犬の一生には、幼年期・成年期・高齢期・老齢期といった4つのライフステージがあります。
それぞれのステージに合わせた適切なケアを行うことが、愛犬に健やかで長い人生を送ってもらうためには欠かせません。
この記事では、最初のステージである「幼年期」に焦点をあて、
授乳期・離乳期・成長期、そして社会化期について、獣医師の視点からわかりやすく解説していきます。
愛犬が元気に成長し、将来も健康で幸せに暮らせるよう、
幼年期に必要な知識を一緒に確認していきましょう。
幼年期とは
犬種ごとの成長スピードの違い
幼年期とは、犬が生まれてからおおよそ1歳前後までの期間を指します。犬の平均寿命は約13.7歳(アニコム損保調べ 2015年)ですが、一般的に小型犬は寿命が長く、大型犬は短い傾向にあります。ただし幼年期の長さは逆で、小型犬は短く、大型犬は長くなります。
幼年期のライフステージの分け方
この時期は、授乳期・離乳期・成長期に分かれ、特に生後6ヶ月頃までは「社会化期」として重要な期間となります。
授乳期(誕生〜生後4週目)
栄養管理(母乳と人工授乳)
授乳期は、誕生から生後4週目頃までを指します。
この期間、子犬は母犬の母乳を主な栄養源として成長していきます。
母乳がしっかり飲めている子犬は、お腹がふっくらと膨らんでおり、
毎日体重が順調に増加しているのが目安となります。
母犬の母乳が不足している場合や、兄弟に押されてうまく飲めない子犬には、人工授乳によるサポートが必要になることもあります。
身体の発達(目・排泄・乳歯)
生後10〜15日目には、目が開き始め、周囲の様子を少しずつ認識できるようになります。
ただし、生後20日頃までは自力で排泄ができず、基本的には母犬が股間を舐めて刺激することで排泄を促します。
もし母犬によるケアが不十分な場合は、飼い主さんがお湯で湿らせた脱脂綿などを使って刺激してあげる必要があります。
さらに、生後3週目ごろからは乳歯が生え始め、少しずつヨチヨチと歩くようになり、行動範囲が広がっていきます。
離乳期(生後4週目〜8週目)
目・耳・乳歯の成長
生後4週目ごろになると、子犬は大きな成長を迎えます。
この時期には、目がしっかり見えるようになり、耳も聞こえるようになり、元気に動き回る姿が見られるでしょう。
また、乳歯も生え始め、生後8週目頃にはほぼ全ての乳歯が生え揃います。
離乳食の始め方と進め方
こうした発達に伴い、母乳だけでは栄養が不足してくるため、離乳が始まります。
まずはペットフードを温水でふやかしたおかゆ状の離乳食を与え、徐々に固形に近づけていきます。
最初は柔らかめのフードを与え、様子を見ながら水分量を少しずつ減らしていきましょう。
生後8週頃には、固形フードをしっかり食べられることを目指します。
低血糖防止のための食事管理
この時期は体がまだ小さく、一度にたくさん食べられないため、
1日4〜5回の頻回給餌がおすすめです。
特に低血糖を防ぐため、1日2回だけの食事ではなく、こまめにエネルギー補給できるように工夫しましょう。
健康管理(検便など)
また、健康管理としてこの頃に検便を行い、お腹の寄生虫(回虫など)の有無を確認しておくのもよいでしょう。
成長期(生後2ヶ月〜小型犬8ヶ月・大型犬18ヶ月)
成長速度と食事管理
成長期は、犬種によって長さが異なります。
小型犬では8〜10ヶ月程度、大型犬では15〜18ヶ月程度、超大型犬では2歳近くまで成長が続くこともあります。
生後4〜5ヶ月頃を境に、成長速度は徐々に緩やかになり、
それに合わせて食事量も自然に減少していきます。
この時期には、食事回数を徐々に減らし、1日1〜2回の給餌を目指していきましょう。
注意すべきは、骨や筋肉の成長が落ち着き始めると、脂肪組織が増えやすくなることです。
成長期後半では肥満に気をつけ、適正体重を維持するよう心がけましょう。
乳歯から永久歯への生え変わり
また、生後3ヶ月頃から乳歯が抜け始め、6ヶ月頃には永久歯が生え揃います。
ワクチン・フィラリア・ノミマダニ予防
さらに、混合ワクチン、フィラリア予防、ノミ・マダニ対策、狂犬病ワクチンなどの各種予防が始まる大切な時期でもあります。
性成熟と避妊・去勢の検討
性成熟はオスで6〜12ヶ月、メスで6〜15ヶ月頃に迎えます。
この頃には、去勢手術や避妊手術を検討するのも選択肢の一つとなるでしょう。
社会化期
社会化期の重要性
生後6ヶ月くらいまでの間は、犬にとって非常に大切な社会化の時期です。
この時期に出会った人や体験した出来事は、犬の性格形成に大きな影響を与えます。
子犬の柔軟な脳と経験の積み方
子犬の脳は非常に柔軟であり、多くの新しい刺激を受け入れやすい状態にあります。
そのため、できるだけたくさんの人・動物・場所・音・物に触れさせることが重要です。
たとえば、帽子をかぶった人に慣れていない犬は、成犬になってから帽子を怖がる可能性もあります。
この時期の経験が、その後の行動パターンを左右するため、積極的に良い経験を積ませましょう。
まとめ
犬の「幼年期」は、心身ともに目覚ましい成長を遂げる特別な時期です。
授乳期・離乳期・成長期それぞれで適切なケアが必要であり、社会化期には将来の性格形成に関わる大切な経験を積ませることが求められます。
また、ワクチン接種や健康管理、避妊・去勢といった重要な決断もこの時期に訪れます。
愛犬の健やかな成長を支えるために、ステージごとの変化を理解し、心を込めてサポートしてあげましょう。
この記事が、少しでも皆さまのお役に立てれば嬉しいです。