犬の第三眼瞼腺脱出(チェリーアイ)を丁寧に解説

この記事では、犬の第三眼瞼腺脱出(だいさんがんけんだっしゅつ)について原因、症状、診断そして治療を、現役獣医師が解説しています。

対象読者
  • 動物病院で第三眼瞼腺脱出と診断されたor疑われている犬の飼い主
  • 内眼角の部分が赤く腫れあがり、さくらんぼのようにみえる犬の飼い主
  • 犬の第三眼瞼腺脱出について知りたい獣医学生や動物看護師

最後まで読むだけで、第三眼瞼腺脱出について誰にでもすぐに理解できるように作成しているので、是非一度目を通していただけると嬉しいです。

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犬の第三眼瞼腺脱出とは

第三眼瞼線の脱出とは、第三眼瞼腺が第三眼瞼の基部から背外側に変位(脱出)した病気です。この病気は比較的よくみられまするが、ほとんどが1歳未満で発症します。はじめは片側の脱出として出現しますが、時間差で両眼とも脱出することが多いです。約4割の症例で両眼に発症するとされています。

第三眼瞼と第三眼瞼腺とは

第三眼瞼は別名”瞬膜”と呼ばれ、眼瞼とは別に水平方向に動いて眼球を保護する働きがあります。そして、第三眼瞼腺は”瞬膜腺”とも呼ばれ、涙を産生する働きがあります。

犬の第三眼瞼腺の脱出は、その外観が赤く腫れ上がりサクランボのようにみえることから、別名“チェリーアイ”とも呼ばれます。

好発犬種は短頭種で、コッカースパニエル、ビーグル、ペキニーズ、ボストンテリア、バセットハウンド、フレンチブルドック、シーズーが多く、チワワでの発症もよくみられます。

▲犬の眼の解剖学的名称

原因

通常、第三眼瞼線は眼窩骨周囲と結合組織により付着しているのですが、それが遺伝的に欠損している場合や結合組織の発育に異常がある場合に、第三眼瞼線脱出の発症が多いと考えれています。

発生頻度

★★★☆☆ 時々みられる病気

発生頻度を5段階で評価。5:日常的にみられる病気 4:よくみられる病気 3:時々みられる病気 2:めったにみない病気 1:ほとんどみない病気

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第三眼瞼腺脱出の症状

第三眼瞼腺脱出では、脱出した第三眼瞼腺が赤く腫れ、内眼角の部分でサクランボのようにみえるのが特徴的です。それに伴い流涙症、結膜炎、痛みなどが生じます。

軽度なものは綿棒などで押し込むとしばらく出てこないですが再発を繰り返します。また、長期間第三眼瞼線が露出し続けると、第三眼瞼の軟骨が湾曲変形するほか、腺組織が炎症を起こし、充血や浮腫、黄色の目ヤニの出現、流涙などがみられます。

▲右眼に第三眼瞼線の脱出(チェリーアイ)がみられる

第三眼瞼腺脱出の診断

第三眼瞼線の脱出の診断は、視診で判断が可能です。しかし、角膜の潰瘍や感染などの他の眼科疾患がないか確認する必要があるため、通常の眼科検査も行います。

眼窩の脂肪により第三眼瞼線が押し出されて脱出する場合では、何かの拍子に突然脱出しますが、綿棒で押し込むだけで改善する場合もあります。また、脱出と改善を周期的に繰り返す場合には、最終的には炎症の進行の結果、持続的に脱出した状態となります。

第三眼瞼腺脱出の治療

第三眼瞼腺脱出の治療は、外科療法内科療法があります。

外科療法

2歳以下で発症した場合には、早期に外科的治療法を行うことが推奨されています。外科的治療法には、Purse-String法ポケット法アンカー法などがあり、これらから状況に応じて選択されます。

なお、以前は第三眼瞼腺の切除してしまう治療法がありました。しかし現在は、乾性角結膜炎(KSC)となることが報告されているので、腫瘍等の場合を除いては、推奨されていません。

内科療法

内科的治療法は、露出した粘膜に生じた感染や炎症に対して抗菌点眼薬とコルチコステロイド点眼薬を使用することがあります。

予後

第三眼瞼腺脱出は手術により治療できますが、強い炎症による腫脹や術後の細菌感染によって、縫った糸が切れてしまい再脱出することがあります。

また、縫った糸の結び目が角膜と接触すると角膜潰瘍を生じることがあるので、術後は注意が必要です。

まとめ

犬の第三眼瞼腺脱出について解説しました。この病気は、2歳以下で発症した場合には早期の外科的治療(ポケット法など)が推奨されています。ただし以前行われていた、第三眼瞼切除術は現在は推奨されていません。

術後に再脱出の可能性や角膜潰瘍の可能性があるので、獣医さんとよく相談して手術に望むようにしましょう。