犬の玉ねぎ中毒を獣医師がわかりやすく解説

愛犬が玉ねぎを食べてしまった――そんな時、どうすればいいのでしょうか?

犬や猫にとって玉ねぎが危険であることは広く知られていますが、「どのくらいの量で中毒になるのか」「玉ねぎ以外にも危ないものがあるのか」までは、意外と知られていないかもしれません。
特に玉ねぎ中毒は、場合によっては命に関わる深刻な症状を引き起こすため、正しい知識と迅速な対応がとても重要です。

この記事では、犬の玉ねぎ中毒について、原因や症状、診断と治療法、さらには予防のポイントまで、獣医師がわかりやすく丁寧に解説していきます。
愛犬が誤って玉ねぎを口にしてしまった場合の備えとして、ぜひ最後までお読みください。

この記事はこんな方におすすめです

  • 中毒の症状や治療法について学びたい獣医学生や動物看護師の方
  • 玉ねぎ中毒について正しい知識を身につけたい愛犬家の方
  • うっかり玉ねぎを食べてしまった犬を飼っていて心配している方
目次

玉ねぎ中毒とは

玉ねぎ(学名:Allium cepa)はネギ科に属する多年草で、ネギやニラ、ニンニクと並び、特有の強い香りを持つ植物です。
犬が玉ねぎを摂取すると、n-プロピルジスルフィドという物質が赤血球を攻撃し、貧血を引き起こします。これがハインツ小体性溶血性貧血と呼ばれる状態です。

玉ねぎ中毒の特徴

  • 玉ねぎ摂取により赤血球が破壊され、貧血が生じる。
  • 玉ねぎ以外にもネギ、ニンニク、ニラなどのネギ属植物でも同様のリスクがある。

原因

毒性は摂取量や季節、摂取方法によって異なりますが、加熱や乾燥、粉末加工(オニオンパウダーなど)しても毒性は消えません
体重1kgあたり15〜30g(猫では約5g)を摂取すると血液に異常が出るとされ、一般的に体重の0.5%程度の玉ねぎでも中毒が起こるリスクがあります

また、特に秋田犬や柴犬などの日本犬は酸化ストレスに弱く、玉ねぎ中毒を起こしやすいことも知られています。

玉ねぎ中毒の原因まとめ

  • ネギ科植物(玉ねぎ、ニンニク、ネギ、ニラ)の摂取
  • 加熱・加工しても毒性は残る
  • 日本犬は特にリスクが高い

玉ねぎの毒性は、季節や摂取した量によって違いがあるとされています。また、一気に食べた場合と、毎日少しずつ食べた場合で違いがあるようです。

を除き、一般的に犬では少なくとも体重の0.5%の玉ねぎを食べると中毒を起こすとされています。

玉ねぎ中毒の症状

中毒を起こすと、貧血による全身症状が現れます。

代表的な症状

  • 元気消失、食欲不振
  • 呼吸が荒くなる(頻呼吸、呼吸困難)
  • 粘膜の蒼白や黄疸
  • 血尿またはコーヒー色の尿
  • 玉ねぎ臭(場合による)

症状は摂取後すぐに出るわけではなく、貧血が進行する1〜5日後に現れる場合が多いのが特徴です。

玉ねぎ中毒の診断

問診と臨床症状の確認が非常に重要です。
「玉ねぎやネギ類の摂取歴」があり、以下のような症状が見られる場合、中毒が強く疑われます。

  • 血液検査で貧血(特に再生性貧血)
  • 血液塗抹でハインツ小体の確認

ただし、ハインツ小体性貧血は他の原因(亜鉛、ベンゾカイン、アセトアミノフェンなど)でも起こり得るため、他疾患の除外診断も重要です。

玉ねぎ中毒の治療

玉ねぎ中毒には解毒剤は存在しません。そのため、治療は支持療法が中心となります。

  • 摂取直後(2時間以内)であれば催吐処置を行い、胃の内容物をできるだけ早く排出します。
  • 活性炭を投与して残った毒素の吸収を抑える処置も効果的です。
  • すでに体内に吸収された毒素に対しては、輸液療法を行い代謝と排泄を促進します。
  • 重度の貧血が認められる場合は、輸血と酸素吸入を行い、体内の酸素供給をサポートします。

なお、玉ねぎを摂取してからすぐに症状が出るとは限りません。
摂取後数日かけて貧血が進行するケースもあるため、しばらくの間は慎重な経過観察が必要です

予後

玉ねぎ中毒の予後は重症度と初期治療の早さに左右されます
重度の場合は死亡するケースもありますが、適切な処置を受けられた場合、多くの犬は回復可能です。

まとめ

犬の玉ねぎ中毒は、比較的少量の摂取でも重大な健康被害を引き起こす危険な中毒です。
貧血や血尿、元気消失などの症状に加え、「ネギ科植物を食べた可能性があるか」の問診が重要なヒントになります。

また、玉ねぎだけでなく、ニンニクやネギ、ニラなども同様にリスクがあるため、これらを食べさせないことが最も効果的な予防策です。

万が一食べてしまった場合は、症状が出ていなくてもすぐに動物病院を受診し、適切な処置を受けることが大切です。

当サイト「わんらぶ大学」では、獣医師監修のもと、犬と猫の健康や暮らしに役立つ情報をわかりやすくお届けしています。

※医療に関する最終的な判断は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

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