動物病院で血液検査を受けた際に、検査結果をより深く理解するためのサポートとしてこの記事を作成しました。
愛犬の血液検査結果をお手元に置きながら、ぜひご覧ください。
※注意事項
・正常値は使用する検査機器や検査会社によって異なります。必ず検査結果用紙に記載された基準値を参照してください。
・検査結果が基準値を外れていても、必ずしも病気を意味するわけではありません。必ず担当獣医師の説明を受けましょう。
血小板とは
血小板は、骨髄内の巨核球という細胞から産生される小さな血液細胞です。血管が損傷すると、すぐにその場所に集まり傷口を塞ぐことで、出血を防ぐ重要な役割を担っています。
止血の過程は、まず血小板が損傷部位に接着し、集合して傷口をふさぐ「一次止血」が行われます。これにより出血は一時的に抑えられますが、まだ十分ではありません。続いて、血液中の凝固因子が活性化しフィブリンが形成され、血小板や赤血球を絡め取って強固な止血栓が作られます。これを「二次止血」と呼びます。最終的に、この止血栓が乾燥してできたものが、いわゆる「かさぶた」です。
なお、血小板は一度作られると出血などのイベントがない場合でも、一定期間(約7〜10日間)血液中にとどまった後、寿命を迎えると脾臓に集められ、古くなったものから順に破壊・処理されます。
血小板は、その数が正常値を超えて高値を示す場合を「血小板増加症」、逆に低値となる場合を「血小板減少症」と呼びます。これらは異なる原因や影響を持つため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
検査会社 | 基準値 |
---|---|
富士フィルムモノリス | 20.0~40.0×10⁴/μl |
アイデックス | 14.8~48.4×10⁴/μl |
血小板増加症
血小板が基準値を超えて増加する状態を「血小板増加症」と呼びます。血小板の産生が過剰になることで起こりますが、多くの場合は反応性(出血や腫瘍などに伴う生理的反応)によるものです。病的なケースでは、骨髄の異常増殖が原因となることもあります。
血小板増加症の原因 |
急性出血 悪性腫瘍 脾臓腫瘍に伴う脾臓機能の低下 巨核芽球性白血病(腫瘍性増殖 |
血小板減少症
一方、血小板が基準値より減少する状態は「血小板減少症」と呼ばれます。血小板が少なくなると止血機能が低下し、皮膚の紫斑(アザ)や点状出血など、出血傾向の症状が現れやすくなります。特に、2.0×10⁴/μl未満になると、自然出血のリスクが高まります。
血小板減少症は、以下の3つのメカニズムによって引き起こされます。
① 産生の低下
骨髄での血小板の産生能力が落ちることで減少するケースです。
血小板産生の低下の原因 |
汎血球減少症 骨髄異形成症候群(MDS) 再生不良性貧血 巨核芽球性白血病(分化成熟異常 |
② 消費・破壊の亢進
出血や免疫介在性疾患による過剰消費・破壊が原因です。
血小板消費・破壊の亢進の原因 |
大出血 免疫介在性血小板減少症(自己免疫疾患) |
③ 分布の異常
血小板が脾臓などに隔離され、循環血中で減少するタイプです。
血小板分布の原因 |
脾臓の腫大 高体 門脈高血圧 |
まとめ
犬の血小板の異常である血小板増加症および血小板減少症について解説しました。
血小板の数が正常範囲から外れているからといって、必ずしも深刻な病気であるとは限りません。しかし異常が続く場合や出血傾向が見られる場合には、より詳しい検査が必要となります。
血小板増加症の場合は、まず出血や腫瘍の有無を確認することが重要です。追加でレントゲン検査や超音波検査を行い、異常が見つからなければ骨髄検査を行う場合もあります。
一方、血小板減少症では消費・破壊や分布異常を確認し、それらが否定されれば産生低下の可能性を考慮し骨髄検査が選択されます。
血液検査結果で不安なことがある場合は、獣医師に遠慮なく相談しましょう。適切な診断と治療を受けることで、愛犬の健康を守ることができます。