愛犬が背骨を触った時に痛みを感じたり、部分的な足の麻痺が見られるような場合に、どんな病気を考えれば良いのでしょうか?
椎間板と脊椎の病気である、犬の椎間板脊椎炎について解説します。
椎間板脊椎炎とは
背骨(脊椎)は、脊髄を取り囲みこれらを保護する働きを持ちます。犬の脊椎は頚部(頚椎)7個、胸部(胸椎)13個、腰部(腰椎)7個、骨盤と結合する仙椎3個、尻尾(尾椎)からなり、そのほとんどの脊椎骨の間に椎間板を有しています。椎間板の構造は、弾力のある線維が同心円を描いており、その中心部に髄核と呼ばれる物質が存在しています。
また、脊椎の前後には椎間板と接する様に軟骨(椎体終板)が存在します。
▼犬の胸椎〜腰椎のレントゲン写真。黄色が脊髄、水色が椎間板を示しています。
椎間板脊椎炎とは、椎間板とこれに隣接する椎体終板への感染が起こる病気です。
椎間板と椎体終板への感染症
原因
主に細菌感染が原因と考えられていますが、真菌(カビの仲間)による発症例もあるようです。そして細菌感染のほとんどが、Staphylococcus属であるとされています。
中型犬〜大型犬に多くみられるとされており、雄と雌を比べると雄での発生が約2倍多いようです。また、若齢〜中齢での発生が多く、発症の中央年齢は9歳とされています。
また、小型犬や猫での発症もみられます。
細菌などの病原体は、膀胱炎、前立腺炎、細菌性心内膜炎、歯周病などから血液中を通り、椎骨や椎間板に達すると考えられています。
細菌感染が主で、他の部位から血液を通って感染する
椎間板脊椎炎の症状
元気消失、食欲不振、発熱、体重減少などの症状に加え、背骨(脊椎)に触れる事での痛みといった知覚過敏症状が多くみられます。
病状が進行することにより、背骨(脊椎)の知覚過敏が強くなり、そして病変が脊髄を圧迫することにより、部分的な足の麻痺がみられるなることもあります。
背骨(脊椎)の知覚過敏や部分的な足の麻痺
似たような症状を示す病気として、変形性脊椎症や脊椎腫瘍があります。
椎間板脊椎炎の診断と治療
診断
レントゲン検査が、最も有用な検査であると考えられています。しかし、臨床症状が出てからおよそ2~4週間後にあらわれる変化であるとされていますので注意が必要です。
具体的には、椎骨と椎骨の隙間が狭くなったり、椎体終板の不整化がみられるようになります。
また、椎間板脊椎炎が疑われる場合には、感染の原因となった疾患(膀胱炎や歯周病など)を探すための検査も必要になってきます。
レントゲン検査が有用
治療
細菌感染による場合には、抗菌薬の投与と消炎鎮痛剤などの投与を行います。抗菌薬治療開始後、およそ4~5日で背骨(脊椎)の知覚過敏が改善するとされています。
改善がない場合には、細菌の培養検査などが推奨されています。
抗菌薬による治療
予後
背骨(脊椎)の知覚過敏のみで、神経的な異常がない場合には予後は良いとされています。ただし、抗菌薬による治療に反応しない場合には、注意が必要です。
まとめ
犬の椎間板脊椎炎について解説しました。愛犬が背骨を触った時に痛みを感じたり、部分的な足の麻痺が見られるような場合には、この病気が疑われます。
レントゲン検査で診断されることが多いですが、初期には変化が見られないこともあるので、注意が必要です。