犬の皮膚組織球腫を丁寧に解説

この記事では、犬の皮膚組織球腫について原因、症状、診断そして治療を、現役獣医師が解説しています。

対象読者
  • 動物病院で皮膚組織球腫と診断されたor疑われている犬の飼い主
  • 皮膚に”できもの”がみられる犬の飼い主
  • 犬の皮膚組織球腫について知りたい獣医学生や動物看護師

最後まで読むだけで、皮膚組織球腫について誰にでもすぐに理解できるように作成しているので、是非一度目を通していただけると嬉しいです。

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皮膚組織球腫とは

犬の皮膚組織球腫は、皮膚にできた組織球の良性の腫瘍です。

組織球とは

骨髄の血液幹細胞由来の細胞で、血管外の組織に存在します。白血球の一種で、遊走能や貪食能を持ちます。

しかし、より正確には2つの点で事実と異なります。

  1. 増殖している細胞は、組織球ではなく組織球の一種である表皮のランゲルハンス細胞である
  2. 腫瘍ではなく反応性増殖である

よって、皮膚組織球腫は皮膚にできた表皮ランゲルハンス細胞の反応性増殖というのがより正確です。

表皮ランゲルハンス細胞とは

皮膚など外界と接する部位に存在しています。病源体などを認識して周囲の細胞に情報を伝え、体を守る免疫システムの重要な役割を担当する働きがあります。

なお、同じ組織球系の病気に反応性組織球症があります。これは、組織球の一種である真皮内の樹状細胞の反応性増殖です。皮膚組織球腫と類似していますが、臨床的には異なる経過や予後となっています。

発生状況

  • 発生頻度
    3/5(時々みられる病気)
  • 好発年齢
    若齢の犬(特に3歳以下での発症)
  • 好発犬種
    ボクサー、ダックスフンド、コッカースパニエル、グレートデン、シェルティー、ブルテリア
  • 性差
    特になし
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皮膚組織球腫の症状

皮膚組織球腫は、比較的急に増大する境界明瞭な赤色のドーム状の”できもの”が典型的な症状です。この病変は、頭部、耳、四肢でよく発生します。

▲犬の皮膚組織球腫:赤色のドーム状の”できもの”がみられる

皮膚組織球腫の診断

特徴的な赤色のドーム状の”できもの”がみられた場合に、皮膚組織球腫が疑われます。そして診断は、針生検です。

針生検とは

細い針で細胞を取って顕微鏡で観察する検査

針生検では、皮膚組織球腫の確定診断が可能です。

皮膚組織球腫と似た症状がみられる病気は、以下のとおりです。

皮膚組織球腫の治療

皮膚組織球腫の治療は、経過観察です。これは、通常3ヶ月以内に自然に消失するためです。

改善が見られない場合、グルココルチコイド(ステロイド)による治療などを行います。

まとめ

犬の皮膚組織球腫について解説しました。3歳以下で、比較的急に増大する境界明瞭な赤色のドーム状の病変が見られた場合には、この病気が疑われます。

通常3ヶ月以内に自然に消退しますが、改善がない場合は獣医さんとよく相談するようにしましょう。