犬のガストリノーマ

膵臓の腫瘍は人でも治療が難しく、予後が悪い腫瘍の一つとされており、それは犬でも同様です。

グルカゴノーマインスリノーマと並ぶ膵臓腫瘍である、犬のガストリノーマについて解説します。

ガストリノーマとは

膵臓は胃の後ろにある臓器で、消化酵素(膵酵素)を分泌する外分泌機能と、ホルモンを分泌する内分泌機能を持っています。

膵酵素は腺房細胞より分泌され、膵管を通して十二指腸内へ送られます。この膵酵素は糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素を含んでいます。

膵臓のランゲルハンス島の細胞はいくつかに分類され、α細胞からはグルカゴン、β細胞からはインスリン、δ細胞からはソマトスタチンというホルモンが分泌されます。

膵臓の働き
消化酵素(膵酵素)を分泌する働きと、ホルモンを分泌する働き

そしてガストリノーマとは、ランゲルハンス島のδ細胞の悪性腫瘍です。犬では発症の平均年齢は8.2歳とされており、雌に発生する危険性がわずかに高いようです。

ガストリノーマでは、ガストリンを過剰に分泌します。ガストリンは、胃壁の壁細胞からの胃酸の分泌を促進します。そのためガストリノーマでは、胃酸の過剰分泌により胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを起こします。この病気は別名、ゾリンジャー・エリソン症候群とも呼ばれます。

原因

好発犬種などは知られていません。

ガストリノーマの症状

前述のとおり、ガストリンの過剰分泌による胃酸の過剰分泌が起こるので、それにより胃粘膜の肥厚、消化管潰瘍、食道炎などがみられます。

これらの消化器病変により、慢性嘔吐、元気や食欲の低下、体重減少、吐血、血便(黒色便)、粘膜蒼白、そして腹痛などがみられます。

症状が進行すると消化管穿孔を引き起こすことがあり、この場合にはぐったりしてショックがみられます。このように消化管穿孔が起こった場合に、容体が急激に悪化することがあります。

似たような症状を起こす病気として、難治性の胃炎や胃潰瘍、炎症性腸疾患(IBD)、消化管の腫瘍、膵炎などがあります。

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ガストリノーマの診断と治療

診断

人のガストリノーマでは、「血清ガストリンの基礎濃度」や「セクレチン刺激試験」を行うそうですが、犬や猫におけるこれらの検査についてはまだ確率されていないようです。

血液検査では、消化管出血による貧血(再生性貧血)がみられ、胃十二指腸の潰瘍形成により低蛋白・低アルブミン血症がみられます。また、慢性の嘔吐により低カリウム、低ナトリウム、低クロール血症が起こることがあります。

画像検査では、超音波検査で肥厚した胃壁や幽門が観察される場合があり、レントゲン検査では消化管穿孔を起こした場合に、腹部の細部の構造が確認できなくなります。さらに、転移があればその所見がみられます。

内視鏡検査で、食道炎、胃または十二指腸潰瘍、胃粘膜の肥厚が確認されます。しかしこれらは、慢性の胃酸過多であることを示してはいますが、ガストリノーマの証明にはなりません。

膵臓腫瘍は非常に見つけにくい腫瘍であり、一般的にお腹の中の「できもの」が触れる場合、または超音波や開腹時に肉眼で見つかる「できもの」があった場合には、ガストリノーマである確率は極めて低いとされています。

治療

胃酸の過剰分泌に関連する臨床症状を抑えるために、H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬の投与などのお薬による治療が推奨されています。また、嘔吐に関連する電解質異常を補正します。

もし可能であれば、ガストリノーマと転移病巣の外科的な切除を行います。

予後

転移率が高いため、予後不良とされています。

内科的および外科的に治療した場合で、平均4.8ヶ月の生存期間であったとされています。

まとめ

犬のガストリノーマについて解説しました。この病気は診断が難しく、その上根治を目指す治療も難しい病気です。

今後、早期発見が可能な診断方法が開発されることが期待されます。

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