狂犬病予防注射は、犬の飼い主の義務となっています。狂犬病は1956年の発生を最後に、我が国での発生はみられていませんが、それでは何故毎年の予防が義務となっているのでしょうか?
飼い主なら知っておきたい、狂犬病予防注射について考えたいと思います。
狂犬病とは
国立感染症研究所のホームページでは、「狂犬病は、狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からの侵入、および極めて稀ではあるが、濃厚なウイルスによる気道粘膜感染によって発症する人獣共通感染症」と記載されています。
狂犬病の最も恐ろしい特徴は、発症すると100%近く死亡する感染症であることです。日本での狂犬病は、1957年以降発生していません。日本は数少ない狂犬病発生のない国(清浄国)ですが、いつ日本に海外から入ってくるかわからないので、油断は禁物です。
狂犬病予防法とは
狂犬病予防注射は、狂犬病予防法という法律に定められています。
それでは狂犬病予防法とはどんな法律なのでしょうか。その目的として、「この法律は、狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及びこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図ることを目的とする」とあります。
狂犬病予防法に規定されている飼い主の義務として、(1) 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること、(2) 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること、(3) 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること、がありますので覚えておきましょう。
犬の飼い主は、生後91日以上の犬を飼い始めたら30日以内に登録を市区町村へ必要があります。飼い犬の登録は、新規登録手数料としておよそ3000円必要です。また、所有者(飼い主)の変更や住所変更があった場合、そして犬が死亡した時も届出が必要です。
狂犬病予防注射について
狂犬病予防注射では、犬に狂犬病ワクチンを注射します。
ワクチンとは、病原体の毒性を弱めたり、無毒化したりして、通常の感染(自然感染)以外で免疫を獲得させる方法で、いわば模擬試験のようなものです。
狂犬病ワクチンは不活化ワクチンというタイプのワクチンで、免疫持続時間は長くありません。そのため年に1回の注射が必要になっています。
通常、初回の狂犬病予防注射は、混合ワクチン接種プログラムが終了して1ヶ月後(生後4〜5ヵ月頃)に行います。その際に、飼い犬の登録を行っていなければ、併せて行うことが可能です。
狂犬病予防法施行規則では、狂犬病予防注射の時期に関して次のとおり定められています。
生後91日以上の犬(略)の所有者は、(略)その犬について、狂犬病の予防注射を4月1日から6月30日までの間に1回受けさせなければならない
2回目以降は飼い犬登録を行っているので、毎年3月に市区町村から「狂犬病予防注射のお知らせ」(案内ハガキ)が届きます。これには、集合注射の日程・会場なども記載されています。もし、この案内ハガキに記載されている内容に変更があれば、届出を行うようにしましょう。
狂犬病予防注射の時期と場所及び費用
狂犬病予防法では、4月から6月が狂犬病予防注射の期間と定められています。
場所は動物病院または集合注射を、任意で選ぶことができます。
動物病院で狂犬病予防注射を行う場合には、注射後に獣医師から発行される狂犬病予防注射の注射済証を市区町村の受付窓口に提示します。動物病院によっては、その手続きを代行してくれる場合や、注射済票をその場で交付してくれる場合もあります。
集合注射で狂犬病予防注射を行う場合には、実施日、会場、手数料等の詳細については広報や案内ハガキなどで確認する必要があります。
狂犬病予防注射がおよそ3000円、注射済票交付手数料がおよそ550円必要です。
なお期限が過ぎた6月以降でも、動物病院で狂犬病予防注射を行うことは可能なので、もし忘れていた場合でも大丈夫です。
狂犬病ワクチンって本当に必要?
よく聞かれる質問ですが答えは「YES」です。日本は稀に見る狂犬病清浄国なので、皆さんの危機感は薄いかもしれませんが、狂犬病は発症すると100%近い致死率を持つ感染症です。
例えば、「セアカゴケグモ」や「ヒアリ」などのように外国から簡単に日本に外来種が持ち込まれてしまいます。また、新型コロナウイルス(COVID-19)のように感染症はすぐに世界に広まります。そう考えれば、狂犬病がいつ日本で発生してもおかしくない状況なのです。
安心してこの国で犬を飼うためには、狂犬病ワクチンは絶対に必要です。必ず忘れずに接種するようにしましょう。
ちなみに、飼い犬の登録しなかったり予防注射を受けなかったりすると、20万円以下の罰金が科されます。
狂犬病予防注射の猶予
犬が病気などやむを得ない理由で、獣医師が狂犬病予防注射を猶予する必要があると認めた場合は、獣医師が発行する「狂犬病予防注射猶予証明書」をもらって、市区町村の受付窓口へ届出を行います。
そうすることで、当該年度末までは狂犬病予防注射が猶予されます。猶予されるかの基準は、「重篤な疾患に罹っているいることの明らかな犬」と記載されております。
重篤な疾患に罹っている場合には、病気の進展状況が不明であり、このような状態において予防注射を行うことはできない。
狂犬病集合予防注射のためのガイドライン(1996)
まとめ
狂犬病予防注射について解説しました。日本がこれからも狂犬病のない清浄国であり続け、安心して犬を飼える環境にするためにも、狂犬病予防注射は必ず行いましょう。
これは忘れてはならない、飼い主の義務です。