愛犬にお腹を触ると痛がる様子がみられたり、皮膚や粘膜が黄染する黄疸がみられた場合、どんな病気を考えますか?
症状が進行すると胆嚢破裂による胆汁性腹膜炎を起こすこともある、犬の胆嚢粘液嚢腫について解説します。
胆嚢粘液嚢腫とは
胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁を貯める袋状の臓器で、一度胆嚢に蓄えられた後、胆管を通って十二指腸に流れます。
なお胆汁には、脂肪を細かくして水に溶けやすい状態にする働き(乳化)があります。
肝臓で作られた胆汁を貯める袋状の臓器
そして胆嚢粘液嚢腫とは、粘液の非生理的な蓄積により胆嚢が拡張する病気で、中齢〜高齢の犬で発症が多いとされています。
本来は流動性のある胆嚢の内容物が流動性を失うことにより、最終的には閉塞性黄疸、胆嚢炎、胆道系の壊死といった病気が引き起こされます。
粘液の非生理的な蓄積により胆嚢が拡張する病気
原因
胆嚢粘液嚢腫は、粘膜の過形成により粘液が過剰に分泌されることで、ムチンを含むゼラチン様粘液が蓄積します。これらの変化は、数週間〜数ヶ月かけて胆嚢内、総胆管あるいは肝管内に充満していきます。
胆石や胆泥が原因と考える説もありますが、現在のところ明らかな原因は不明です。
また基礎疾患として、甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)が深く関与していることが報告されています。
胆嚢粘液嚢腫の症状
症状として元気消失、食欲低下、嘔吐や下痢などの症状に加え、お腹を触ると痛がる様子がみられたり、皮膚や粘膜が黄染する黄疸がみられる場合があります。
症状が進行すると、胆嚢破裂を起こし内容物が腹腔内に流出します。その場合には、胆汁性腹膜炎と呼ばれる状態となり、腹水が貯留します。
重篤になると播種性血管内凝固(DIC)、腎不全、多臓器不全などが起こり得ます。
腹部圧痛や黄疸、症状が進行すると胆嚢破裂による胆汁性腹膜炎
胆嚢粘液嚢腫の診断と治療
診断
手術前の唯一の確定診断方法は、超音波検査であるといわれています。
典型的な胆嚢粘液嚢腫では、いわゆる「キウイフルーツ様の断面像」がみられます。そして単なる胆泥症ではなく、胆嚢内容物の流動性が失われていることも確認できます。
血液検査では、肝酵素の著しい上昇がみられることが多いです。
治療
胆嚢粘液嚢腫に対するお薬での治療の有効性については、不明な点が多いとされていますが、投薬により改善が認めれらたとする症例も報告されています。お薬での治療に反応がない場合や、進行がみられる場合には、手術が推奨されます。
またすでに症状がある場合や、血液検査上の異常がある場合にも、手術が推奨されています。
予後
手術後数日生存した犬では、比較的予後は良好であるとされています。一般的には、手術の死亡率は20%前後とされています。
まとめ
犬の胆嚢粘液嚢腫について解説しました。この病気は、2000年以降に報告が増えてきており、これは動物病院で超音波検査が一般に行われるようになったからではないかと思われます。
手術を行うことが推奨されていますが、どのタイミングで行うかの判断は難しく、動物病院で獣医さんとよく相談されると良いでしょう。