果が基準値(正常値)を外れている場合でも、病気とは限らないので、担当の獣医さんに良く話を聞くようにしましょう。
アルブミン(Alb)とは
アルブミンとは、肝臓で合成される蛋白で、血液の浸透圧の調節や脂肪酸、ビリルビン、無機イオンなどの物質の保持や運搬を行なっています。
アルブミンは脱水以外の理由で病的に増加することは無いとされるため、基本的にはアルブミンの低下のみが問題となります。血清中のアルブミン濃度が、正常値より低下することを低アルブミン血症といいます。
低アルブミン血症では、血液の浸透圧が維持できないため、血液中の液体成分が血管の外に出てしまい、浮腫、腹水、胸水といった症状を呈します。犬の場合には、血清アルブミンが1.5 g/dl以下になると、これらの症状があらわれ始めます。
低アルブミン血症は、肝臓でのアルブミンの合成能低下、尿などへのアルブミンの喪失、そして飢餓などの栄養失調によるアルブミン原料の不足などが原因となります。
検査会社 | 基準値 |
---|---|
富士フィルムモノリス | 2.5~3.8 g/dl |
アイデックス(成犬) | 2.3~4.0 g/dl |
アルブミン(Alb)高値の原因
アルブミン(Alb)は、病的に増加することがないとされています。そのためアルブミンの高値では、液体成分の減少による相対的な増加を考えていきます。
アルブミン(Alb)低値の原因
低アルブミン血症は、肝臓でのアルブミンの合成能低下、尿などへのアルブミンの喪失、そして飢餓などの栄養失調によるアルブミン原料の不足などが原因となります。また、輸液などで血液が希釈されるとアルブミンは低値を示します。
A/G比を用いた低アルブミン血症の詳細な評価
低アルブミン血症状では、総蛋白(TP)、グロブリン(Glb)そしてA/G比を同時に測定することで、より詳細な評価が可能になります。
A/G比(アルブミン/グロブリン比)とは、血液中に含まれる蛋白である、アルブミンとグロブリンの量の比率を示します。
A/G比の低下はアルブミンの減少またはグロブリンの増加によって起こり、アルブミンの低値は栄養状態が悪いことを、グロブリンの高値は炎症が長引いていることを示しています。
具体的にはアルブミンの低値によるA/G比の低下は、肝不全、腎臓からの漏出(ネフローゼ症候群など)、栄養の吸収不良や消化不良、飢餓による栄養失調が考えられます。なお、グルブリン高値によるA/G比の低下は、抗原刺激、慢性炎症、多発性骨髄腫(マクログロブリン血症)、リンパ腫などの腫瘍が考えられます。
A/G比の低下を伴わない場合は、出血による喪失、広範囲の皮膚の浸出性病変、腸からの漏出(腸リンパ管拡張症など)、腹水や胸水の貯留、過剰輸液が考えられます。
富士フィルムモノリス | 0.7~1.9 |
アイデックス(成犬) | 記載なし |
まとめ
犬のアルブミン(Alb)の異常である、低アルブミン血症について解説しました。
検査結果が基準値を外れている場合でも、必ずしも病気とは限りません。病気は、血液検査のみならず身体検査や他の検査も行って診断していきます。状況により、経過観察を行ったりさらに詳しい検査を行うことがあります。
低アルブミン血症状では、総蛋白(TP)、グロブリン(Glb)そしてA/G比を同時に測定することで、より詳細な評価を実施するようにしましょう。
そして追加検査として、レントゲン検査、超音波検査そして尿検査(タンパク尿)などを行い、さらに原因を追求していきます。
血液検査の結果で心配な事がある時には、動物病院で獣医さんに遠慮なく質問してみましょう。