愛犬が病気になった時に、「この病気遺伝するかな?」って気になりますよね。多くの病気には遺伝因子の影響を受けることが分かっていますが、どうやらそれだけでは無いようです。
遺伝子疾患についての考えたかと、現在犬で検査可能な遺伝子検査について解説します。
遺伝子疾患
遺伝子疾患は遺伝子の異常が原因になって起きる疾患の総称であり、遺伝性疾患や遺伝疾患そして遺伝病とも呼ばれます。遺伝という言葉から、親から子に遺伝する病気というイメージを持つかもしれませんが、現在では遺伝しない場合でも遺伝子疾患という言葉を使います。
そして遺伝子疾患は一般的に染色体異常症と単一遺伝子疾患そして多因子遺伝の3種類に分類されます。
染色体異状症
染色体異常症は、染色体の不足あるいは過剰が原因で起こります。通常2本で対をなしている遺伝子が3本になることをトリソミーといい、人では21番染色体トリソミーによるダウン症候群が有名です。
ちなみに人の染色体は2n=46ですが、犬では2n=78、猫では2n=38です。
男女(雌雄)を決定する遺伝子を性染色体と言いますが、XY=男(雄)そしてXX=女(雌)で表されます。人の性染色体異常症で、性染色体がXXYになるクラインフェルター症候群と言う病気があります。動物では三毛猫は全て雌なので「雄の三毛猫は高く売れる!」といった都市伝説があります。理論上、X染色体が2つないと(XXでないと)三毛猫はできないのですが、性染色体異常が起きてごく稀にXXYの遺伝子を持つ雄猫が生まれます。この場合に限り、「雄の三毛猫」ということが起こり得ます。
単一遺伝子疾患
単一遺伝子疾患は1つの遺伝子の変異が原因で起こります。単一遺伝子疾患はメンデル遺伝形式に従うという大きな特徴があります。
メンデルの法則は理科の時間に習ったと思いますが、エンドウの種子には「しわ」のあるものとないものがあります。「しわ」のないものとあるものを交配すると、翌年はしわのないもののみが収穫され、この種子をさらに翌年育てると「しわ」のないもとのあるものが3:1の割合になったというやつです。
動物では、猫の白斑遺伝子は常染色体優性遺伝の様式をとることや、猫の長毛遺伝子は常染色体劣性遺伝の様式をとることが知られています。
多因子遺伝
多因子遺伝は、ほとんどの病気の原因に関与しています。多因子遺伝は単一遺伝子疾患で認められる特徴的な遺伝形式を示さなくとも、罹患者の血縁者における再発率が高いことや一卵性双胎において同じ疾患に罹患する頻度や高いことにより示されています。人の多因子遺伝疾患には、アルツハイマー型認知症や糖尿病そして高血圧などが知られています。
これらは環境因子と遺伝因子の両方から影響を受けて発症すると言われており、「遺伝子が中に弾を込め、環境は引き金を引く」という言葉で例えられています。多くの場合、予防的な生活をすれば発症を抑制することが可能な場合もありますが、一部のがんの中には遺伝因子の影響が強く発症の抑制の困難なものも存在します。
例えば、人ではBRCA1遺伝子によりおよそ80%の確率で発症する乳がん、同じくおよそ50%の確率で発症する卵巣がんが挙げられます。
動物の場合には、犬の高血圧や糖尿病そしてアトピー性皮膚炎などが挙げられます。
犬の遺伝子検査
近年では、動物でも可能な遺伝子検査が増えてきました。
上述の通り遺伝子疾患は、変異遺伝子の存在だけで確定することは難しいのですが、その疾患を疑う臨床症状がある場合には、その病気の可能性が非常に高いと判断できます。
また、同様に遺伝子変異がないということもその病気にかかっていないと判断することはできません。何故ならば、遺伝子に変異がなくても病気になる犬が存在するからです。
以下に犬で検出可能な遺伝子変異と病気の危険性が高い犬種を示します。
まとめ
現在多くの病気が多因子遺伝に含まれると考えられています。「遺伝子が中に弾を込め、環境は引き金を引く」という言葉を覚えておくと病気の理解に役立つと思われます。
この考えによれば病気は環境因子と遺伝因子の両方から影響を受けて発症するので、遺伝因子の影響が大きいものは難しいですが、予防的な生活をすれば発症を抑制することが可能な場合も存在するということです。
愛犬にどんな病気が多いかを知り、適切に予防していくことで愛犬に健康で長生きをしてもらうことが可能かもしれません。