犬のマダニ媒介感染症の中で最もよく遭遇し、死に至ることもある恐ろしい病気が犬のバベシア症です。ただし、しっかりとマダニの予防を行えば防げる病気なので、適切に予防を行うようにしましょう。
バベシア症とは
赤血球に寄生するバベシア原虫による感染症であり、特に西日本で問題となっています。マダニが媒介する犬のマダニ媒介感染症の一つです。
バベシア症の原因
犬のバベシア症は、主としてバベシア・ギブソニー(Babesia gibsoni)が原因となっています。バベシア・ギブソニーは1~3μm程の原虫という生物で、通常マダニによって媒介されますが、輸血や闘犬などでの血液の接触でも感染する可能性があります。
バベシア症の症状
犬のバベシア症は、元気消失、食欲不振そして貧血による粘膜蒼白や黄疸といった症状がみられます。その他、脾臓の腫大、リンパ節の腫大そして発熱がみられます。
この病気は、重症化すると死に至る場合もあります。
バベシア症の診断
血液検査では、溶血性貧血や血小板減少症がみられ、C反応性蛋白(CRP)の増加がみられることが多いです。また、全身的な炎症反応から白血球数は増加することが多いですが、まれに白血球減少症が見られることもあります。
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尿検査では、ビリルビン尿ないしヘモグロビン尿がみられます。
血液塗抹でバベシア・ギブソニーの虫体を認めるか、血液を用いた遺伝子検査(PCR検査)によって確定診断されます。
バベシア症の治療
バベシア原虫を駆除する初期治療と再発を防止する維持治療があります。また、重度な貧血の場合には、輸血を実施することもあります。
初期治療
バベシア原虫を駆除するための治療です。ジミナゼンによる治療とアトバコンによる治療の2つがあります。
ジミナゼンによる治療
メリット:安価
デメリット:副作用が強い(注射部位の痛み、腎障害、肝障害、小脳出血など)
アトバコンによる治療
メリット:副作用が少ない
デメリット:高価、薬剤耐性ができやすい
維持治療
再発予防のための治療です。いくつかのお薬を組み合わせて投与することが多いです。目安として3ヶ月くらいと言われています。
バベシア症の予後
バベシア原虫は、適切に治療を行っても体内からの完全な駆虫は困難とされています。様々なストレスや免疫抑制剤の投与、脾臓の摘出などの手術などで再発することがあります。生涯にわたり、再発を警戒していかなければなりません。
バベシア症の予防
マダニによる吸血を避けることが重要です。マダニは動物に5~10日間寄生し、抗凝固因子やバベシア原虫を含む唾液の注入と吸血を繰り返します。バベシア原虫が動物に感染するのは少なくとも2~3日間の寄生が必要とされますので、定期的なダニ寄生予防が重要です。
バベシア・ギブソニーは輸血による感染や母犬から子犬への感染の可能性があるため、これらの点にも注意が必要です。
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まとめ
犬のバベシア症について解説しました。犬のバベシア症は重度の貧血を起こし、死に至ることもある病気です。また、治療が大変で、場合によっては輸血が必要になるかもしれません。
しかし、犬のバベシア症はマダニの予防をしっかりやっていれば防げる病気です。愛犬が大変な目に遭わないためにも、マダニ予防をしっかりと行いましょう。