犬の色素性角膜炎を丁寧に解説

この記事では、犬の色素性角膜炎(しきそせいかくまくえん)について原因、症状、診断そして治療を、現役獣医師が解説しています。

対象読者
  • 動物病院で色素性角膜炎と診断されたor疑われている犬の飼い主
  • 角膜全体が黒く色素沈着している犬の飼い主
  • 犬の色素性角膜炎について知りたい獣医学生や動物看護師

最後まで読むだけで、色素性角膜炎について誰にでもすぐに理解できるように作成しているので、是非一度目を通していただけると嬉しいです。

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犬の色素性角膜炎とは

色素性角膜炎は、角膜に色素が沈着する病気です。病気の初期には、内眼角側から色素沈着が生じ、重度になると角膜全体に色素沈着が広がります。

色素沈着とは

色素細胞から過剰に分泌されたメラニン色素が、表皮や真皮に沈着して起こる黒ずみのこと

短頭種に好発しますが、特にパグに好発することが知られています。この病気は、性別により発症に差があり、避妊した雌での発症が少ないです。

さらに、毛色により重症度に差があり、黒色のほうが黄褐色の毛色よりも角膜の色素沈着の程度が軽度であるとされています。

なお、色素性角膜炎という病名について、角膜メラニン色素沈着症色素性角膜炎と呼ぶ事が提唱されています。その理由としては、乾性角結膜炎などによる角膜色素沈着との区別をする必要性があるためです。

▲犬の眼の解剖学的名称

原因

短頭種に好発しますが、特にパグに好発することが知られています。この病気は、性別により発症に差があり、避妊した雌での発症が少ないです。

そのため、病気の遺伝性と、重症化への性ホルモンの影響が示唆されます。

発生頻度

★★★☆☆ 時々みられる病気

発生頻度を5段階で評価。5:日常的にみられる病気 4:よくみられる病気 3:時々みられる病気 2:めったにみない病気 1:ほとんどみない病気

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色素性角膜炎の症状

色素性角膜炎では、病気の初期には、内眼角側から色素沈着が生じ、重度になると角膜全体に色素沈着が広がるのが特徴的です。

この病気では通常、血管新生を伴わないとされていますが、重症になると血管新生を伴う事があるとされています。血管新生とは、角膜は本来、血管がないため、慢性的な角膜の酸素不足により角膜周辺部から中央部に向かって血管が生まれ、酸素を供給しようとすることを指します。なお、初期の角膜血管新生の場合は、血管は徐々に消えますが、中度以上の場合は、完全に消えず、残ってしまう場合もあります。

また、涙液量は減少傾向にあることが多いとされていますが、症状との重症度との間に関連性は無いと考えられています。

色素性角膜炎の診断

色素性角膜炎の診断は、角膜の色素沈着を確認することです。

さらに、慢性表在性角膜炎や乾性角結膜炎を除外するために、スリットランプ(眼科用顕微鏡)やシルマーティアーテスト(涙の量を調べる検査)を行います。

典型的な色素性角膜炎では、乾性角結膜炎を伴わないとされています。

色素性角膜炎の治療

色素性角膜炎の治療は、存在しないとされています。根本的な治療はありませんが、グルココルチコイド(ステロイド)点眼やシクロスポリン点眼、角膜保護剤の点眼などが行われています。

もし、内眼角の涙丘からの被毛が角膜を刺激している場合には、涙丘切除ならびに内眼角形成手術を行います。

まとめ

犬の色素性角膜炎について解説しました。この病気は、内眼角側から色素沈着が生じ、重度になると角膜全体に色素沈着が広がるのが特徴で、短頭種の中でも特にパグに発症が多いとされています。

残念なことに、この病気の根本的な治療法は無いとされています。