犬の炎症性腸疾患(IBD)

愛犬に慢性の嘔吐や下痢に続き、食欲不振や体重減少もみられた場合には、どんな病気があるのでしょうか?

3週間を超えても続く下痢を慢性下痢と呼びますが、その原因となる炎症性腸疾患について解説していきます。

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炎症性腸疾患とは

炎症性腸疾患とは、胃や小腸そして大腸などの消化管に炎症を起こす慢性疾患の総称です。炎症は消化管の粘膜や粘膜下組織で起こっており、リンパ球、形質細胞、好酸球、好中球、組織球などの炎症細胞がみられます。中でも、リンパ球やプラズマ細胞がみられる頻度が犬では多く、この場合には「リンパ球プラズマ細胞性腸炎」という病名になります。

炎症性腸疾患
胃や小腸そして大腸などの消化管に炎症を起こす慢性疾患の総称

原因

炎症性腸疾患の明らかな原因は特定されていないですが、遺伝的な要素に加え、食事や腸内細菌、そして消化管粘膜や免疫システムの異常などが考えられています。

特定の犬種で特定の炎症性腸疾患が発生する傾向が知られており、例えばジャーマンシェパードやソフトコーテッド・ウィートン・テリアの「リンパ球形質細胞性腸炎」、バセンジーの炎症性腸疾患の重症タイプである「免疫増殖性腸症」、そしてボクサーの「組織球性大腸炎」などがあります。

炎症性腸疾患の症状

症状は、慢性の消化器症状として嘔吐、下痢、食欲不振、そして体重減少などが一般的です。全ての年齢で発症する可能性がありますが、特に2歳〜6歳での発症が多いようです。また、性別による発症率の違いは報告されていないようです。

炎症性腸疾患の診断

炎症性腸疾患と診断するには、①嘔吐、下痢などの慢性消化器症状を認める、②内視鏡検査により消化管での炎症が認められる、③慢性の消化器症状を引き起こす他の病気が除外できている、④食事療法、対症療法、抗菌薬療法では症状の改善が乏しい、⑤消炎剤や免疫抑制剤により改善反応が明らか、ということに当てはまるかどうかがポイントとなります。

診断のポイント
①慢性消化器症状、②内視鏡検査、③他の病気の除外、④食事療法、対症療法、抗菌薬療法で改善しない、⑤消炎剤や免疫抑制剤により改善

検査としては、超音波検査で消化管に特徴的な変化(消化管壁の肥厚など)が認められることがあります。また、内視鏡検査でみられる消化管の炎症の所見は、炎症性腸疾患を示唆するものですが、他の病気でも同様の所見がみられるので、それのみで診断することはできません。

炎症性腸疾患は、診断的治療として低アレルギー食を与えることにより、食物アレルギー食物不耐性の可能性を除外し、抗菌薬投与により抗菌薬反応性腸症を除外します。そして、これらの治療に対して反応が乏く、抗炎症薬や免疫抑制薬が効果的であれば炎症性腸疾患と診断していきます。

似たような症状を起こす病気として、感染や腫瘍による消化管の炎症、膵臓、甲状腺、副腎、肝胆道系の病気があります。

炎症性腸疾患の治療

治療の目標は、腸の炎症を減少させることによる下痢や嘔吐の軽減、そして食欲と体重を改善させることです。また、食事療法単独で改善が認められない場合でもお薬を併用することで、その有効性が高まる可能性が示されています。

食事療法

新奇蛋白食、加水分解蛋白質またはアミノ酸食などの低アレルギー食が一般に用いられます。また、脂肪含有量が制限され消化の良い自家調理食を試すのも一つの方法です。

おやつなどの療法食以外を与えないように、徹底することが重要です。

抗菌薬

炎症性腸疾患では、種々の抗原に対して免疫反応が過剰となっていますが、その抗原の中には腸内細菌も含まれます。そのため、腸内細菌の関連する腸粘膜の障害を軽減する目的で、食事療法の後あるいは併用して抗菌薬試験を3~4週間行います。これにより、抗菌薬反応性腸症の診断的治療にもなります。

グルココルチコイド(ステロイド)

食事療法や抗菌薬療法に対して反応が乏しい、あるいは治療初期から中程度〜重度の炎症や低蛋白血症が認められる炎症性腸疾患では、グルココルチコイド(ステロイド)が用いられます。

免疫抑制剤

グルココルチコイド(ステロイド)の反応が不十分、あるいはその副作用により継続投与が困難である場合には、免疫抑制剤への切り替えや併用を検討します。

その他の治療

乳酸菌製剤のような善玉菌を腸内に入たり、フラクトオリゴ糖などの腸内の善玉菌を活発にさせる物質の投与についての有用性が報告されています。

善玉菌を腸内に入れることを「プロ・バイオティクス」、腸内にすでに定着している善玉菌にエサを与え、善玉菌を活発にさせることを「プレ・バイオティクス」、その両方を併せて行う「シンバイオティクス」と呼びます。

また、n-6脂肪酸とn-3脂肪酸びバランスを調整したサプリメントなどの有用性も報告されています。

まとめ

犬の炎症性腸疾患について解説しました。この病気は、検査で確定するのでは無く、臨床症状や治療への反応などを総合的に判断して診断していきます。

治療は様々な方法を組み合わせて行うことが多いので、愛犬にあった治療法を獣医さんと一緒に探すとよいでしょう。

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