この記事では、犬の小眼球症について原因、症状、診断そして治療を、現役獣医師が解説しています。
最後まで読むだけで、小眼球症について誰にでもすぐに理解できるように作成しているので、是非一度目を通していただけると嬉しいです。
小眼球症とは
犬の小眼球症とは、先天的に眼球の小さい状態です。これには、以下の二つの状態があります。
- 眼球が小さいとともに、角膜、水晶体、ぶどう膜、硝子体、網膜など他の部位でも先天異常がみられる場合(多発性眼奇形)
- 眼球が小さいだけで、他の部位での先天的異常がみられない場合
犬の小眼球症では、多発性眼奇形の方が多いです。
(参考)ヒトの小眼球症 ヒトの小眼球症は、染色体の欠損が原因とされています。眼球の形成時に体液の排出が不完全で、眼球の形成が不十分となるため起こるとされています。 ヒトの小眼球症の発生頻度は、約10,000人に1人といわれています。多くが全盲になるといわれ、盲目のピアニスト・辻井伸行さんもこの病気です。
発生状況
- 発生頻度
2/5(めったにみない病気) - 好発年齢
若齢の犬 - 好発犬種
特になし - 性差
特になし
小眼球症の症状
小眼球症の症状は、眼球が小さいことです。
しかし犬の小眼球症は、それ以外に角膜、水晶体、ぶどう膜、硝子体、網膜などにも先天異常を認める場合(多発性眼奇形)が多いです。そのため、以下の異常が同時にみられることが多いです。
網膜や視神経に異常がみられる場合には、症状として視覚喪失がみられます。
小眼球症の診断
小眼球症の診断は、視診、超音波検査、眼科検査があります。
視診や超音波検査では、左右の眼球の大きさを比較します。超音波検査では、眼球の大きさを測定することが可能です。
眼科検査では、スリットランプ検査、眼底検査などを行います。これらにより、角膜、虹彩、水晶体、網膜・視神経の異常の有無、そして視覚の有無を確認します。
小眼球症と似た症状がみられる病気として、交感神経麻痺により発症するホルネル症候群があります。眼球の後引、眼瞼下垂、瞬膜の突出などの症状が、類似します。
(参考)ヒトの小眼球症
ヒトの小眼球症では、小眼球の大きさの定義として、正常の眼球容積の2/3以下、すなわち眼軸長が年齢の正常の約0.87以下とする基準が用いられるそうです。
小眼球症の治療
小眼球症は、治療の必要がない病気です。先天的な異常のため、治療方法が存在しません。
まとめ
犬の小眼球症について解説しました。この病気は、先天的に眼球が小さい状態とされ、網膜や視神経に異常がみられる場合には、視覚が喪失しています。
ただし、この病気は先天的な異常であり、治療の方法が存在しないため、治療の必要が無いとされています。