犬のアルブミン(Alb)を獣医師がわかりやすく解説

動物病院で血液検査を受けた際に、検査結果をより深く理解するためのサポートとしてこの記事を作成しました。
愛犬の血液検査結果をお手元に置きながら、ぜひご覧ください。

※注意事項
・正常値は使用する検査機器や検査会社によって異なります。必ず検査結果用紙に記載された基準値を参照してください。
・検査結果が基準値を外れていても、必ずしも病気を意味するわけではありません。必ず担当獣医師の説明を受けましょう。

目次

アルブミン(Alb)とは

アルブミンは肝臓で合成される血中の主要な蛋白質で、血液の浸透圧を調整する役割や、脂肪酸・ビリルビン・ホルモン・無機イオンなど多くの物質を運ぶ働きを担っています。

基本的にアルブミンは脱水時以外には病的に高値を示すことはほとんどなく、異常が問題になるのは主に低下した場合です。この低下状態を低アルブミン血症と呼びます。

低アルブミン血症が進行すると、血管内の浸透圧が保てなくなり、血液中の水分が血管外へ漏れ出します。その結果、浮腫(むくみ)腹水胸水などの症状が現れるようになります。犬では、血清アルブミンが1.5g/dl以下になると、これらの臨床症状が出始めることが知られています。

検査会社基準値
富士フィルムモノリス2.5~3.8 g/dl
アイデックス(成犬)2.3~4.0 g/dl
▲各検査会社におけるアルブミン(Alb)の基準値

アルブミン(Alb)高値の原因

犬のアルブミン高値は基本的に脱水などによる血液中の水分減少による相対的な増加のみが問題となります。すなわち、病的な意味を持つことはほとんどありません。

アルブミン(Alb)高値の原因
脱水による相対的増加

アルブミン(Alb)低値の原因

アルブミンが低下する低アルブミン血症は、いくつかの代表的な原因により生じます。主に以下の3つが基本的な原因として挙げられます。

  • 肝臓の機能低下による合成不良
  • 腎臓や消化管などからの異常な喪失
  • 栄養不足や吸収不良による原料不足

これらの基本的な原因に該当する、より具体的な病態や状況は次のとおりです。

低アルブミン血症の原因
肝不全
腎臓からの漏出(ネフローゼ症候群など)
栄養の吸収不良や消化不良
飢餓による栄養失調
出血による喪失
広範囲の皮膚の浸出性病変
腸からの漏出(腸リンパ管拡張症など)
腹水や胸水の貯留
過剰輸液

A/G比を用いた低アルブミン血症の詳細な評価

低アルブミン血症の際には、総蛋白(TP)グロブリン(Glb)A/G比(アルブミン/グロブリン比)も同時に確認することで、より詳細な病態の評価が可能です。

A/G比が低下している場合には、以下の原因が考えられます。

A/G比低下+低アルブミン血症の原因

  • 肝不全
  • 腎疾患(ネフローゼ症候群など)
  • 栄養不良や吸収不良
  • 慢性的な栄養失調

一方、A/G比が低下していない場合は、以下のような他の病態が関与している可能性があります。

A/G比低下なし+低アルブミン血症の原因

  • 出血
  • 広範囲の皮膚病変
  • 腸からの喪失(腸リンパ管拡張症など)
  • 腹水や胸水の貯留
  • 希釈(過剰輸液)
富士フィルムモノリス0.7~1.9
アイデックス(成犬)記載なし
▲各検査会社におけるアルブミンA/G比の基準値

まとめ

犬のアルブミン異常、とりわけ低アルブミン血症は、全身の浮腫や腹水・胸水など重篤な症状を引き起こすこともある重要な異常です。

検査値が基準値を外れている場合でも、必ずしも深刻な病気であるとは限りませんが、血液検査のみで判断せず、身体検査画像検査(レントゲン・超音波)尿検査など、包括的な評価が必要です。

A/G比を含めた蛋白のバランスを総合的にみることで、より正確に原因を探ることができます。

気になる検査結果が出た場合には、自己判断せず、必ずかかりつけの獣医師に相談し、必要に応じた追加検査や適切な治療を受けましょう。愛犬の健康を守るために、飼い主として正しい知識を持つことが大切です。

当サイト「わんらぶ大学」では、獣医師監修のもと、犬と猫の健康や暮らしに役立つ情報をわかりやすくお届けしています。

※医療に関する最終的な判断は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

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