愛犬にてんかん発作が起きて、もし「ヨークシャーテリアかチワワ、しかも体重2kg以下」という条件に当てはまった時には、注意が必要です。
症候性てんかんの原因の一つとなる、犬の壊死性白質脳炎について解説します。
壊死性白質脳炎とは
てんかんは、脳に器質的な異常が見つからないのに発作を繰り返す「特発性てんかん」と、脳の病気に伴なって発作が生じる「症候性てんかん」の2つに分類されます。
症候性てんかんは、脳の病気(脳内の腫瘍や炎症や奇形など)により引き起こされます。1歳未満と6歳以上に多く見られます。
犬の症候性てんかんの原因となる非感染性脳炎として、壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)、壊死性白質脳炎、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎があり、これらの特発性脳炎はいずれも自己免疫疾患と考えられています。
壊死性白質脳炎は、犬種がほぼヨークシャーテリアとチワワに限定され、しかも体重2kg以下の小さな個体で発生率が高いとされています。また、主に若齢から中齢に発生します。
ヨークシャーテリアとチワワ、しかも体重2kg以下での発生率が高い
原因
壊死性白質脳炎の原因は不明であり、壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)の類縁疾患であるのか、全く別の疾患であるのかもよく分かっていません。
壊死性白質脳炎の症状
壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)の主病巣が大脳皮質であるのに対し、壊死性白質脳炎では白質、特に深部白質や視床や脳幹などの深部灰白質に病巣を形成するのが特徴的です。
そのため、壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)ではてんかん発作はほぼ必発でしたが、壊死性白質脳炎では必ずしもてんかんが見られるとは限りません。
病変部位によって異なりますが、てんかん発作、姿勢の異常や四肢不全麻痺、運動失調、視覚障害、中枢性前庭症状(捻転斜頸など)などが認められます。
姿勢の異常や四肢不全麻痺が多く、てんかん発作は必発ではない
壊死性白質脳炎の診断と症状
診断
壊死性白質脳炎の診断は、壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)と同様に、主としてMRIと脳脊髄液検査に基づきます。確定診断は病理組織学的検査ですので、診断は犬種とMRI所見に頼るところが大きいです。
治療
壊死性白質脳炎を治す治療は存在しません。症状の進行を抑える治療として、プレドニゾロンを中心とした免疫抑制療法を行います。
また臨床症状にてんかん発作がある場合は、抗てんかん薬による治療も同時に行います。
プレドニゾロンを中心とした免疫抑制療法
予後
壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)よりも、病態の進行が遅く長期維持できる事が多いとされています。
まとめ
犬の壊死性白質脳炎について解説しました。ヨークシャーテリアとチワワ、しかも体重2kg以下での発生率が高いとされる病気です。
てんかん発作が起きてこの条件に当てはまるなら、MRI検査や脳脊髄液検査などを行う事が推奨されます。