犬の症候性てんかん

愛犬に、1歳未満か6歳以上でてんかん発作が見られた場合に、どんな病気を考えれば良いのでしょうか?

てんかん発作全体における占める割合がおよそ50%といわれている、犬の症候性てんかんについて解説していきます。

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症候性てんかんとは

てんかんとは、大脳の神経細胞の異常興奮によって引き起こされるけいれんの発作が、不定期に繰り返し起こる脳の慢性的な病気です。

てんかんは、脳に器質的な異常が見つからないのに発作を繰り返す「特発性てんかん」と、脳の病気に伴なって発作が生じる「症候性てんかん」の2つに分類されます。また、分類上は「てんかん」ではないですが、脳以外の病気がてんかん発作の原因となることがあり、「反応性てんかん(急性症候性発作)」と呼ばれます。

てんかんとは
大脳の神経細胞の異常興奮。「特発性てんかん」と「症候性てんかん」がある。

特発性てんかんは、脳に器質的な異常は見られないが発作を繰り返すもので、遺伝的な素因が原因と考えられています。1〜5歳に多く見られます。てんかんを抑える薬での治療になります。

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症候性てんかんは、脳の病気(脳内の腫瘍や炎症や奇形など)により引き起こされます。1歳未満と6歳以上に多く見られます。発作を引き起こす原因になっている病気を治療していきます。

反応性てんかんは、大脳皮質の機能が一過性に障害された際に起こる、脳の自然な反応であり、全身性の代謝性異常(低血糖など)や、電解質異常、内臓疾患(門脈体循環シャントなど)、あるいは中毒(エチレングリコールや殺虫剤など)などが原因となります。

症候性てんかんとは
脳の病気(脳内の腫瘍や炎症や奇形など)により引き起こされるてんかん発作

症候性てんかんの原因

症候性てんかんの原因となる疾患には、脳の奇形、脳の外傷、脳腫瘍、脳血管障害、脳炎など様々なものが含まれています。

脳の奇形水頭症、大脳皮質形成障害、くも膜嚢胞など
脳の外傷:交通事故など
脳腫瘍髄膜腫神経膠腫(グリオーマ)など
脳炎:感染性(例、犬ジステンパーウイルスなど)、非感染性( 例:壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)壊死性白質脳炎肉芽腫性脳脊髄炎など)
脳血管障害:脳出血、脳梗塞など
変性疾患:ライソゾーム病をはじめとした様々な先天性代謝性疾患(例:ラフォラ病、セロイドリポフスチン病 、gm 1ガングリオシドーシス)など
てんかん発作全体における症候性てんかんの占める割合は、犬猫共におよそ50%であるといわれています。

症候性てんかんの症状

てんかん発作は、 大脳の神経細胞の異常興奮を原因とするため、てんかん発作が見られたら病変部位は大脳、特に大脳皮質にあると考えられます。

脳の中のてんかん発作の始まりの領域を、てんかんの焦点と言いますが、症候性てんかんでは、病巣そのものにてんかん焦点がある場合と、焦点は病巣にはなく病巣の影響を受けて近くの正常な神経細胞が焦点へと変化してしまった場合とがあります。

後者の代表例は脳腫瘍による症候性てんかんで、腫瘍を完全に摘出しても焦点が残存する事があり、てんかん発作が残存することがあります。

症候性てんかんにおいて、初期症状がてんかん発作であれば、病巣が脳表面に位置する可能性が示唆されます。例えば、壊死性脳脊髄炎(パグ脳炎)や表層にできた脳腫瘍、大脳皮質形成異常などが当てはまります。

小脳や脳幹に病巣が限局している場合は、てんかん発作の原因とはなりません。しかし病気が進行し、炎症の波及または浮腫や脳ヘルニアが大脳に及ぶと、てんかん発作の原因となります。

症候性てんかんの診断と治療

診断

特発性てんかんの診断は、症候性てんかんを除外することによりなされるので、症候性てんかんの診断手順は特発性てんかんと同じです。

すなわち、まず症例の繰り返す発作がてんかん発作であるのかを判断し、次に反応性てんかんを除外して、そして特発性てんかんの可能性が高いかどうかを判断します。

特発性てんかんの可能性が低いと判断したら、症候性てんかんの診断検査(脳のMRIや脳脊髄液検査)の実施を積極的に考慮し、原因疾患を特定する必要があります。

診断のポイント
てんかん発作であることの確認、反応性てんかんの除外、特発性の可能性の判断

神経学的検査にて、特に大脳病変に起因する異常が検出されれば、症候性てんかんである可能性が高く、脳の精密検査( MRIや脳脊髄液検査)の実施が強く勧められます。しかし、症候性てんかんであっても、神経学的検査に全く異常がない場合は少なくないです。症候性てんかんの犬の23%で、神経学的検査に異常が検出されなかったとの報告があるそうです。

治療

特発性てんかんと診断されれば、治療は基本的に抗てんかん薬による発作のコントロールですが、症候性てんかんの場合には、抗てんかん薬による発作のコントロールと、原因疾患に対する治療を行うことになります。

治療のポイント
抗てんかん薬による発作のコントロールと、原因疾患に対する治療

特に脳炎や脳腫瘍などの進行性の脳疾患がてんかん発作の原因である場合、病気の進行とともにてんかん発作も悪化する可能性が高く、また突然の重積発作に見舞われることも少なくないです。

原因疾患に対する治療は、治癒目的と対症療法に分けられます。

治癒目的として、脳腫瘍の外科手術や放射線治療、免疫介在性が疑われる脳炎の場合はプレドニゾロンや免疫抑制剤、水頭症では脳室腹腔短絡術などがあます。

対症療法としては、脳浮腫や脳圧亢進があれば降圧剤やグルココルチコイド(ステロイド)、疼痛に対して鎮痛剤があります。

対症療法は、生活の質(QOL)の維持に重要であるため、原因疾患に対する治療法が存在しない疾患や、選択できない事情がある場合でも、積極的に実施されるべきでだと考えられています。

予後

予後は、原因疾患によります。

まとめ

犬の症候性てんかんについて解説しました。年齢や神経学的検査で、特発性てんかんの可能性が低いと判断されたならば、脳の精密検査( MRIや脳脊髄液検査)の実施を行うのが良いでしょう。

仮に、原因疾患に対する治療法が存在しない疾患であったとしても、対症療法によって生活の質(QOL)を維持することは重要だと考えられています。

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