この記事では、犬の急性膀胱炎について原因、症状、診断そして治療を、現役獣医師が解説しています。
最後まで読むだけで、急性膀胱炎について誰にでもすぐに理解できるように作成しているので、是非一度目を通していただけると嬉しいです。
急性膀胱炎とは
膀胱炎とは、膀胱が炎症を起こす病気です。一般に犬の膀胱炎と言えば、急性膀胱炎のことを指します。
急性膀胱炎は、無菌状態であるはずの膀胱において微生物が増殖することが原因となります。なお尿道の出口付近は、通常でも無菌ではなく常在菌が存在します。
急性膀胱炎の年齢や性別に関する発症リスクは、以下のように考えられています。
- 年齢に関係なく発症する
- メス犬がオス犬より発症率が高い
- 避妊手術や去勢手術を行なっていない方が発症率が低い
急性膀胱炎の発生率が高くなる要因として、以下のものがあります。
- 糖尿病や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの基礎疾患
- 結石症の治療などでのカテーテル留置
- 尿路変更の手術などの病歴
原因
急性膀胱炎の多くは、消化管内もしくは尿道内の微生物が原因で発症します。
感染する微生物は、圧倒的に細菌感染が多いです。細菌の種類は、大腸菌が最も多く、次いでブドウ球菌が多いと報告されています。
通常、感染する細菌は1種類ですが、2種類以上の細菌が同時に感染する確率は20~30%とされています。
感染する微生物は細菌以外にも、真菌やマイコプラズマの感染が報告されています。
これらの微生物の感染は、感染を防御する働きが弱くなったことに起因すると考えられています。
急性膀胱炎の症状
血尿、頻尿、排尿困難、排尿痛、いつもと違うところで排尿するなどの症状がみられます。
さらに、発熱、元気や食欲の低下、嘔吐等がみられることもあり、その場合には、腎盂腎炎や前立腺膿瘍などを合併した重症例の可能性があるので注意が必要です。
急性膀胱炎の診断
血尿や頻尿などの症状から急性膀胱炎を疑い、尿の培養検査による細菌の検出で確定診断を行います。
尿の培養検査に用いる尿は、膀胱から直接針を刺して抜いた尿(穿刺尿)が、細菌の汚染が少なく適していると考えられています。
急性膀胱炎の治療
急性膀胱炎の治療は抗菌薬の投与です。可能であれば薬剤(抗菌薬)感受性試験を実施して、抗菌薬を選択します。
頻尿や血尿などの症状は、2~3日お薬を飲ませるとよくなることもありますが、細菌が完全にいなくなった訳ではないので、最後まできちんと投薬を行うことが大切です。
可能であれば再度尿の培養検査を行い、菌が検出されないことを確認して投薬を終了することが望ましいです。
予後
基礎疾患や合併症がなければ、2~3週間で完治することが多いです。
まとめ
犬の急性膀胱炎について解説しました。血尿、頻尿、排尿困難、排尿痛、いつもと違うところで排尿するなどの症状がみられたら、膀胱炎の可能性がありますので動物病院を受診しましょう。
また、頻尿や血尿などの症状は、2~3日お薬を飲ませるとよくなることもありますが、細菌が完全にいなくなった訳ではないので、お薬を最後まで飲ませることが大切です。