この記事では、犬のチョコレート中毒について原因、症状、診断そして治療を、現役獣医師が解説しています。
最後まで読むだけで、チョコレート中毒について誰にでもすぐに理解できるように作成しているので、是非一度目を通していただけると嬉しいです。
チョコレート中毒とは
チョコレート中毒とは、チョコレートに含まれているテオブロミン、カフェインなどのメチルキサンチンを過剰に摂取することで生じる有害作用です。
チョコレートにより含まれているメチルキサンチンの量は異なりますが、少量でも中毒を起こし、けいれん発作などを起こし死に至る場合もあります。
体重に対するチョコレートの量の問題から、大型犬に比べて小型犬の方が重篤な症状がみられます。
原因
チョコレートに含まれる、テオブロミンやカフェインなどのメチルキサンの作用は以下のとおりです。
- ホスホジエステラーゼ阻害によるcAMPの蓄積
- 貯蔵カルシウムイオンの遊離による細胞内カルシウムイオンの増加
- アデノシン受容体遮断
これらの作用により、中枢神経の興奮作用、平滑筋弛緩作用を示します。
チョコレート中毒の症状
チョコレート中毒では、急性の消化器症状、循環器症状、神経症状などがみられます。
症状の重症度は、摂取したチョコレートの種類、量、時間により異なります。
軽症の場合では、時間経過とともに以下のような症状がみられます。
- 摂取後1~2時間
落ち着きがなくなる
活動性の亢進や反射亢進
尿失禁や尿量の増加 - 摂取後2~4時間
嘔吐や下痢などの胃腸症状
重症の場合には、以下の症状がみられます。
- 頻呼吸や頻脈
- 高体温
- 硬直
- 筋肉の攣縮
- けいれん発作
- 死亡
チョコレート中毒での死亡原因は、心臓不整脈、呼吸不全、高熱による播種性血管内凝固(DIC)が考えられます。
チョコレートの中毒量
犬が摂取したチョコレートに含まれるメチルキサンの量は、以下の計算式で求めます。
摂取したメチルキサンの量=犬が摂取したチョコレートの量(g)×(テオブロミン(mg/g)+カフェイン(mg/g))÷犬の体重
黒っぽいチョコレート(ビターチョコレート)では、メチルキサン含有量が多い傾向にあります。製品ごとのテオブロミンとカフェインのおよその含有量は、以下のとおりです。
製品名 | テオブロミン | カフェイン |
ココアパウダー | 25.9mg/g | 1.4mg/g |
チョコレート焼き菓子 | 13.8mg/g | 4.1mg/g |
ゼミスウィートチョコレート | 4.8mg/g | 0.7mg/g |
インスタントココアミックスパウダー | 4.7mg/g | 0.5mg/g |
ミルクチョコレート | 1.9mg/g | 0.2mg/g |
ホワイトチョコレート | 0.008mg/g | 0.029mg/g |
テオブロミンの犬のLD50(統計学的に半数(50%)を死亡させる量)は、100~200mg/kgです。テオブロミン摂取量が、20mg/kgで軽度な症状が、60mg/kgでけいれん発作がみられます。
テオブロミンとカフェインの犬の半減期は、次のとおりです。
- テオブロミンの半減期:17.5時間
- カフェインの半減期:4.5時間
チョコレート摂取後3~4日でも、テオブロミンは血液中から検出されると報告されています。
チョコレート中毒の診断
キシリトール中毒の診断は、飼い主からの問診で行います。
問診では、チョコレートを食べたことを確認し、症状がチョコレート中毒と一致していることを確認します。
チョコレート中毒の治療
チョコレート中毒の治療は、対症療法です。その理由として、チョコレート中毒に対する有効な毒剤は存在しないためです。
対症療法として、以下の治療を行います。
- 催吐処置
①チョコレート摂取後2~4時間、②発作が起きていない場合に行います
必要に応じて、胃洗浄も検討します
長時間経過してしまった場合には、催吐処置や胃洗浄の効果は認められません - 吸着剤の投与
催吐処置の有無に関わらず行います - 輸液療法
嘔吐による脱水や電解質補正のために行います - 抗けいれん薬
痙攣が生じている場合に行います - 抗不整脈薬
不整脈を生じている場合に行います
予後
チョコレート中毒の予後は、摂取後2~4時間以内に催吐などの処置が行えた場合は良好です。
犬では3~4日の間、メチルキサンが血液中に検出されるので、この期間は注意が必要です。
まとめ
犬のチョコレート中毒について解説しました。チョコレート中毒は、多くの飼い主さんが認識していることが多いので間違えて与えてしまう場合よりも、圧倒的に盗み食いをされる場合が多いです。
チョコレートに限らず、普段から犬が届く範囲の物には気を付けるようにしましょう。