犬の骨肉腫

人医療では、骨肉腫は小児の骨に発生する悪性腫瘍の中で最も頻度の高い代表的な骨のがんであり、10歳代の思春期すなわち中学生や高校生くらいの年齢に発生しやすい病気とされています。なお、日本国内でこの病気にかかる人は1年間に150人くらいであり、がんの中では非常にまれな部類に入るそうです。

人の骨肉腫と多くの類似点があるとされている、犬の骨肉腫について解説します。

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骨肉腫とは

骨に発生する腫瘍には他の臓器に発生した腫瘍が骨に転移する「転移性骨腫瘍」と骨自体から腫瘍が発生する「原発性骨腫瘍」に大別され、骨肉腫は犬および猫で最も発生率の多い原発性骨腫瘍です。犬では原発性骨腫瘍の85%を占めるとされています。

骨肉腫は原発性の悪性間葉系腫瘍で、腫瘍性骨芽細胞による骨の産生(類骨)がみられるのが特徴です。

発生年齢の中央値は、7~9歳ですが、1.5~2歳にも小さな発生のピークがあるとされています。犬では大型犬や超大型犬での発生が多く、犬種よりも体系が密接に関わってくると考えられています。なお、体重が30kg以上の犬と10kgの犬の骨肉腫の発生の危険性を比較すると、前者の方が60倍高く、20~20kgの犬と比較しても8倍高いと報告されています。

骨肉腫は、上腕骨や大腿骨などの付属骨格での発生が75%を占めており、頭蓋骨、脊柱そして肋骨などの軸骨格よりも発生が多いです。特に、上腕骨近位と橈骨遠位そして大腿骨遠位と脛骨近位での発生率が高いです。

人と同様に骨外性骨肉腫、骨膜性骨肉腫、傍骨性骨肉腫などの非定型的な軟部組織などに発生する骨肉腫も報告されています。

骨肉腫は高率に肺転移を生じ、腫瘍を切除しても最終的には90%以上の症例が肺転移で死亡するといわれています。

骨肉腫
原発性の悪性間葉系腫瘍で、腫瘍性骨芽細胞による類骨産生が特徴

原因

病因について明らかにはされていませんが、体重を負重している骨が受けた外からの力は、たとえ軽微なものであっても分裂促進機転を誘発し、突然変異や腫瘍化への確率を促進させるとの仮説があります。

また骨肉腫の発生は、骨折、金属製の整形外科インプラント、慢性骨髄炎、骨梗塞、骨軟骨腫症、イオン化放射線などとの関係も示唆されています。

骨肉腫の症状

上腕骨や大腿骨などの付属骨格の骨肉腫の犬はびっこをひいて歩きますが、その程度はごく軽微なものから体重がかけれないものまで様々です。通常、このびっこは進行性ですが、病的骨折が起きると一気に重度になります。腫瘍の腫れが触れる場合もありますが、触れない場合もあります。

頭蓋骨、脊柱そして肋骨などの軸骨格の骨肉腫では、発生部位により様々な症状がみられます。顎の骨に骨肉腫が発生した場合には、嚥下障害、開口時の疼痛あるいは鼻腔からの分泌物排出が、椎骨のに発生した場合には神経症状が、そして肋骨に発生した場合に呼吸障害が起こることがあります。通常、腫瘍発生部の腫れが触れますが、痛みを伴う場合もあれば無い場合もあります。腫瘍の発生部位によっては、視診あるいは触診で認知できない場合もあります。

似たような症状を示す病気として、軟骨肉腫、線維肉腫、血管肉腫などの他の原発性骨腫瘍、移行上皮癌、前立腺癌、乳腺癌、甲状腺癌、肛門嚢腺癌などの転移性骨腫瘍があります。

症状のポイント
付属骨格の骨肉腫では跛行や疼痛、軸骨格の骨肉腫では発生部位による症状がみられる

骨肉腫の診断と治療

診断

診断には、レントゲンが有用とされています。レントゲンでは、骨吸収と骨膜反応が認められます。しかし、この所見だけでは他の骨腫瘍や骨髄炎との鑑別は不可能ですが、骨肉腫であれば関節を越えて腫瘍が存在することは極めてまれです。

10~15%の骨肉腫の犬で、最初の診察時にすでにレントゲン検査で明瞭な肺転移がみられるとされています。また骨肉腫を外科手術で摘出しても、95%で最終的に肺転移が生じていることを考えると、レントゲン検査では分からないものの、初診時にはすでに肺転移が起こっていたと考えられます。

なお、骨肉腫の犬でリンパ節転移を起こす割合は、5%以下であるとされています。

確定診断には、病理組織検査で類骨形成を確認することですが、そのために骨生検を行う必要があり、約90%の診断精度であるとされています。生検の部位は、レントゲン検査に基き病巣の中心部からの採取が推奨されており、辺縁部では反応性の骨増生のみが観察されるのみであるとされます。

なお、骨生検では複数箇所から採材する場合があり、病的骨折を起こす場合があるので注意が必要です。

診断のポイント
確定診断は骨生検

血液検査での血清アルカリフォスファターゼ(ALP)の高値がみられる場合には、骨肉腫の予後が悪いことが知られています。さらに、断脚等の手術後にも高値が続く場合には、さらに悪いとされています。

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治療

外科的な切除が基本とされ、術後補助療法として抗がん剤治療を実施することが推奨されています。一般に、上腕骨や大腿骨などの付属骨格では断脚術を行います。

断脚術に対して、足を切らずに残す患肢温存術という方法があります。この方法は、断脚術と比較して生存期間に関しての差はほとんどないとされていますが、感染やインプラントの破綻、腫瘍の局所再発などの合併症の発生率が高いとされています。

なお、犬で断脚術のみを実施しても、生存期間の延長は全く期待できないことが分かっています。外科手術や放射線療法などの局所的な治療の目的は、痛みのコントロール(疼痛緩和)です。

骨肉腫は全身疾患として考える必要があり、抗がん剤による化学療法での全身療法を行います。最も有効な治療法は、白金製剤(カルボプラチン)だとされています。

なお疼痛緩和療法として、鎮痛剤やビスホスホネートの使用があります。また可能であれば、放射線治療によっても痛みの緩和が可能ですが、効果がみられる期間は3ヶ月前後と限定的なようです。

治療のポイント
外科的な切除(断脚術など)と術後補助療法として抗がん剤治療

予後

骨肉腫の犬のほとんどは、最終的に原発腫瘍あるいは転移病巣およびその両方が原因で死亡します。

断脚術のみの治療では生存期間中央値は4~5ヶ月であるとされています。しかし、外科手術などの局所治療と抗がん剤による全身療法の併用で、50%前後の1年生存率および300日前後の生存期間中央値が期待できるとされています。

また転移病巣が確認された後の生存期間は、1~2ヶ月未満とされています。

まとめ

犬の骨肉腫について解説しました。この病気の際に断脚の選択を行うのは、勇気が必要かもしれません。上腕骨や大腿骨などの付属骨格に発生した骨肉腫の場合に、足が痛くて歩けなかった犬が、断脚手術後には3本の足でスタスタ歩き回ることが可能になる事を良く経験します。

一般的に犬は3本足でもほとんど日常生活には支障が無いとされる為、治療の方針について担当の獣医さんと良く相談されると良いでしょう。

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