犬の整腸剤【ビオイムバスター錠】を獣医師がわかりやすく解説

下痢や嘔吐といった胃腸の不調は、動物病院への来院理由として非常に多い症状です。
こうした症状の多くは数日で自然に回復するケースもありますが、中には動物病院での対応が必要な場合もあります。

実際、動物病院で「検便をして整腸剤を処方され、様子をみる」という経験をされた飼い主さんも多いでしょう。

今回は、犬猫用の整腸剤の中でも特に使用頻度が高い共立製薬株式会社のビオイムバスター錠について、獣医師の視点から詳しく解説します。

目次

ビオイムバスター錠の成分

ビオイムバスター錠は、直径約8mmの薄茶色の小型錠剤で、1/4に分割できる割線が入っています。
苦味のある有効成分は高嗜好性素材でマスキングされており、投与しやすい設計です。

この製剤には、以下の2つの有効成分が配合されています。

有胞子性乳酸菌

  • 食物の消化・吸収補助
  • 腸内感染の防止
  • 有害菌の抑制と腸内環境の改善
  • 免疫機能の刺激と健康維持

総合消化酵素剤(パンクレアチン)

  • 胃や腸ででんぷん・蛋白質・脂肪を分解
  • 消化吸収の補助
  • 腸粘膜損傷や腸内細菌バランス異常時のサポート

このように、腸内環境の正常化と消化吸収の補助の両面から作用することで、整腸効果が期待できる薬剤です。

ビオイムバスター錠の適応例

ビオイムバスター錠は、犬猫の以下のような胃腸症状の改善を目的として広く使用されている整腸剤です。

  • 食欲不振
  • 消化不良
  • 単純性下痢

この薬剤の効能・効果は、これらの症状の緩和・改善にあります。

実際の臨床試験では、下痢を呈した犬29頭に対してビオイムバスター錠を投与した結果、総合スコアの94.8%が改善し、プラセボ群(74.4%)と比較して高い有効性が示されました。
なお、総合スコアは5つの項目(下痢の状態、下痢の回数、食欲の程度、活動性、腹痛の有無)を基準として評価されています。

特に慢性の下痢に対しては非常に良好な効果が得られており、長期間の管理が必要な症例でも有効に活用できるのが特徴です。

また、同社から発売されているディアバスター錠との使い分けについて、どちらかというと急性の下痢に対してはディアバスター錠が、より中等度〜重度の下痢の場合は、ビオイムバスター錠とディアバスター錠の併用療法が推奨されています。

このように、症状の重症度や経過に応じて適切に使い分けることで、より効果的な治療が可能となります。

腸内細菌叢(腸内フローラ)の働き

犬をはじめとする哺乳類の腸内には、非常に多くの種類の細菌が存在しており、これらが複雑に関わり合いながら腸内細菌叢(腸内フローラ)を形成しています。

腸内細菌叢を構成する乳酸菌などの有用菌は、さまざまな方法で宿主の健康維持に重要な役割を果たしています。主な働きは以下のとおりです。

  • 病原菌や腐敗菌の増殖を抑制する(腸内感染や食中毒から守る)
  • 発がん関連酵素や腐敗産物の生成を抑える(腸内の腐敗を防ぐ)
  • 腸の蠕動運動を促進し、便秘を防止する
  • 宿主の免疫機能を刺激して強化する
  • ビタミンB群を産生することで栄養面でも貢献する

このように、腸内細菌叢は腸内環境を健全に保つことで、消化吸収や免疫、さらには全身の健康維持に大きく関与しています。
そのため、腸内環境を整えることは、犬にとっても非常に重要な健康管理のひとつといえるでしょう。

ビオイムバスター錠の容量

ビオイムバスター錠は、副作用が少ないと考えられており、比較的幅広い用量で使用されています。
また、長期間にわたる投与も可能とされ、慢性的な腸の不調がある場合にも安心して使うことができます。

体重ごとの投与量(1日2回投与) は以下の通りです。

体重投与量(下記の量を1日2回投与)
5kg未満1錠
5kgから20kg2錠
20kg以上3錠
▲ビオイムバスター錠の体重別投与量

ビオイムバスター錠の注意事項

ビオイムバスター錠を使用する際は、以下の注意点を守ることが重要です。

使用上の一般的な注意

  • 獣医師の指導のもとで使用する
     自己判断での使用は避け、必ず獣医師の診断と指示を受けた上で投与してください。
  • 効能・効果に記載された目的以外には使用しない
     本剤は消化不良や下痢の改善を目的としており、それ以外の用途での使用は推奨されません。
  • 用法・用量を守る
     過剰投与や自己流の投与は避け、決められた量を正しく使用しましょう。

万が一の対応(人が誤って飲み込んだ場合)

  • 誤って人が本剤を飲み込んでしまった場合は、速やかに医療機関を受診してください

他の薬剤との併用について

  • 抗菌性物質(抗生物質など)との併用は避けるべき
     有胞子性乳酸菌の効果が弱まる可能性があるため、併用は推奨されません。

このように、ビオイムバスター錠は安全性の高い整腸剤ですが、正しい使い方を守ることでより高い効果を得ることができます。使用前は必ず獣医師と相談しましょう。

まとめ

本記事では、犬の整腸剤のひとつであるビオイムバスター錠について、成分、適応、作用メカニズム、使用時の注意点を詳しく解説しました。

ビオイムバスター錠は、有胞子性乳酸菌とパンクレアチンを配合し、腸内環境の正常化と消化補助の両面から下痢や消化不良の改善に役立つ整腸剤です。特に慢性下痢に対して高い有効性が認められており、急性下痢にはディアバスター錠との使い分けや併用が推奨されるケースもあります。

また、腸内フローラ(腸内細菌叢)を整えることで、

  • 病原菌の抑制
  • 発がん関連酵素活性の抑制
  • 腸の運動促進
  • 免疫機能の刺激
  • ビタミンB群の産生 など

多くの健康維持効果が期待されます。

ただし、使用に際しては獣医師の指示を必ず仰ぎ、用法・用量を厳守することが大切です。抗菌薬との併用にも注意が必要です。

愛犬の下痢や消化不良でビオイムバスター錠を処方された場合は、この記事を参考にしながら、獣医師に気になる点をしっかり相談することをおすすめします。

当サイト「わんらぶ大学」では、獣医師監修のもと、犬と猫の健康や暮らしに役立つ情報をわかりやすくお届けしています。

※医療に関する最終的な判断は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次