犬のホルネル症候群

ホルネル(ホルナー)症候群は、1869年にスイスの眼科医ヨハン・フリードリヒ・ホルネルによって記載されており、交感神経遠心路の障害によって生じる、中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)を三大徴候(Horner’s triad)とする症候群で、眼の徴候以外では、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とします。

人と同様に三大徴候を示す、犬のホルネル症候群について解説します。

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犬のホルネル症候群とは

ホルネル症候群とは、眼球とその周囲の交感神経が麻痺することによって引き起こされる病気で、眼瞼下垂、眼球陥凹、第三眼瞼の突出、縮瞳といった一連の症状を示します。眼瞼下垂は、まぶたを開けようとしても開かない状態、眼球陥凹は眼球が眼窩内に異常に陥没している状態、第三眼瞼(瞬膜)の突出は第三眼瞼(瞬膜)が露出する状態、縮瞳は瞳孔が過度に縮小する現象です。

犬の場合、4~13歳、雄のゴールデンレトリーバーに多く認められるという報告がありますが、ホルネル症候群の50~90%は原因不明(特発性)です。

犬のホルネル症候群
眼球とその周囲の交感神経が麻痺することによって引き起こされる病気

原因

原因として、視床下部から頸部交感神経と眼球にまで至る同神経系に異常をもたらす炎症、感染、外傷、椎間板疾患、線維軟骨塞栓症、腕神経叢障害、腫瘍、中耳炎・内耳炎、鼻咽頭ポリープ、球後疾患などが挙げられます。

交感神経系の神経経路は以下の通りで、この神経路の何が障害されていもホルネル症候群が引き起こされます。

視床下部→脳幹→脊髄→T1~T3脊髄分節とその神経根→迷走交感神経管→交感神経節前線維→交感神経の前頸部神経節→交感神経節後線維→中耳→第5脳神経の眼枝→長毛様体神経→瞳孔散大筋、眼窩骨膜・上眼瞼・第三眼瞼の平滑筋、皮下の血管収縮筋

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ホルネル症候群の症状

ホルネル症候群は通常、片側性で、軽度の結膜充血、上眼瞼下垂(眼瞼裂の狭小化)、眼球陥凹、第三眼瞼の突出、縮瞳などの臨床症状がみられます。また、症状が出ている方の耳の皮膚の温度が上昇したり、発汗がみられることもあるそうです。

眼瞼下垂は、まぶたを開けようとしても開かない状態で、眼球陥凹は眼球が眼窩内に異常に陥没している状態、第三眼瞼(瞬膜)の突出は第三眼瞼(瞬膜)が露出する状態、縮瞳は瞳孔が過度に縮小する現象です。

症状のポイント
上眼瞼下垂(眼瞼裂の狭小化)、眼球陥凹、第三眼瞼の突出、縮瞳

ホルネル症候群の診断

一般的な眼科検査を実施して、前部ぶどう膜炎などの眼科疾患と鑑別します。ホルネル症候群は暗室中で瞳孔不同が顕著で、かつ両眼とも対光反射が正常に観察されます。血液検査、レントゲン検査、超音波検査、脊髄造影検査、CT/MRI検査、脳脊髄液検査を行い、ホルネル症候群の原因となりうる病気を調べます。

薬理学的試験によって障害部位を推定することは可能で、5%フェニレフリン液(商品名:ネオシネジンコーワ5%点眼液)を両眼に点眼し、15~20分程度で正常眼よりも早く散瞳すれば節後性障害を、散瞳しなければ中枢性もしくは節前性障害を示唆します。なお、節前性障害であっても、フェニレフリン点眼後、40分以上すれば散瞳することに注意が必要です。この場合、点眼後約40分程度で散瞳すれば節前性障害を、60~90分で散瞳してくれば中枢性障害もしくは正常な交感神経支配眼が示唆されます。

診断のポイント
眼科検査の後、ホルネル症候群を引き起こす疾患の特定を行う

ホルネル症候群の治療

原因疾患が特定できれば、その治療を行います。特発性のホルネル症候群では、臨床症状の緩和もしくは改善するため、5%フェニレフリンを1日2~4回点眼します。

治療のポイント
原因疾患があればその治療、緩和もしくは改善として5%フェニレフリン点眼

予後

予後は、原因疾患とその重症度や治療に対する反応性によって異なります。特発性のホルネル症候群では、回復に4ヶ月程度必要とするとされています。

まとめ

犬のホルネル症候群について解説しました。この病気の特徴的な症状として、上眼瞼下垂(眼瞼裂の狭小化)、眼球陥凹、第三眼瞼の突出、縮瞳があります。

特発性の場合には、4ヶ月程度回復までに必要とされます。