犬のぶどう膜炎

あまり聞き馴染みが無いと思われる「ぶどう膜」という言葉。ぶどう膜は、人の眼の茶目の部分から奥に広がる部位で、この組織は血管やメラニン色素が豊富で、眼球の外側を包む強膜を除くと、形も色もぶどうの房に似ていることから「ぶどう膜」と呼ばれています。

眼内の炎症であり失明に至ることもある、犬のぶどう膜炎について解説します。

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犬のぶどう膜炎とは

ぶどう膜とは色素と血管に富む眼球壁の中層で、前部の虹彩・毛様体、後部の脈絡膜の3つを合わせた総称です。ぶどう膜には、瞳孔経由以外の光を遮断する働きがあります。

ぶどう膜炎とは、このぶどう膜に炎症が起こる病気です。ぶどう膜だけではなく、脈絡膜に隣接する網膜や、眼の外側の壁となっている強膜に生じる炎症も含まれます。

虹彩、毛様体に炎症があるものを前部ぶどう膜炎、脈絡膜側に炎症があるものを後部ぶどう膜炎と呼びます。脈絡膜に炎症があると、多くの場合に網膜にも炎症が波及し、脈絡網膜炎となります。ぶどう膜全体に炎症が生じるものを汎ぶどう膜炎と呼び、硝子体に炎症がみられるものを中間部ぶどう膜炎と呼びます。

犬のぶどう膜炎
ぶどう膜に炎症が起こる病気で、50%は原因不明とされている

原因

原因は内因性と外因性(外傷性)に分けられます。

内因性のものは自己免疫が原因となり生じるもので、眼球局所の場合と、全身性疾患に関連して生じる場合があります。

局所性のものでは、白内障、フォークト・小柳・原田症候群様疾患(ぶどう膜・皮膚症候群)、眼球腫瘍などが挙げられます。白内障による水晶体蛋白の液化と漏出によるぶどう膜炎を、水晶体起因性ぶどう膜炎と呼びます。

全身性のものでは、アデノウイルスⅠ型感染症、ジステンパーウイルス感染症、子宮蓄膿症、ブスセラ感染症、高脂血症などが挙げられます。

外因性(外傷性)によるものとして、重度な角膜潰瘍により三叉神経を介した反射性の前部ぶどう膜炎が、水晶体嚢の破嚢を伴う外傷性ぶどう膜炎では、受傷後1ヶ月程度で化膿性の炎症が、また白内障手術後に術後眼内炎と呼ばれる炎症が起き、感染による場合や感染によらない場合(中毒性前眼部症候群)があります。

犬のぶどう膜炎は、多くの検査を行っても、約50%で原因が不明であるとされています。

ぶどう膜炎の症状

人のぶどう膜炎では、程度や部位によってさまざまですが、かすむ、まぶしく感じるなどが多く、眼が赤くなる、目が痛い、ものがゆがんで見える、虫が飛んでいるように見える飛蚊症などの症状がみられるとされています。

犬の前部ぶどう膜炎の症状として、結膜の充血、まぶたの痙攣(眼瞼痙攣)、光を過度にまぶしく感じてしまう(羞明)、涙が流れ続ける(流涙)、瞬膜が露出する(瞬膜突出)、縮瞳、低眼圧、眼の痛みなどがみられます。しかしこれらの症状は、角膜潰瘍などでもみられます。

前部ぶどう膜炎に特徴的な症状として、前房フレアという症状があります。これは、血液房水関門という部位がダメージを受けることにより、前房内に血漿蛋白が出現した状態で、前房が白く濁ってみえます。その他の特徴的な症状として、毛様充血、虹彩充血、虹彩ルベオーシス、前房蓄膿、前房出血などがあります。毛様充血とは、眼の充血は大きく結膜充血と毛様充血とに分類されますが、毛様充血は眼球結膜下の深部血管の充血のことです。虹彩ルベオーシスとは、虹彩表面上な新生血管のことです。前房蓄膿とは、前房に白い膿が溜まることで、前房出血とは、前房に血液が溜まることです。

中間部から後部ぶどう膜炎の特徴的な症状は、硝子体内の細胞浸潤、網膜血管周囲細胞浸潤、網膜浮腫と滲出液の貯留、網膜出血などがあります。

症状のポイント
前部ぶどう膜炎では前房フレア、後部ぶどう膜炎では硝子体内の細胞浸潤など

ぶどう膜炎の診断

眼科検査を行い、角膜や結膜に外傷がないか確認し、ぶどう膜炎に特徴的な症状がみられるかどうかを確認します。緑内障は、ぶどう膜炎の合併症としてみられることが多いですが、典型的にはぶどう膜炎では眼圧が10mmHg以下、緑内障では眼圧が30mmHg以上となります(正常眼圧範囲10~25mmHg)。

似た様な症状を示す病気として、緑内障、結膜炎、上胸膜炎/強膜炎、角膜炎、眼窩疾患などがあります。

全身性疾患からぶどう膜炎となることも多いので、明らかな原因がない時には、血液検査や尿検査などを行います。

診断のポイント
眼科検査とぶどう膜炎に特徴的な症状、そして眼圧検査

ぶどう膜炎の治療

炎症による視覚喪失を起こす前に炎症を軽減し、可能なら原因となっている病気を治療します。

一般的には前部ぶどう膜炎では、局所療法(点眼療法)が用いられ、後部ぶどう膜炎の効果的な治療には全身療法(内服)が必要とされています。

眼の炎症のコントロールとして、軽度のぶどう膜炎では非ステロイド性消炎鎮痛剤の点眼(商品名:ティアローズなど)を、中程度〜重度のぶどう膜炎では、ステロイドの点眼(商品名:ステロップなど)を行います。

疼痛管理や続発症の予防として、アトロピンの点眼を行い、眼圧が高い時には炭酸脱水素酵素阻害薬やβ受容体遮断薬の投与を行います。

治療のポイント
炎症を軽減し、可能なら原因となっている病気を治療

予後

ぶどう膜炎を起こした原因疾患にもよりますが、抗炎症薬にて炎症が抑制できれば、予後は比較的良いとされています。しかし、炎症のコントロールが不可能な場合には、緑内障や眼球萎縮となってしまいます。

まとめ

犬のぶどう膜炎について解説しました。ぶどう膜炎は、眼の中の炎症であり失明の危険性があることを認識する必要があります。

白内障に続発するぶどう膜炎では、成熟白内障から過熟白内障になる前に外科的処置を行うことで、ぶどう膜炎を予防することが可能です。

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