犬と人の皮膚の違いとは?犬に専用のケアが必要な理由を獣医師が丁寧に解説

目次

はじめに

愛犬の健康を守るうえで、皮膚はとても重要な役割を果たしています。
しかし、飼い主さんの中には「人間と同じようにケアすれば大丈夫」と考えてしまう方も少なくありません。

実は、犬と人間では皮膚の構造や性質が大きく異なります。
これらの違いを理解しておくことは、愛犬に適切なスキンケアを行うために非常に重要です。

本記事では、皮膚の構造の違い、pH、そして水分蒸発量(TEWL)に焦点をあて、犬と人の皮膚の違いを学術的な根拠とともにわかりやすく解説します。
最後には、なぜ犬専用のシャンプーやケア製品が必要なのか、理由をしっかりご紹介します。

犬と人の皮膚の構造の違い

まず最も大きな違いは、「皮膚のバリア機能」にあります。

人間の皮膚は、外界からの刺激や病原体から体を守るために強力なバリア機能を備えています。
一方、犬の皮膚は構造的にこのバリアが非常に弱く、外部刺激に対してとてもデリケートです。

具体的には、犬の表皮(皮膚の一番外側の層)は人間と比べて非常に薄く、また角質層の層数も少ないとされています。

  • 人の角質層:約10〜15層(平均0.1mm)
  • 犬の角質層:約3〜5層(平均0.03〜0.05mm)

犬の表皮は、人間のわずか3分の1程度の厚さしかありません。
このため、犬の皮膚は非常に繊細で、ちょっとした摩擦や外的刺激によって容易にダメージを受けてしまうリスクがあります。

また、皮膚が薄い分だけ、バリア機能も人間に比べて脆弱です。
そのため、日常的なケアにおいても、より優しく・低刺激なアプローチが求められるのです。

皮膚のpH(ペーハー)の比較

皮膚の表面は、pH(酸性・中性・アルカリ性を示す指標)によっても大きく異なります。

  • 人間の皮膚pH:おおむね4.5〜5.5(弱酸性)
  • 犬の皮膚pH:おおむね6.2〜7.4(ほぼ中性)

人間の皮膚は弱酸性を保つことで、細菌やカビなどの外敵から肌を守っています。
一方、犬の皮膚はより中性に近いため、防御力が人間に比べて弱いとされています。

この違いは、シャンプー選びに直結します。
人間用シャンプー(弱酸性)は犬の皮膚には合わず、逆にバリア機能を壊してしまう恐れがあるため、犬専用のpHバランスを考慮したシャンプーを選ぶことがとても大切です。

皮膚の水分蒸発量(TEWL)の比較

TEWL(Transepidermal Water Loss)とは、皮膚から自然に蒸発していく水分量を示す指標です。

犬の皮膚は、人間に比べてTEWLが高く、水分が失われやすく乾燥しやすいという特徴があります。
(参考:Veterinary Dermatology文献)

特に、**犬のアトピー性皮膚炎(CAD:Canine Atopic Dermatitis)**では、TEWLの上昇が明らかに認められています。
つまり、皮膚バリア機能が低下しているということです。

バリア機能の破綻により、外部刺激やアレルゲンが皮膚内に侵入しやすくなり、
これがさらなる炎症や強いかゆみを引き起こす悪循環を招きます。

このため、アトピー性皮膚炎を含め、犬の皮膚疾患では
日常的な保湿ケアによって皮膚の水分量を保ち、バリア機能をサポートすることが非常に重要です。

乾燥対策=保湿ケアは、健康な犬にも、皮膚にトラブルを抱えやすい犬にも共通して大切なスキンケアの基本です。

犬に適したスキンケアの重要性

これまで見てきた通り、犬の皮膚は人間とは大きく異なり、
薄くてデリケートであり、バリア機能も弱いという特性があります。

このため、犬の皮膚には

  • 犬専用に設計されたpHバランスのシャンプー
  • 乾燥を防ぐための保湿ケア
    など、犬に合わせたスキンケアが必要不可欠です。

人間用のシャンプーやケア用品をそのまま使用すると、
皮膚のバリア機能を破壊し、かえって皮膚病を引き起こしてしまう可能性もあります。

愛犬の皮膚を健康に保つためには、犬専用の低刺激・保湿成分配合の製品を選び、優しくケアすることが大切です。

まとめ

犬と人の皮膚は、構造・厚さ・pH・水分管理といったさまざまな点で大きな違いがあります。
この違いを理解した上で、犬に適したスキンケアを行うことは、
愛犬の健康と快適な生活を守るうえでとても重要です。

ぜひ、犬には犬専用のシャンプーや保湿ケア用品を選び、正しいケアを心がけてあげてください。

当サイト「わんらぶ大学」では、獣医師監修のもと、犬と猫の健康や暮らしに役立つ情報をわかりやすくお届けしています。

※医療に関する最終的な判断は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

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