犬の偽妊娠

実際には妊娠していないにもかかわらず、妊娠における様々な兆候が見られる想像妊娠という状態が人にあります。

乳腺の腫大や乳汁の分泌といった妊娠した犬と同様の臨床徴候がみられる、犬の偽妊娠について解説します。

偽妊娠とは

犬は多くの哺乳類と異なり、排卵後の黄体機能は妊娠の有無に関わらず類似しており、約2ヶ月間維持されます。そのため、妊娠していない犬においても黄体から分泌される長期間のプロジェステロン(黄体ホルモン)の作用により、軽度な乳腺の腫大がみられます。この場合の乳汁は、白色ではなく淡黄色の液体が分泌される程度で、これを「生理的偽妊娠」と呼びます。

同じく妊娠していなくても、妊娠した犬と同様の臨床徴候がみられる場合があり、これを一般に「偽妊娠」と呼びます。

偽妊娠とは
妊娠していなくても、妊娠した犬と同様の臨床徴候がみられること

原因

偽妊娠に関連する臨床徴候は、妊娠期の後半(排卵後約30日)以降に、下垂体前葉から分泌される「プロラクチン」という物質が原因であることが分かっています。

妊娠していない犬では、血液中のプロラクチンはわずかに上昇する程度ですが、偽妊娠の犬では妊娠した犬と同程度に、血液中のプロラクチンが上昇します。そして、プロラクチンの作用により、乳汁分泌をはじめとする偽妊娠の臨床徴候があらわれるとされています。

しかし、何故プロラクチンの分泌が妊娠した犬と同程度分泌されるかは、解明されてはいないそうです。

偽妊娠の意義については、次のような説があります。

犬がその昔、群れを作って生活していた時代に、他の雌犬から生まれた子犬を群れの中で世話ができるようにするための、生理現象だったのではないかという説です。

そう考えると、偽妊娠は一種の先祖返りの現象と捉えることができるかもしれません。

偽妊娠の原因とは
理由は不明だが、プロラクチンが妊娠犬と同程度分泌されるため

偽妊娠の症状

排卵後約30日頃から、妊娠犬と同様の臨床徴候が見られます。

すなわち著しい乳腺の腫大、乳汁の分泌といった体の変化や、営巣行動(巣作り)、おもちゃを子犬のように可愛がると、神経質ないし攻撃的になるといった行動の変化がみられます。乳汁の分泌は、乳房を絞ると出る場合が多いですが、中には何もしなくても滴り落ちる場合もあります。時に、食欲不振になることもあります。

なお、偽妊娠が一度みられた犬は、発情ごとに偽妊娠が反復することが知られています。

症状のポイント
乳腺の腫大、乳汁の分泌、営巣行動、おもちゃを子犬のように可愛がる、神経質ないし攻撃的、食欲不振

偽妊娠の診断と治療

診断

超音波検査などで妊娠していないか確認した後に、前述の臨床徴候で判断していきます。

診断のポイント
臨床徴候から判断。念の為、妊娠してないことの確認。

治療

偽妊娠は生理的な現象なので、時間の経過とともに臨床徴候は自然に消退します。

ただし、乳房を自分で舐めて刺激することで、プロラクチンの分泌が持続してしまい、乳汁の分泌が持続する場合があります。このような時には、エリザベスカラーを装着するなどの措置が必要になります。

また、発情ごとに偽妊娠を繰り返す場合には、今後特に子供を産ませる理由がないのであれば、避妊手術を行うことを考慮してもよいでしょう。

治療のポイント
時間の経過とともに自然消退する

予後

偽妊娠は通常、発症から2~3週間程度で自然消退します。しかし時として、次の発情周期まで持続することがあります。

まとめ

犬の偽妊娠について解説しました。偽妊娠が一度みられた犬は、発情ごとに偽妊娠が反復することが知られています。

今後特に子供を産ませる理由がないのであれば、避妊手術を行うことを考慮してもよいでしょう。

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